持続可能な社会の実現に向け、企業の取り組みが加速している。同時に、環境意識の高い消費者の存在も注目を集めている。
株式会社電通が実施した「第3回サステナブルカスタマー調査」では、サーキュラーエコノミーを牽引する「サステナブルカスタマー」が全体の約2割を占めることが明らかになった。彼らの消費行動は、今後の経済成長にどのような影響を与えるのだろうか。
調査概要
①事前調査(対象者:全国15~79歳の1万人、調査期間:2024年10月8日~10月15日)で、商品の継続的購入と資源のリサイクル活動・回収活動への参加経験によって生活者を4種類のカスタマーに分けている。
②本調査(対象者:4種類のカスタマーを各性別・各世代別に均等割付した全国15~79歳の1200人、調査期間:2024年10月15日~10月16日)は、購買行動における意識や商品の選定基準、リサイクル活動・回収活動へのモチベーションなどを調査したもの。
循環型経済への意識は低い現状
調査によると、「サーキュラーエコノミー」の認知度はわずか8.5%、内容まで理解している人は2.0%にとどまっている。サーキュラーエコノミーは、資源を循環させ廃棄物を最小限に抑える経済モデルであり、持続可能な社会の実現に不可欠な概念だ。認知度の低さは、消費者の行動変容を促すための啓発活動の必要性を示唆している。
サステナブルカスタマーの特徴
同調査では、継続購入ブランド数とリサイクル活動への参加意識の高さから、「サステナブルカスタマー」を定義づけている。
サステナブルカスタマーは、事前調査で「継続購入ブランド(飲料、食品、化粧品など10カテゴリ)が5つ以上あり」「リサイクル活動・回収活動参加製品が1つ以上ある」、継続購入性とリサイクル活動・回収活動への参加意識の両方が高い生活者を、当社では「サステナブルカスタマー」と定義している。
サステナブルカスタマーは全体の約2割(19.5%)を占めている。彼らは、他の消費者層と比較して、社会課題への関心が高く、SDGsや再生可能エネルギーへの関心も高い傾向にある。
特に注目すべきは、再生プラスチックを使用した製品への購買意欲の高さだ。サステナブルカスタマーの過半数(53.7%)が、再生プラスチック使用が購入の後押しになると回答しており、全体平均(36.6%)を大きく上回っている。環境に配慮した商品を選択する彼らの行動は、企業の製品開発やマーケティング戦略に大きな影響を与えるだろう。
また、リサイクル活動への参加意欲も高く、回収量やCO2削減量などの情報提供、寄付といった非金銭的インセンティブに動機づけられる傾向も明らかになった。これは、社会貢献への意識の高さ、環境保全に対する積極的な姿勢を示すものと言える。
企業戦略への示唆
サステナブルカスタマーの増加は、企業にとって大きなビジネスチャンスとなる。彼らのニーズを捉えた商品開発やマーケティング戦略は、企業の成長に不可欠だ。再生プラスチックの利用促進、リサイクル活動への参加促進といった取り組みは、企業イメージの向上にもつながり、投資家からの評価向上も見込める。
持続可能な社会に向けた課題と展望
サステナブル消費の拡大は、経済成長と環境保全の両立を可能にする。企業は、サステナブルカスタマーとの協働を通じて、新たな価値を創造し、持続可能な社会の実現に貢献していく必要がある。同時に、サーキュラーエコノミーの認知度向上に向けた取り組みも重要となる。
消費者、企業、行政が一体となり、持続可能な社会の実現に向けて努力していくことが求められる。
【調査概要】
<事前調査>
・目 的:商品※の継続的購入とリサイクル活動・回収活動への参加経験によって生活者を4種類のカスタマーに分け、サステナブルカスタマーという顧客群を特定
・対象エリア:全国
・対象者条件:15~79歳
・サンプル数:10000
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 期 間:2024年10月8日~10月15日
・調 査 機 関:株式会社電通マクロミルインサイト
※飲料、シャンプー・コンディショナー・トリートメント 、加工食品、冷凍食品、 菓子、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、衣服、家具・インテリア用品、小物家電(ドライヤーや調理家電など)の10カテゴリーについて、継続的に購入しているブランドの数を聴取
<本調査>
・目 的:生活者の購買行動における意識や商品の選定基準、資源のリサイクル活動・回収活動へのモチベーションなどを把握
・対象エリア:全国
・対象者条件:15~79歳
・サンプル数:1200※
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 期 間:2024年10月15日~10月16日
・調 査 機 関:株式会社電通マクロミルインサイト
※事前調査で分けた4種類のカスタマーを各性別・各世代別に均等割付し、300人ずつ抽出。全体の1200人に対し、人口構成に合わせてウェイトバック集計を実施。「%」はウェイトバック後のスコア、「n」はウェイトバック前(回収時)のサンプル数を掲載。