
「どいつもこいつも、同じに見える……」 昨今の採用担当者を悩ませる、原因不明の“視界不良”。その正体は、生成AI(ChatGPT等)によって量産された「優等生すぎる金太郎飴エントリーシート」だ。AIによるコピペで個性が埋没し、就活市場は深刻な“乱視”状態に陥っている。
そんな霞んだ視界に、あの大手製薬会社が強烈な「目からウロコ」の一手を打った。ロート製薬が15日に発表した、2027年卒採用からの「書類選考・完全撤廃」である。「目薬のロート」だけに、その目の付け所はやはり一味違っていた。
AI汚染で「充血」した現場へのショック療法
同社が従来の書類選考を捨てて導入するのは、「Entry Meet(エントリーミート)」なる荒療治だ。なんと、いきなり人事担当者と15分間の対面トークというガチンコ勝負を全国8カ所で行脚して実施するという。
多くの企業が「AI面接」や「キーワード自動抽出」で選考の効率化という名の“手抜き”を進める中、ロートはその真逆を爆走する。画面越しのテキストデータで視力検査をするのではなく、膝を突き合わせて学生の「瞳の輝き」や「焦点(フォーカス)」がどこにあるのかを直接見極めるのだ。これはデジタル疲れした就活現場に差す、まさに「清涼感あふれる一滴」と言えるだろう。
「ドライアイ(関係希薄)」を防ぐ、先着順のスピード勝負
興味深いのはその運用方法だ。応募は原則「先着順」となる見込みで、のんびり構えてはいられない。このスピード感は、目の疲れに即効性を求める同社らしい設定とも読めるが、そこには強烈なアンチテーゼが潜んでいる。
「AIで楽をする」世の中の流れに対し、あえて「人間力で汗をかく」姿勢。担当者が語る「あえて初期段階で対面の場を設けた」という言葉からは、手間を惜しまず、入社後のミスマッチを防ぐための予防医療的アプローチが見て取れる。「目の健康」を守る会社が、人を見る自らの「眼力」を鍛え直そうとしているようにも映るのだ。
AIによって均質化され、ぼやけてしまった学生たちの個性の輪郭を、ロート製薬はくっきりと「ピント調節」しようとしている。この採用方式が吉と出るか凶と出るかは未知数だが、一つ確かなことがある。ロート製薬の採用担当者の目は、これから数ヶ月、学生の素顔を見極めるためにギンギンに冴え渡ることになるだろう。
就活生諸君、AIに書かせた志望動機など、もはや通用しない。今こそ、君自身の「まなざし」で勝負する時が来たのだ。



