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株式会社ストレージ王

https://www.storageoh.co.jp/

千葉県市川市市川南1丁目9番23号 京葉住設市川ビル4階

トランクルーム業界の未来を切り拓くストレージ王  誰もが荷物を預ける時代へ

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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株式会社ストレージ王 外観
荒川滋郎社長「安全で快適な環境を提供することが、私たちの競争力の源泉です」(提供:ストレージ王)

「家のスペースが足りない」「季節ごとの荷物を安全に保管したい」──こうしたニーズが高まりを見せる中、トランクルーム業界が急成長している。

住宅事情の変化や働き方の多様化が背景にあり、特に都市部では収納スペース不足が顕著だ。アメリカではトランクルームの世帯普及率が10%を超える生活インフラとして定着しているが、日本はわずか1%程度。ここに大きな成長余地がある。

この分野で注目を集める企業の一つが、株式会社ストレージ王だ。同社は、単なる保管サービスを提供するだけでなく、地方創生や新しいライフスタイルの提案に挑戦している。

今回は同社の代表取締役社長、荒川滋郎氏に話を聞いた。

トランクルーム業界の歴史と成り立ち

日本のトランクルームの起源は、1931年に三菱倉庫が歌舞伎役者の衣装保管を目的に始めたのが最初という説がある。その当時、劇場で使う大量の衣装を安全に保管し、次の公演に備えるためのスペースが必要とされていた。こうした特殊なニーズに応える形で生まれたサービスは、徐々に他の分野でも利用されるようになっていく。

しかし、家庭用トランクルームサービスが一般に普及し始めたのは1990年代以降のことだ。都市化の進展に伴い、住宅の間取りが小型化する中で、外部の収納スペースを必要とする家庭が増えていった。

一方、アメリカではトランクルーム文化が早くから定着している。学生が寮生活を始める際に荷物を収納したり、ガレージに物を保管するなど、ライフスタイルの一部として活用されているのが特徴だ。

このように、生活環境や文化の違いがトランクルームの普及に影響を与えている。

「日本の市場はまだ発展途上ですが、都市部の住宅事情の変化やライフスタイルの多様化により、トランクルームの需要は着実に増えています」と荒川氏は語る。

特に東京都心では、マンションの価格高騰が影響し、従来よりも住戸面積が縮小している。収納スペースを確保するため、外部のトランクルームを利用するケースが増えているのだ。

ストレージ王の事業展開

ストレージ王は、東京証券取引所のグロース市場に上場している会社だ。2024年1月期の売上高は、33億2500万円、営業利益は1億5100万円。ルーツは2007年に設立された親会社「デベロップ」にある。デベロップは、コンテナを活用した建築事業を展開し、特にコンテナホテルで知られている。

同社がトランクルーム施設に採用しているのは、ラーメン構造と呼ばれる構造を持つ建築専用のコンテナだ。柱と梁だけで建物の構造を支える強固な形式であり、ドイツ語で「枠」を意味するラーメンという言葉に由来する。日本の建築基準法では5階建ての建物も建築可能だ。

荒川氏はストレージ王のコンテナは単なるコンテナではなく、特徴として「堅牢な構造と短期間で設置できる工期の短さ」を強調する。

ストレージ王 代表取締役社長 荒川さん
提供:ストレージ王

荒川氏
「私どもが使っている建築用のコンテナは、柱と梁だけで構造材として持つようなラーメン構造を採用しています。これにより、強固な建築物が短期間で設置可能となります」。

独自性が光る都心型トランクルームの展開

日本国内には、エリアリンクやキュラーズ、パルマといった大手企業が存在する。しかし、ストレージ王の独自性は都心型トランクルームの新規出店数にある。

荒川氏
「特にここ数年の23区内での新規出店数では、私たちは業界トップクラスです。ここ3年ほどは年間5軒以上のハイペースで出店しています。都心のニーズを的確に捉えた結果だと考えています」

都心型トランクルームの成功要因の一つに、親会社デベロップの建築ノウハウを活かした断熱性能や空調設備の充実も挙げられる。

これにより、トランクルーム内の湿度管理が徹底され、収納している荷物の品質を長期間にわたって保つことが可能とのこと。

荒川氏
「都心のビル型トランクルームでは、湿度管理が非常に重要です。カビの発生を防ぐためにも、断熱性能や空調技術は欠かせません。私たちはこの点において、業界トップクラスの技術を導入しています」

住宅が小型化する都心部では、トランクルームの利用者が増加しているが、室内環境の管理が不十分な施設では、保管している荷物の劣化リスクがある。そのため、ストレージ王は空調と断熱性能の向上に力を入れ、安心して利用できる施設を提供しているということのようだ。

