アップセルなしを貫き、業界の悪弊を断つ

「二重埋没法 29,800円」。街中やSNSでそんな広告を目にしたことはないだろうか。しかし、実際にクリニックを訪れると、提示されるのは桁が一つ違う見積もり書。美容医療業界で長らく問題視されてきた不透明な商習慣だ。情報の非対称性が極めて高いこの「コンプレックス産業」において、「アップセル(高額営業)なし」「明朗会計」を20年間貫き通すクリニックがある。水の森美容クリニックだ。なぜ、彼らは儲かるルートを捨ててまで、クリーンであり続けるのか。総院長・竹江 渉氏が語るその経営哲学には、美容医療の持続可能性を考える上で欠かせない、本質的な問いがあった。
「魔法の価格」の裏側にある情報の非対称性
美容医療市場は拡大の一途を辿っている。厚生労働省が2024年11月に発表した「医療施設調査」によると、2023年10月時点で美容外科を標榜する診療所は2,016施設に達し、わずか3年前の2020年(1,404施設)から約1.4倍(43.6%増)という急激な増加を見せている。これは全診療科の中で最も高い増加率であり、市場の活況を如実に物語っているといえる。
しかし、この急成長の裏で、消費者トラブルも深刻化しているのが実情だ。独立行政法人国民生活センターの2025年8月の発表によると、2024年度に寄せられた医療サービスに関する相談件数は1万5,648件に達し、前年度比で約1.5倍となった。そのトラブルの中心にあるのが、価格と契約をめぐる問題だ。

竹江
「入り口の価格を安く見せて集客し、来院した患者様に高額なオプションを乗せていく。いわゆる『アップセル』と呼ばれる手法ですが、これが業界の一部で常態化していることは否めません」
そう静かに語るのは、水の森美容クリニックを率いる竹江 渉総院長だ。例えば、広告で数万円と謳われている施術でも、カウンセリングルームに入れば「あなたの状態だとこの安いプランでは綺麗にならない」「一生モノだから高い糸を使ったほうがいい」と、次々にオプションが加算されていく。医学的な知識を持たない患者にとって、医師やカウンセラーの言葉は絶対に近い。それが本当に必要な処置なのか、単なる売上のための提案なのか、見抜くことは困難だ。
「ドクターにとっては意味のないオプションでも、患者様にはその判断がつきません。これが情報の非対称性です。クリニックだけが儲かり、患者様が不必要な出費を強いられる図式は、決して健全とは言えません」
同院が掲げるのは、その対極にあるクリーンな診療だ。HPに記載された価格は、麻酔代や処方薬代など必要な費用をすべて含んだ適正価格。カウンターでの強引な営業は一切行わない。この当たり前とも思える誠実さを徹底することが、20年前の開院当初は異端ですらあった。
「損して得取れ」が導く、真の信頼関係
なぜ、多くのクリニックがアップセルに走るのか。答えはシンプルで、その方が短期的には利益が出るからだ。コンプレックスを抱えて来院する患者の心理に付け入ることは、ビジネスの論理だけで言えば容易い。
しかし、竹江総院長はその甘い誘惑を断固として拒絶する。その根底にあるのは、「損して得取れ」という独自の経営哲学だ。
「目先の利益を追えば、確かに数字は上がるかもしれません。しかし、不必要なものを売りつけられた患者様は、いつかその事実に気づきます。そうなれば、二度と当院を選んではくれないでしょう。逆に、正直に『今のあなたにその施術は必要ない』と伝えることは、その場の売上を捨てることになります。つまり損です。でも、その誠実さは必ず信頼という得になって返ってくる。私はそう信じています」
この姿勢は、YouTubeなどを通じた啓蒙活動にも表れている。同院のチャンネルでは、美容整形のキラキラした側面だけでなく、リスクや失敗例、業界の裏側にあるカラクリまでを包み隠さず発信している。「患者様自身が知識を持ち、見抜く目を持ってほしい」という想いからだ。情報をオープンにし、患者のリテラシーを高めることは、悪質な業者を淘汰し、業界全体の自浄作用を促すことにも繋がる。それは一企業の利益を超えた、社会的な責任(CSR)の実践でもある。

