
カーボンニュートラル実現に向けた動きが加速する中、森林が吸収する二酸化炭素量を取引する「J-クレジット」制度を活用した森林保全の取り組みが注目されている。
森林所有者である全国の森林組合の間で、J-クレジット創出による収益化に関心が高まっている。そうした中、脱炭素化支援事業を展開する株式会社バイウィル(東京・中央)は10月15日、J-クレジット創出に関する森林組合向けの意見交換会を開催。全国11の組合が参加し、活発な意見交換が行われた。
企業に温室効果ガスの排出削減目標が課される中、排出量取引など排出削減を促す様々な制度が生まれている。その一つであるJ-クレジット制度は、省エネルギー設備の導入や森林管理などによって削減・吸収された温室効果ガス量を「クレジット」として国が認証する仕組みだ。
企業はこのクレジットを取得することで、自社の排出量を相殺することができる。
森林は光合成によって二酸化炭素を吸収するため、適切に管理された森林は「炭素吸収源」として機能する。しかし、日本の森林の多くは、林業の衰退や後継者不足などにより、適切な管理が行き届いていない状況だ。
そこで期待されるのが、J-クレジット制度を活用した森林経営の活性化だ。森林組合は、J-クレジットを創出・販売することで新たな収益源を確保し、その収益を森林整備に再投資することで、森林の保全と地域経済の活性化につなげることができる。
手間のかかる手続きやノウハウ不足が課題
J-クレジット制度は、森林組合にとって収益化の道を開くとともに、森林保全の新たな枠組みとして期待される。しかし、クレジット創出には、計画策定や申請手続き、モニタリングなど専門的な知識やノウハウが必要となる。さらに、森林所有者との合意形成や、長期間にわたる事業継続なども課題として挙げられる。
バイウィルが意見交換会、創出支援のノウハウ共有

こうした課題を背景に、バイウィルは森林組合向けのJ-クレジット創出支援事業に力を入れている。同社は、クレジット創出に必要な手続きの代行や、専門家によるコンサルティングなどを提供し、森林組合の負担軽減を図っている。
10月15日に開催された意見交換会では、すでにバイウィルの支援を受けてJ-クレジットのプロジェクト登録を完了している島根県の大田市森林組合がメインスピーカーとして登壇。
参加者からは、J-クレジット創出の対象範囲の決め方や、所有者からの同意書の回収方法、収益の使途など、具体的な運用に関する質問が相次いだ。バイウィルによると、参加者からは「実際に登録を済ませた森林組合の話を聞けて参考になった」「J-クレジット創出の可能性を感じた」といった声が聞かれたという。
森林由来のクレジット創出増加に期待
バイウィルは、全国の金融機関や自治体と連携し、J-クレジット創出を希望する森林組合とのマッチングを強化している。同社の担当者は「森林組合によるJ-クレジット創出は、森林保全と地域経済の活性化に貢献する可能性を秘めている。今後も、多くの森林組合と連携し、J-クレジット創出を支援していく」と述べている。
森林組合によるJ-クレジット創出は、森林保全と地域経済の活性化に貢献する可能性を秘めている。バイウィルは今後も、全国の森林組合と連携し、J-クレジット創出を支援していく方針だ。