
「クリプトおじさん」こと國光宏尚氏が仕掛ける、上場企業TORICOの“イーサリアム・トレジャリー戦略”。この大胆な一手に対し、「増資による希薄化(ダイリューション)」を懸念する投資家の声に対し、國光氏が放った「心配不要」の一言が、ネット界の論客たちに火をつけた。
「株数は増えるが、資産も増える」國光理論の是非
事の発端は1月27日。電子書籍事業などを手掛けるTORICOが、40億円規模の資金調達を発表したことだ。その使途は驚くべきことに、全額が暗号資産「イーサリアム(ETH)」の購入。
一般的に、大規模な増資は1株あたりの価値が薄まる「希薄化」を招き、株価下落の要因となる。投資家の不安に対し、同社のアドバイザー的な立ち位置にいる國光氏はX(旧Twitter)でこう断言した。
「結論から言うと、心配は不要です」
國光氏の主張はこうだ。通常の増資は赤字補填などで資金が消えてしまうが、今回は「現金同等物」であるETHに変わるだけ。BS(貸借対照表)上の資産は毀損せず、さらにステーキング(保有による利回り)で利益も生む。「利益を生む資産へ置き換わる増資」であり、既存のダイリューション論とは違う――というわけだ。
「詩人」vs「狂犬」論戦のゴング
この独自の“國光理論”に対し、まずは冷静なツッコミを入れたのが、コンヴァノ取締役の東大陽氏だ。
東氏は「ダイリューションの本質はBSが増えるかではなく、EPS(1株利益)やROE(自己資本利益率)の希釈だ」と正論を展開。ETHへの投資リターンが資本コスト(増資に伴うコスト)を上回らなければ、株主価値は毀損すると指摘した。
これに対し國光氏は「EPSやROEはあくまで結果」「イーサリアムの成長率は年率50〜60%超であり、円資産のリスクを回避する合理的判断」と、あくまで“未来の成長”に賭ける姿勢を強調した。
しかし、ここで黙っていなかったのが、「狂犬」の異名を持つ投資家・田端信太郎氏である。
炸裂した「税制メリット」論争と「資本コスト」の壁
田端氏は、「投資家はTORICO株を買わずとも、自分でETHを買えばいいだけでは?」と根本的な疑問を投げかける。これに対し、國光氏が持ち出したのが「税制メリット」だ。
「個人で暗号資産を持って利益が出れば最大55%の税金だが、TORICO株なら分離課税で20%(NISAなら0%)。これがプロとして提供できる付加価値だ」
この回答に田端氏が噛みついた。 「はい出た税制メリット(笑)。それはTORICO独自の競争優位性ではない。デフコンなど他の銘柄でもいいわけだし、ETFが承認されれば崩れる理屈だ」
さらに田端氏は、ファイナンスの核心を突く質問を繰り返した。 「TORICOは自社の『資本コスト』を何%と想定しているのか?」
ステーキング利回り(約3%)よりも、増資によって株主が求めるリターン(資本コスト)の方が高いのであれば、理論上、企業価値は破壊されていることになる。田端氏は「未来のポエム(詩)ではなく、数字で答えろ」と迫ったのだ。
泥沼化する個人攻撃「嫌われてますよ」「お前は詩人か」
議論は次第にヒートアップし、もはや経済論争の枠を超えた泥仕合の様相を呈し始める。
國光氏が「最近の田端さんは心配です。『そんなだからみんなに嫌われるんですよ』」と個人的な印象論で牽制すると、田端氏は激高。
「俺が嫌われているかどうかと、TORICOの戦略が正しいかどうかなんの関係がある? 人間関係を考慮して手加減しろということか?」 「上場企業のアドバイザーが『株価は心配ない』と断言するのは、風説の流布になりかねない」
と、コンプライアンス面でのリスクまでも指摘し、徹底抗戦の構えを見せた。
「上場ゴール」の過去が影を落とす
ネット上の観衆からは、國光氏の過去の実績に対する冷ややかな視線も注がれている。 「gumiの株価やFiNANCiEのチャート、キャプテン翼のNFTゲーム……過去に関わった案件がどうなったか見てほしい」といった、いわゆる“上場ゴール”を揶揄する声も少なくない。
「短期のノイズには振り回されない」「イーサリアムの未来にベットする」と高らかに宣言する國光氏。 対して、「資本コストを答えられない経営陣にガバナンスはあるのか」と詰め寄る田端氏。
國光氏は「1〜2ヶ月後に日本で対談しましょう」とかわしたが、田端氏は「株価が下がっている今すぐにやるべきだ」と譲らない。
TORICOの株価は、この論争の最中も軟調に推移している。果たして今回の40億円調達は、起死回生の一打となるのか、それとも田端氏の予言通り「株主価値の毀損」に終わるのか。
“ポエム”ではない“結果”が求められる審判の時は、そう遠くないはずだ。