モニター割引のパラドックスに挑む
竹江総院長が懸念を示すもう一つの業界慣行が、モニター制度の歪みだ。本来、モニター制度とは、症例写真を提供してもらう代わりに施術代を割り引くシステムだ。しかし、一部ではこれが価格操作の道具に使われているという。
「例えば、HP上では10万円の施術に対し、カウンセリングでオプションを積み上げて30万円にする。患者様が渋ると『モニターになれば20%オフで24万円になりますよ』と提案するのです。患者様は『6万円も安くなった』と錯覚しますが、実はクリニック側としては元々欲しかった利益以上を確保できている。症例写真も手に入るし、売上も立つ。一番損をしているのは、本来不要なオプションを付けられた患者様だけ、というケースも少なくありません」
こうした手法とは一線を画し、水の森美容クリニックでは、そもそも元の価格を適正に設定しているため、安易な大幅値引きは行わない。モニター割を行う場合は、HPに情報を公開し、希望者のみに対応する。新人医師の技術指導を目的とした場合は、「無料モニター」という制度を設けている。これは患者から費用を一切取らず、指導医の監督下で施術を行うものだ。
「だましだまし高いお金を取って練習台にするのではなく、無料で協力していただく代わりに、指導医が堂々と横について一から十まで教え込む。クリニックとしては材料費も人件費もかかりますから赤字です。でも、そうして育った医師が高い技術と倫理観を持ってくれれば、長期的にはプラスになる。これもまた『損して得取れ』の一環なのです」
コンプレックス産業における公正さとは
美容医療は、人の外見というデリケートな領域を扱うがゆえに、ともすれば欲望が渦巻くコンプレックスビジネスになりかねない。だからこそ、竹江総院長は「水のように、森のように、澄んだ心で接し合える場所」を目指し、その理念をクリニック名に込めた。
営利を目的とせず、嘘をつかず、誠実に患者と向き合う。不必要な施術は売らない。できないことはできないと伝える。その徹底した公正さこそが、20年という長きにわたり支持され続けてきた理由だ。
「あそこに行けば、誠実な対応をしてもらえる」。積み上げたそのブランドへの信頼は、派手な広告よりも強く、深く人々の心に根付いている。消費者を欺かず、働く医師に嘘をつかせず、クリーンさを貫くこと。水の森美容クリニックのあり方は、あらゆる企業が目指すべきサステナビリティの原点を示している。
「損して得取れ」の精神で貫くクリーンな診療から、技術継承のための「無料モニター制度」まで、水の森美容クリニックの挑戦をロングインタビューでご紹介。営利よりも信頼を選び続ける竹江総院長の経営哲学と、「水のように、森のように」澄んだ心で向き合う医療の全貌は、医療系メディア『ウィズマインド』の特集記事をご覧ください。
特集記事:『営利よりも信頼を。水の森美容クリニックが20年貫くクリーンな診療と、「損して得取れ」の経営哲学』
※ウィズマインドは、あなたの悩みに寄り添った美容クリニック・医療機関を発見するために、医師・スタッフの「想い」をお届けするメディアです。
【クリニック情報】
医療法人 水の森美容外科
総院長:竹江 渉
所在地:東京都中央区銀座2丁目5-4 ファサード銀座4階(東京銀座院) ※全国8院展開
URL:https://www.mizunomori.com/
診療科目:美容外科、美容皮膚科
「水のように、森のように澄んだ心」を理念に、明朗会計とクリーンな診療を徹底。不必要なアップセルを排し、独自の技術指導システムによる高度な医療と患者の信頼を第一に追求している。




