厚生労働省は、2060年には日本人の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者になるという見込みを発表。団塊世代が75歳以上となる2025年問題では、介護サービスを利用する高齢者の急増が予想されます。一方、介護・障害福祉業界では人手不足によるサービス低下や労働環境の悪化による離職率の上昇、経営状態の悪化が危惧されています。業界全体の変革が必要とされるなか、行政書士として課題解決に取り組んでいるのが行政書士YTRディア法務事務所代表の篠原雄太郎さんです。
自らも障害福祉業界の現場に在籍していた経験を生かし、様々な福祉事業者を支える篠原さん。障害福祉領域に特化した仕事内容や、お世話になった様々なステークホルダーへの感謝、そして今後福祉業界を志す若者への思いを伺いました。
障害福祉領域に特化、行政書士YTRディア法務事務所
ー篠原さんが代表を務める行政書士YTRディア法務事務所について教えてください。
2018年10月に設立し、障害福祉サービス事業運営のコンサルティングを行っています。障害福祉サービス事業指定申請や、加算の取得、創業・運営に必要な資金調達のサポートなど業務は様々です。
ー他の行政書士事務所と比較して異なるポイントはどこにあるのでしょう?
最大の特徴は福祉事業に特化していることです。私自身が障害福祉業界に10年ほど在籍していた経験を生かし、障害福祉事業者の立ち上げから事業展開まで長期的に支援しています。立ち上げ時の行政的な手続きのサポートはもちろん、業界全体の課題の一つである離職率の高さを改善するための人材育成や教育についてのサポートも行っています。
ーお客様からはどのような点をご評価いただくことが多いですか?
行政書士はその仕事の性質上、事業を新たに立ち上げる段階で活躍するパターンが多いのですが、私は立ち上げ後、つまり事業を展開する段階で生じる問題のご相談にものることができます。お客様の背景や事情を深く理解したうえで、点ではなく線のサービスをご提供することができるので、「篠原さんに立ち上げからお願いしたかった」などのありがたい言葉を頂戴することがあります。
行政書士YTRディア法務事務所のステークホルダーへの向き合い方
合同会社Five nineは、放課後デイサービスを運営する会社です。2021年2月からコンサルティングを行っており、「これからずっとお願いしたい」と嬉しい評価をいただいています。私は、2021年4月から『障害福祉業界を明るくしたい交流勉強会』をzoomで主催しているのですが、代表の長谷田さんが「自己紹介が苦手…」と仰りながらも、毎回しっかり参加してくださっているのが非常に嬉しく思っています。聞いてみたいことは、「私が色々お誘いしていますが、迷惑になっていませんか?」ということでしょうか(笑)。
エクセラマネジメント株式会社は、不動産の管理、賃貸、売買、仲介を行う会社です。社長の川田隆弘さんとはBNI(※ビジネスコミュニティ)で1年ほど前に知り合いました。不動産業界には珍しく、川田社長は福祉学部ご出身なので、障害福祉事業を立ち上げたい方の物件探しを安心してお任せすることができる心強い存在です。障害福祉事業の立ち上げでは物件探しがネックになることが多いのですが、川田社長はとにかく仕事がスピーディかつ的確なので、すぐに良い物件を提案してくれます。「もう見つかりました!」と喜びの報告をクライアントから受けることもしばしばです。クライアントの話を親身に聞き、オーナーに条件をかけあってくださるので本当にありがたいですね。正直な話、福祉事業者は立ち上げ後に騒音などでご迷惑をおかけすることもあるので、川田社長には「ご迷惑じゃないですか?」とお聞きしたいです。
