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セムコ株式会社

https://www.semco-ltd.com

〒651-2271 兵庫県神戸市西区高塚台5-4-23

電話番号 / FAX:078-992-8361 / 050-3730-4362

年間休日135日で過去最高益の中小企業の秘訣

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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社員の意識改革とチームワーク重視の経営~

セムコ株式会社 宗田謙一朗 社長

働き方改革が叫ばれる中、多くの企業が休日の増加や待遇改善に取り組んでいる。しかし、制度変更だけでは、生産性低下や従業員満足度向上につながらないケースも多い。真の働き方改革とは、単に労働時間を減らすことではなく、社員一人ひとりの意識を変え、組織全体で生産性を向上させることにあると言えるだろう。

本稿では、年間休日135日を実現しながら、過去最高益を達成した中小企業の事例を紹介する。船舶用液面計で国内トップシェアを誇るセムコ株式会社(兵庫・神戸)だ。同社の取り組みから、真の働き方改革を実現するためのヒントを探る。

液面計で国内トップシェアの優良企業

液面計
液面計

セムコは、1985年に創業し、タンカーや貨物船のタンク内の液体の量を計測する「液面計」の設計・製造・販売を主力事業とする。同社は2006年から新卒採用を強化し、IT化を進めるなど、いち早く働き方改革に着手してきた。しかし、当初は生産性が低下傾向にあったという。

休日増加と生産性低下のジレンマ

「休日を増やしたり、産休・育休制度を充実させたりする一方で、経験の浅い社員が増えたため、生産性がなかなか上がりませんでした。2011年には年間休日130日まで到達しましたが、営業利益はずっと右肩下がり。2014年3月にはとうとう売上高営業利益率が0.4%まで下がってしまいました。当時は、業務効率化や仕組み・ルール作りに注力しすぎて社員たちはルールを守ることが目的になり、逆に失敗を恐れるなど保守的で硬直化した組織となってしまいました」と、同社の宗田謙一朗社長は当時を振り返る。

転機は2020年3月、コーチングを取り入れた組織改革(チームコーチング)

転機となったのは、2020年のことだ。経営方針を転換し、コーチングを取り入れた組織開発(チームコーチング)に着手した。社員一人ひとりと向き合い、会社の目指す方向や価値観を共有する中で、社員の意識改革を促した。

ある若手社員から「営業で新規案件を取ってきても社内の各部門が中々協力してくれない。ルールや仕組みで、必然的に協力しなければならないようにできないでしょうか?」と相談があった。
そこで宗田社長は「仕組みやルールは所詮人が運用している。その人の意識が変わることで組織を変えよう」と考え、チームコーチング導入を決めた。

チームワーク重視の経営で過去最高益を達成

意識改革と並行して、チームワークを重視した組織作りにも取り組んだ。ミッション・ビジョン・バリューを社員と共につくるにあたり、まず経営チームを結成したそうだ。このチームは役職に関係なく、宗田社長がメンバーを選抜したという。メンバー達で定期的に集まり、会社の方向性や戦略を決める会議を開催していった。
この際、役に立ったのが、チームコーチングだった。全員で議論し、合意形成を図りながら策定できたという。

自分たちが目指す未来を、自分たちの手で作り上げる。そのプロセスを共有したことで、社員一人ひとりの当事者意識が高まり、会社の方向性に対する共感や所有感が生まれました。結果として、トップダウンではなく、社員が自律的に考え、行動する、自走型の一枚岩のチームへと変容していったのです」(宗田社長)

「ルールを守ることが目的になり、失敗を恐れて硬直化していた組織が、今では、「全員営業」「部門の壁を取っ払う」を合言葉に、社員一人一人が責任感とチームワークを意識するようになり、組織全体に活気が出てきました。また社員には『休暇を取得できるのは、他の社員がカバーしてくれているおかげ』『会社はチームであり、全員で成果を出すことが重要』ということを繰り返し伝えてきたこともあり、安心して休暇を取得できるよう、業務の見える化や標準化を進め、誰が休んでも業務が滞らない体制作りを社員たちが取り組んでくれました」(宗田社長)

その結果、社員の意識が変化し、各自が自律的に行動するようになったことで、生産性は向上。 2023年3月期には売上高は長年超えられなかった過去最高売上の壁を更新し、経常利益率は17.8%を達成した。2024年3月期にはさらに前年売上を3割ほど上回り、経常利益率はさらに向上し、19.9%を達成した。年間休日135日を実現しながら、過去最高益を達成するという、まさに理想的な働き方改革を実現したのだ。

働き方改革成功の鍵は社員の意識改革にあり

セムコの事例は、真の働き方改革には、制度設計だけでなく、社員の意識改革と、チームワークを重視した組織作りが不可欠であることを示唆している。同時に、改革は一朝一夕でならず、時間のかかるものであることも伝わるだろう。

同社は今後も、社員が働きがいを感じながら、最大限の能力を発揮できる組織作りを目指していくという。

セムコ 外観
セムコ本社 外観

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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