HRガバナンス・リーダーズ株式会社(HRGL)は、TOPIX100構成企業を対象に、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示状況調査の結果を発表した。
人的資本開示については、取締役会で議論する企業が昨年比で1.6倍に増加した一方、「経営戦略上重要な人財」に関する指標開示は限定的であるなど、課題も見られる。
人的資本開示の機運が高まる背景
企業の持続的な成長には、従業員をはじめとする「人」への投資、すなわち人的資本への投資が不可欠であるとの認識が広まっている。
国際統合報告フレームワーク(IIRC)や世界経済フォーラム(WEF)など国際機関がその重要性を訴える中、2020年には国際的な開示基準策定団体であるサステナビリティ会計基準審議会(SASB)が人的資本に関する開示基準を公表した。
日本においても、2023年3月期より、有価証券報告書へのサステナビリティ情報に関する記載がプライム市場上場企業に義務付けられ、人的資本に関する情報開示の機運が高まっている。
取締役会での議論は増加傾向
HRGLの調査によると、サステナビリティの諸課題を監督する体制として、「取締役会」が監督する旨を明記している企業は99.0%にのぼる。
取締役会で個別テーマである「人的資本」について記載があった企業は26.3%と、昨年の約1.6倍に増加した。
「気候変動」や「生物多様性」といったテーマに関する記載も増加しており、企業はサステナビリティ全体だけでなく、個別具体的な課題についても取締役会で議論する傾向を強めている。
「戦略」の開示は充実、「指標と目標」は今後の課題
人的資本の開示内容を「戦略」と「指標と目標」に分けて見ると、「戦略」については、多くの企業で記述の充実が見られる。
人材育成方針に関しては、「サクセッション・次世代リーダー向けの育成等の取組み」や「経営戦略上重要な人財向けの採用・育成等の取組み」に関する記述を行う企業がそれぞれ59.6%、52.5%と、昨年の30%台から大きく増加した。
一方、「指標と目標」については、「サクセッション・次世代リーダー向けの育成等に関する指標」の開示割合は10ポイント以上増加したものの、「経営戦略上重要となる人財の人数・採用・育成・配置等に関する指標」は4.7ポイント増にとどまり、戦略の記述の増加と比較して指標の開示増加は小幅に留まった。
※サクセッション・次世代リーダー向けの育成等の取組みやダイバーシティに関する取組みについては、女性に限定されているものは除く
※イノベーション創出に関する取組みは、イノベーション向上の言及とその具体的な取組みの記載がある場合に該当。2023年は調査対象外のため、2024年の結果のみとなる
ISSB基準策定で開示の質向上へ
2024年6月には、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、サステナビリティ開示に関する2つの基準を発行した。
今後、日本においても国際的な動向を踏まえたサステナビリティ情報開示の枠組みが整備されていくことが予想される。企業は、こうした動向を注視しつつ、ステークホルダーとの対話を通じて、自社の人的資本戦略を適切に開示していくことが求められる。
【調査会社概要】
設 立:2020年4月(事業開始:2020年10月)
所在地:〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-4-5
代表者:代表取締役社長 CEO 内ヶ﨑 茂
事業内容:サステナビリティガバナンスコンサルティング
ボードガバナンスコンサルティング
指名・人財・報酬ガバナンスコンサルティング
サステナビリティ経営・人的資本経営コンサルティング
上記コンサルティングに関する商品開発・調査研究・オピニオン発信
信託代理店業務
URL:https://www.hrgl.jp/