一般社団法人ワーキングバリアフリーは、古本のネット通販と障害者支援を行う会社です。各地に設置されたブックポストから回収された本の仕分けや出品、梱包、配送といったネット通販業務を障害者就労施設で行うことで、障害者の雇用創出・自立支援を行っています。ワーキングバリアフリーさんには私が直接的にというより、私のクライアントがお世話になることが多いです。障害福祉事業者でも、障害者の方にどんな仕事を紹介すればいいのか分からないことがあるので、そういうときに「本の仕分けや配送といった仕事があるみたいですよ」と、ワーキングバリアフリーの事業をご紹介すると非常に関心を持っていただけるんです。島田理事には今後も引き続き、困っているクライアントがいたら引き受けていただけるとありがたいです。私もワーキングバリアフリーの活動に貢献したいという気持ちが強いので、私に何ができるかをお聞きしたいです。
介護福祉士とケアマネジャーの資格も持つ社労士さんです。2020年に開催された、コロナで危機を迎える中小企業を支援するための会に参加した時にお知り合いになりました。お互い福祉業界での経験があったので、すぐに意気投合したのを覚えています。社労士の専門業務は私がカバーできない領域なので、今後協力してくださると非常に心強いと思っています。ですから、「障害福祉領域のお仕事に興味ありませんか?」とお伺いしてみたいですね。
アクティス株式会社は、中小企業の経営改善や事業承継の悩み解決を専門とする経営コンサルティング会社です。代表の赤沼慎太郎さんも行政書士で、資金調達や事業再生を専門としており、非常に経験豊富な方です。2年前に赤沼先生が主催する勉強会に参加したのをきっかけにお世話になっています。最近は私も資金調達の案件を担当することが増えたので、赤沼先生にはよく相談にのっていただくのですが、毎回懇切丁寧に教えてくださるのでとても助かっています。1年ほど前に、赤沼先生が福祉事業者の案件ができる人が社内にいないということで、私に任せてくださったことがありました。雲の上の存在である赤沼先生が私に頼ってくれたというのが非常に嬉しく、少しは近づけたのかな?と思いました。ご自身の顧問先のことでいつも多忙なはずですが、相談を受けるといつも親身に答えていらっしゃるので、そのエネルギーはどこから来るのかをお伺いしてみたいです。
尾瀬さんはBNI(※ビジネスコミュニティ)のバイスプレジデント(当時)です。私は尾瀬さんが委員長を務めるメンバーシップ委員会に所属しているので、いつも非常にお世話になっています。ご自身の会社だけではなく、BNIなど多方面で精力的に活躍していらっしゃるのが本当に凄いと思います。
鈴木さんは、先述した尾瀬さんが紹介してくださいました。私は障害福祉分野ですが、鈴木さんは介護分野で同様の事業を行っているということで仲良くしていただいています。以前、鈴木さんが主催する勉強会で、私がどういう思いで事業を行っているかを話す機会をいただいたことがあり、とても感謝しています。私は初めて会う人には少し遠慮してしまうのですが、気を許すとグイグイ行くタイプなので、「それが迷惑じゃないですか?これからもそんな感じでつきあっていいですか?」とお聞きしたいです(笑)。
大村さんとはBNI(※ビジネスコミュニティ)を通して知り合いました。そのとき私がちょうど名刺を新しくしたいと思っていたので、名刺デザインを得意とする大村さんにお願いすることにしたんです。とても丁寧にヒアリングをして提案してくださったデザインは本当に素晴らしく、見た瞬間、「これが良い!」と即決するほどでした。普通は名刺の裏面ってあまり見られないと思うのですが、大村さんデザインの名刺は皆さん隈なく見てくださいます。周囲の方からも非常に評判が良いので、大村さんにお願いして本当に正解だったなあとしみじみ思います。今後はzoomの背景や、Webデザイン領域でもお力を借りたいと思っているので、「これからもご協力いただけますか?」とお伺いしたいです。
宮地さんとはtwitter経由で知り合いました。行政書士会の同じ支部で活動しています。障害福祉事業に興味があるようで、私が主催する『鶴ヶ島市障害者支援ネットワーク協議会』にもお忙しいにもかかわらず参加してくださっているのでいつもありがたく思っています。
