プライム市場の数多くの会社が、統合報告書・サステナビリティレポートといった自己表明型統合レポートの公開を行うようになりました。ただ、直接のステークホルダーでもない私たち一般人が、そうしたレポートのすべてに目を通すのは、膨大なページ数もあるため、現実的ではありません。さまざまな企業のSDGsやESGについてのレポートに目を通したとしても、大企業だとやっていることが広範囲過ぎて、且つ似通ってる(エネルギー関連やCO2排出量削減など)のも事実です。
そこで、今回は、その企業ならではという「独自性」「意外性」「新規性」な取り組みを3つピックアップしてみます。「あの企業こんなこともやってるんだ!」「あのパッケージって実は環境に配慮していたんだ」と、関心を持ってもらえることを期待して、紹介していきます。
今回取り上げる事例は、三井化学株式会社です。 本ページをご参考に、事業におけるサステナビリティ、SDGsに関する活動を進めるヒントにしていただければ幸いです。
SDGsについては、“ 「SDGs」と「サステナブル」の意味|私たちはなぜSDGsに取り組む必要があるのか ”を、ご覧ください。
三井化学株式会社のSDGsの取り組み
社名:三井化学株式会社
業種:化学
創立:1997年10月1日 (設立年月日 1955年7月1日)
従業員数:18,051人(連結 2021年3月31日現在)
売上高:1兆2117億円
営業利益:851億円
参照公式サイト:https://jp.mitsuichemicals.com/jp/index.htm
三井化学株式会社ってどんな会社?
三井化学と聞いて、どういった製品・サービスをしている会社かすぐに思い浮かべることができる人は少ないと思います。やはり、BtoBの会社ですから、簡単に思い浮かべることができる商品はありません。
ただ、調べてみると、私たちの日常生活のいたるところに三井化学の化学素材をもとにした製品がありふれていることがわかりました。いわば、日常風景の製品の源流に三井化学あり、といった会社です。
例えば、飲料水のペットボトル。「三井PET™」というポリエチレンテレフタレートという製品は、飲料ボトル、食品容器、洗剤、化粧品、医薬品容器など幅広く活用されています。
他にもスニーカーなどのソール部分に活用されているタフマー®という素材。これは、世界トップシェアを有する樹脂改質材や軟質成形材料だとのこと。軽くて、柔軟性もあるので、自動車材、包装資材、太陽電池封止材、エンジニアリングプラスチック改質材、スポーツシューズのミッドソール材など、幅広い用途で使用されているそうです。
他にもスマートフォンでおなじみの有機EL用の透明シール材なども幅広く提供しているようです。三井化学が開発した有機ELシール材「ストラクトボンド™XMF-T」は、耐水性や透明性に優れ、加工性にも優れる、新しい有機EL封止材料とのこと。実際には、LGエレクトロニクス社のスマートフォン「LG G Flex」の臨場感ある高精細ディスプレイや曲面デザインによるユーザビリティ、耐久性に貢献しています。他にもメガネレンズなどは世界シェア1位なのだそうです。
SDGsの文脈でいえば、食材の鮮度を飛躍的に向上させるフィルム「スパッシュ®」があります。未来のサランラップといった体のフィルムで、フードロスの削減やこれまでは鮮度の問題でできなかった日本産の食材を海外に輸出することも可能にしたという、素敵な製品です。
三井化学のマテリアリティ(重要課題)
ESGを中核に据えたサステナビリティ経営を目指し、長期経営計画「VISION 2030」では、従来の素材提供型ビジネスから、社会課題視点のビジネスへの転換を打ち出しています。マテリアリティとしては、社会価値と企業価値、両方の創出に直結するテーマを「持続可能な社会への貢献」に分類。それを「事業継続の前提となる課題」および「事業継続に不可欠な能力」が支える構成です。
- 三井化学の「持続可能な社会への貢献」
- ライフサイクル全体を意識した製品設計
- 気候変動
- サーキュラーエコノミー
- 健康とくらし
- 住みよいまち
- 食の安心
- ライフサイクル全体を意識した製品設計
三井化学の最近の取り組み事例をピックアップして見ていきましょう。(取り組み事例の中には、複数の目標にまたがる取り組みもありますが、代表的な目標を掲げて記載しています) 。
目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」への取り組み
目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の ゴール は「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」です。