不祥事の経緯と再発防止策

ただ、順風満帆だった同社だが、2024年11月に詐欺事件に巻き込まれる。当時の適時開示を見ると、ストレージ王は悪意のある第三者による詐欺被害を受け、約7600万円の資金が不正に流出したことを告げている。

この件について、同社は「虚偽の指示による犯罪行為」と説明し、速やかに捜査機関に被害を報告。事件の翌日には迅速に適時開示している。このことを荒川氏に問うと、以下のように釈明した。

今回の詐欺事件について、どのような状況で発生したのでしょうか。

荒川

非常に巧妙な手口でした。最初は、銀行からシステムエラーの問い合わせが来たと思い込んでしまいました。結果として、社内の担当者が対応に追われる中で、不正な指示に従ってしまったのです。

今回の事件を受けて、どのような再発防止策を講じましたか。

荒川

最も重要なのは、社内教育の徹底です。特にサイバー犯罪は年々手口が巧妙化していますので、社員一人ひとりが最新の犯罪手口を理解し、冷静に対応できる体制を整える必要があります。

実際に外部のセキュリティ専門機関の協力を得て、研修を実施しました。また、電話での問い合わせには必ず折り返し連絡をするルールを徹底し、即時対応を避ける仕組みを取り入れました。

今回の件をどのように受け止めていますか。

荒川

私個人としても、これまでのキャリアの中で、電話を受けた瞬間に目の前が暗くなるような経験は初めてでした。

しかし、被害に遭ったことで、どのような企業でもサイバー犯罪の脅威に直面し得るという現実を痛感しました。この経験を教訓に、より安全な事業運営を目指していきます。

荒川氏の説明からは、同社が再発防止に向けた対策に本気で取り組んでいる姿勢がうかがえる。同社は、顧客の信頼を取り戻すため、今後も安全対策の強化を続けていく方針だ。

荒川社長のキャリアと挑戦

荒川滋郎氏は、東京大学経済学部を卒業後、新日本製鐵株式会社(現・日本製鉄)に入社。

その後、株式会社パルコに転職し、経営企画や再開発事業を手掛けた。仙台パルコや浦和パルコといった大型商業施設の立ち上げに携わり、再開発プロジェクトで実績を積んだという。

その後、物流や不動産管理を手掛ける寺田倉庫株式会社に移り、さらなる経験を積んだ荒川氏は、2016年に親会社であるデベロップに入社し、2019年からはストレージ王の代表取締役社長に就任。

2022年には同社をグロース市場に上場させるなど、企業価値向上に尽力してきた。

資格取得に挑戦する理由

荒川氏は、宅地建物取引士およびビル経営管理士の資格を保有している。これらの資格取得に至った背景には、不動産業界でのキャリアを広げる意欲があった。

「私が宅建の資格を取得したのは、現場での経験をより深く理解するためです。」と荒川氏は語る。何より、宅建を取得した際の勉強方法がユニークだ。

「ニンテンドーDSの宅建過去問ソフト『マル合格!』シリーズを使いました。通勤時間に効率的に勉強できたのが合格の秘訣です」

試験問題をスピーディーに解く訓練が重要だと考えた荒川氏は、ゲーム感覚で反復練習を重ね、2度目の挑戦で合格を果たしたという。

「資格取得は、知識を深めるだけでなく、自信を持って業務に取り組むための大きな助けになります」。

未来を見据えた挑戦

ストレージ王は、トランクルームの利用を通じて地域社会の課題解決にも積極的だ。特に、少子高齢化が進む中で増加している空き家問題への対応を重視している。

荒川氏
「荷物をトランクルームに保管することで空き家の整理が進み、若い世代が地域に定住しやすい環境を整えられます。また、地方の保管需要を創出することで、地域経済にも貢献したいと考えています」

空き家問題の一因は、これまで住んでいた人が高齢になり、老人ホームや介護施設に移る際、家の中に荷物がそのまま残されていることだ。家財道具がそのままでは、空き家を次の世代に引き継ぐことが難しく、大きな機会損失につながる。

「例えば、空き家を売却または賃貸に出そうとしても、家の中にある荷物が障害になってしまうケースが多いです。そうした荷物をトランクルームに保管することで、空き家の活用がスムーズになり、地域に新たな住民が定着するきっかけを作ることができます」と荒川氏は説明する。

同社のトランクルームは、単なる保管スペースの提供にとどまらず、こうした社会課題の解決に向けた取り組みとしての側面を持つ。空き家の活用を促進することで、地方の活性化に貢献し、持続可能な社会の実現を目指しているのだ。

ストレージ王の持続可能な社会づくりの取り組み。挑戦は、まだ始まったばかり。これからも注視していきたい。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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