鶴ヶ島市障害者支援ネットワーク協議会は、埼玉県鶴ヶ島市周辺地域の障害者や障害者福祉に関わる団体、事業所などが、障害者福祉の向上のために構築したネットワークです。市内の障害者の支援を行ったり、防災情報を共有したり、学習活動などを行ったりしています。会員の中里さんとは大学時代にボランティア活動を通して知り合いました。とても熱意溢れる人で、いつも一生懸命に協議の活動を行ってくれており、非常に感謝しています。中里さんには、私のフランクな接し方が迷惑になっていないかをお聞きしたいです。
ASユナイテッドは、埼玉・東京を活動拠点としているCPサッカー(脳性麻痺7人制サッカー)チームです。私はスポンサーとしてチームに関わっており、ASユナイテッドが運営するFacebookやInstagramで弊社を宣伝してもらっています。代表の中村臣宏さんは大学の先輩で7、8年くらい学年は離れていますが、大学のイベントにASユナイテッドとして参加する姿を度々見ていました。社会貢献への意識が高く、熱心に活動に取り組んでいらっしゃる様子にいつも刺激を受けています。私も頑張ろうという思いを抱かせてくれて、ありがとうございます!とお伝えしたいですね。チームに今後も貢献していきたいと思っているので、自分ができる貢献にはどんなことがあるかを聞いてみたいです。
誤解を恐れず言えば、福祉業界で働くことに良いイメージを持っている人はそこまで多くないと思います。人材の定着率が悪く、離職率が高いというのは、その事業所の人間関係や給与だけの問題ではなく、業界全体にテコ入れが必要なことを示しているのでしょう。
そういった難しい状況にもかかわらず、きちんとした思いを持って福祉を志す学生の存在は非常に貴重ですから、大切にしないといけません。
しかし、福祉事業を運営する人のなかには、金儲けのみを考え、従業員の労働環境をほとんど考えないような人も残念ながら存在します。そういった人たちによって、社会に貢献したい、人の役に立ちたいと真剣に思っている学生の志が潰されてしまうことは絶対に避けなければいけません。この業界を志す若者がきちんと活躍できるようにしたいと思って、私は日々仕事に取り組んでいます。
そして、学生が安心して働ける場をつくるには、障害福祉業界全体を変えなければいけないと思い、2021年4月から『障害福祉業界を明るくしたい交流勉強会』を始めました。
健全に福祉事業を運営するためには、人の役に立ちたいという「福祉への志」と、ビジネスである以上「経営力」の2つが必要です。
福祉への志に関しては、交流勉強会の参加者を福祉事業者に限定せず、志のある人であればどなたでも参加できるようにすることで、きちんとした思いを持って仕事をする人たちとのつながりもでき、刺激につながると考えています。
また、経営力に関しては、福祉業界の場合、報酬改定やその他関連法律などを把握することが重要な要因になります。法律には苦手意識を持つ人が多いので、できるだけ法律のハードルが下がる勉強会にしたいと思っています。
例えば報酬改定などに込められた行政側の意図を私が事業者に分かりやすく伝えることができれば、事業者は納得して事業運営に生かすことができるはずです。そのためには私がまず深く理解しないといけないので、コツコツ勉強を続けていこうと思います。
私も自分にできることを精一杯行っていきますので、福祉業界を志す学生の皆さんもぜひ熱い思いを持ったまま突き進んでいってほしいと思います。
<プロフィール>
篠原 雄太郎
行政書士YTRディア法務事務所 代表。約10年間の社会福祉士経験を生かし、2018年独立。障害福祉業界を明るくしたい交流勉強会を主催。
<企業情報>
行政書士YTRディア法務事務所
事務所所在地:埼玉県鶴ヶ島市富士見2-16-24
電話番号:049-298-3537
Fax:049-298-3538
e-mail:info@ytrdia-office.com