三井化学では、丸善石油化学株式会社、東洋エンジニアリング株式会社、双日マシナリ―株式会社と共に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)が公募した「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発/ナフサ分解炉の高度化技術の開発」 の実証事業において、4社共同で申請し、2022年2月に採択されました。
アンモニアは発電時にCO2を排出しないクリーンエネルギーであるだけでなく、水素と比べて運搬が容易であるという特徴があります。
この事業では、アンモニア専焼炉の社会実装を目指し、アンモニアバーナおよびアンモニアバーナに適したナフサ分解炉を開発し、数万トン規模の実証試験を実施を予定。2030年度までの10年間でアンモニア専焼商業炉の実証を完了し、社会実装へ進めることを目指します。三井化学では、幹事会社としてプロジェクト全体の取りまとめと試験炉の運転を担い、丸善石油化学とともに官庁許認可に関する対応や実証炉の操業を行う予定です。
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」への取り組み
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の ゴール は「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」です。
三井化学では「環境と調和した循環型社会」「健康・安心にくらせる快適社会」の実現に向けて、三井化学グループが提供する製品・サービスの環境や社会への貢献を見える化した製品について、環境に貢献するものを「Blue Value(R)」QOLに向上するものを「Rose Value(R)」として認定しています。
Blue Value(R)の具体的な製品としては、食品包装用白色フィルム「エコネージュ(R)」や、シーラントフィルム(食品のラミネート包装材として使われる)「T.U.X.(R)」などがあります。いずれも実は私たちの身近な商品に使われているものです。省資源かつ廃棄時のCO2を削減できます。
Rose Value(R)製品としては、紙おむつ用不織布の「シンテックス(R)」や「エアリファ(TM)」などがあります。いずれも使用者の快適性を追求するだけでなく、廃棄物量を削減できるものです。
こうした製品を開発し、普及すること自体がSDGsに貢献するものと言う捉え方から、三井化学では非財務指標として、2030年度のBlue Value(R)・Rose Value(R)製品の売上収益比率目標値をそれぞれ40%と設定して取り組んでいます。
三井化学 BlueValue®と Rose Value®についてはこちらhttps://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/mci_sustainability/contribution_value/products.htm
目標12「つくる責任つかう責任」への取り組み
目標12「つくる責任つかう責任」の ゴール は「持続可能な生産消費形態を確保する」です。
三井化学グループは、気候変動問題やプラスチック問題をはじめとした社会課題解決にはサーキュラーエコノミーへの転換が重要であると考え、カーボンニュートラル戦略やプラスチック戦略(リサイクル戦略とバイオマス戦略)を打ち出し、具体的な取り組みを進めています。
例えば、2021年度からフィンランドのNeste社が植物油廃棄物や残渣油から製造するバイオマスナフサを調達し、大阪工場のエチレンプラント(クラッカー)に原料として投入を開始しました。同時にマスバランス方式によってバイオマス原料使用分を特定の製品に割り当てることで、フェノールなどのバイオマス化学品やポリオレフィンなどのバイオマスプラスチックの製造とマーケティングを開始しています。
他にも、マテリアルリサイクルの事業化に向けて、BASFと日本国内におけるケミカルリサイクルの推進に向けた協業検討を開始、長岡技術科学大学とプラスチック廃棄物の再利用を促進する技術を共同研究を進めています。
日本国内におけるプラスチック廃棄物の課題に応えるケミカルリサイクルを日本で事業化することを目指し、共同ビジネスモデルを含めあらゆる可能性を検討しています。
ニュートラル戦略やプラスチック戦略(リサイクル戦略とバイオマス戦略)を打ち出し、具体的な取り組みを進めています。
例えば、2021年度からフィンランドのNeste社が植物油廃棄物や残渣油から製造するバイオマスナフサを調達し、大阪工場のエチレンプラント(クラッカー)に原料として投入を開始しました。同時にマスバランス方式によってバイオマス原料使用分を特定の製品に割り当てることで、フェノールなどのバイオマス化学品やポリオレフィンなどのバイオマスプラスチックの製造とマーケティングを開始しています。
