
大阪・関西万博2025が10月13日、半年にわたる会期を終えて閉幕した。開幕当初は混雑や予約システムへの批判が相次いだが、会期後半に入ると日本人来場者の間では「思ったより楽しめた」「想像以上に展示が良かった」との声が増えた。大きな事故や混乱もなく、総じて「成功裏に終わった」と評してよい幕切れだったといえる。
一方で、海外からの評価は依然として分かれた。RedditやX、YouTubeなどSNS上には、現地を訪れた外国人による体験談が数多く投稿され、万博の実像をめぐる議論が活発に交わされた。
海外レビューは賛否両論 RedditやSNSで議論白熱
Redditの旅行フォーラムや日本旅行スレッドでは、万博を「未来のディズニー」とたとえる声がある一方、「巨大なミュージアム」「高額チケットと混雑に見合わない」とする投稿も多かった。
特にアメリカ人やヨーロッパからの来訪者が多く投稿しており、体験談のトーンは「期待が大きかった分、失望した」というものが目立った。
とはいえ、同じスレッド内でも意見は分かれていた。「抽選制度は不便だったが、全体としてはよく整っていた」「リングの下の日陰スペースや冷房の効いたレストランは快適だった」といった反論も見られた。
中には「1日中滞在したが、夜のライトアップまで見る価値があった。再訪はしないが、経験できてよかった」と冷静に語る投稿もあり、万博体験への受け止めは一様ではなかった。
ミャクミャク “奇抜”か“愛嬌”か、評価が分かれた公式キャラクター
万博の公式キャラクター「ミャクミャク」についても、海外での反応は二分された。英語圏では、RedditやInstagramで「日本らしい独創性がある」「不気味なのに可愛い」「どこか哲学的」といった肯定的な意見がある一方、「怖すぎて子どもが泣く」「血管の怪物みたい」といった辛辣なコメントも散見された。
米国メディアの一部では「ミャクミャクは“かわいい文化”の限界を試す存在」と評され、奇抜なデザインがかえって話題性を高めたとも分析されている。
一方、日本国内では次第に愛着を持つ声が増え、会期後半には「思ったより現地で見るとかわいい」「グッズが売り切れていた」といったポジティブな評価が主流となった。会場のフォトスポットでは、ミャクミャクと記念撮影する行列が連日絶えなかった。
欧米では「難解なサイト」「抽選制」「行列地獄」への不満
Redditや旅行者向け掲示板では、共通して「公式サイトが複雑すぎる」「抽選制度が分かりづらい」「どの列が何の展示につながるのか分からない」といった運営面の不満が相次いだ。ある投稿者は「公式サイトは悪夢のようで、予約は官僚的な迷路を進むようだった」とこぼし、別の旅行者は「チケット販売を優先しすぎて、快適な体験が犠牲になっていた」と批判している。
また、ドイツ語圏のSNSでも「日本は“長い行列=品質”という文化だが、抽選制では努力が報われない」と指摘する声が目立ち、「東京ゲームショウやUSJでも同じ構造だ」と不満を述べる投稿が拡散された。
一方で「誤解もある」と冷静な再評価の声
とはいえ、全否定ばかりではない。Redditの別スレッドでは「リング下には十分な日陰と座席があり、レストランやショップにも冷房があった」「食事が高いのは予想通り。会場内のセブンイレブンは良心的だった」といった投稿もあり、過剰な批判をいさめる意見もあった。
中には「抽選制は確かにストレスだが、全体の流れは想定内。行列を避ければ十分楽しめる」と書く利用者もおり、評価の分布は二極化していた。
また、「ガンダムを直に見れただけですべてOKさ。感動したよ」といったアニメファンと思われる人の評価や「和太鼓などの日本人のトラディッショナルなショーは大変見ごたえがあり良かった。日本に来たということを一番実感できた」といった声もあった。
圧巻のリングとフランス館に称賛も
好意的なレビューでは、シンボル「リング」の壮大な建築美を称える声が多い。夜間にはLED照明で幻想的に光り、「日本らしい構造美だった」「夕焼けが綺麗。対岸を人が歩いているのも見え、リング自体が世界中に人がいることを暗示しており、地球そのものを表しているよう」と絶賛された。
また、フランス館については「ルイ・ヴィトンの展示と真っ白なドレスの部屋が印象的だった」「美術館のような空間で、フランスらしい気品を感じた」とポジティブな投稿が相次いだ。
サウジアラビア館やインドネシア館の展示も「文化と映像演出の融合が素晴らしい」と好評で、テーマ性を重視した国々のブースには高い評価が集まった。
「訪日客6.1%」の現実と残された課題
しかし、全体で見ると外国人の来場は想定を大きく下回った。産経新聞によると、万博協会は来場者総数2820万人のうち訪日客を350万人(12.4%)と見込んでいたが、9月12日時点の実績は6.1%にとどまった。アジアからの来場が52.6%と過半を占め、欧州22.1%、北米17.6%。国内では近畿が67.1%と圧倒的で、遠方からの動員は限られた。
協会は、海外旅行会社との提携やインフルエンサーによるPRを試みたが奏功せず、石毛博行事務総長は「情報が海外に伝わるスピードが遅く、予約の仕組みも難しかった」と認めた。
海外メディアは「現代日本のイベント文化が国際基準とのずれを露呈した」と評している。
万博が残した“日本の現在地”
大阪万博は、技術力よりも「体験の設計」を問われたイベントだった。
日本人の多くが最終的に「楽しかった」と感じた一方で、海外では「情報の不透明さ」「抽選偏重」「快適性の欠如」が課題として浮き彫りになった。
それでも、「一度は行く価値がある」「挑戦した意義は確かにあった」との声も根強い。
ある外国人はこう締めくくっている。
「欠点は多いが、“人と地球の共生”というテーマは伝わった。完璧ではなくても挑戦したことに意味がある。」
大阪湾の風に照らされたリングが放つ光は、日本が次の国際舞台でどんな学びを生かすかを静かに問うている。