他にも、マテリアルリサイクルの事業化に向けて、BASFと日本国内におけるケミカルリサイクルの推進に向けた協業検討を開始、長岡技術科学大学とプラスチック廃棄物の再利用を促進する技術を共同研究を進めています。
日本国内におけるプラスチック廃棄物の課題に応えるケミカルリサイクルを日本で事業化することを目指し、共同ビジネスモデルを含めあらゆる可能性を検討しています。
ニュートラル戦略やプラスチック戦略(リサイクル戦略とバイオマス戦略)を打ち出し、具体的な取り組みを進めています。
例えば、2021年度からフィンランドのNeste社が植物油廃棄物や残渣油から製造するバイオマスナフサを調達し、大阪工場のエチレンプラント(クラッカー)に原料として投入を開始しました。同時にマスバランス方式によってバイオマス原料使用分を特定の製品に割り当てることで、フェノールなどのバイオマス化学品やポリオレフィンなどのバイオマスプラスチックの製造とマーケティングを開始しています。
他にも、マテリアルリサイクルの事業化に向けて、BASFと日本国内におけるケミカルリサイクルの推進に向けた協業検討を開始、長岡技術科学大学とプラスチック廃棄物の再利用を促進する技術を共同研究を進めています。
日本国内におけるプラスチック廃棄物の課題に応えるケミカルリサイクルを日本で事業化することを目指し、共同ビジネスモデルを含めあらゆる可能性を検討しています。
三井化学 まとめ
三井化学の面白そうな取り組みを調べましたが、SDGsに対する取り組みも先駆的に行っている会社なことがわかりました。2017年には「化学業界の持続可能な開発への貢献」と題して、一般社団法人日本化学工業協会全体でSDGsの達成を目指してのビジョンを策定しています。
このビジョンでは、加盟各社が事業全般とCSRなどの社会的責任を担う基盤活動を経営として統合し、「あらゆる産業の先導役」になるべく、SDGsに貢献していくのだと宣言しています。これは、まさにSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)そのものであり、産業界全般で見ても、いち早い行動だったと言えるでしょう。
ビジョンでは以下の内容が掲げられています。
1)化学の力によりイノベーションを創出し、人々の豊かで健やかな生活に貢献する
2)世界的な環境・安全問題への取り組みを支援します
3)ステークホルダーとの対話を通じて、化学産業による貢献を促進します
環境問題の一丁目一番地とも言える、プラスチック原料を主製品とした企業群ですから、昨今のESGのメガトレンド化した動向に対する注視も人並みならぬものがあるのだと思います。
それでも、今回各取り組みをしらべた限り、先駆的な取り組みも多く、言葉だけの宣言で終わっていない実を伴ったものであることがわかりました。
願わくば、SDGsビジョンの3番に掲げられた「ステークホルダーとの対話」については、投資家や社員以外のマルチ・ステークホルダーとの対話内容があまり可視化されておらず、もう少し市民社会をはじめとしたより広範な人達とのやりとりが開示されていると、本気度がなお一層伝わってくるのになと思いはしましたが。
三井化学のステークホルダー
cokiは、法人のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を支援します
企業や団体におけるサステナビリティの追求として、SDGs達成に向けた事業や取り組みをアピールするケースが増えてきました。実際にSDGsへの取り組みを行うとなると、どの目標に向けてどのような施策を企画したら良いか悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。 cokiでは、皆さまのSX(サステナビリティトランスフォーメーション)のお役に立つべく、これからも、SDGsに対して積極的な企業の取り組みをピックアップしてご紹介しています。
法人のサステナビリティを可視化するメディアcokiの目的は「社会の公器」を体現する企業を増やし、サステナブル社会を実現することです。cokiでは、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)支援の一環として、会員さまに個別インタビューを行い、サステナビリティの観点から企業価値を高める情報発信を行ったり、想いを同じくする会員の企業・団体・個人との交流を可能にするビジネスコミュニティをご提供しています。
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