(撮影:安藤ショウカ)
池袋に支店を持つ株式会社商工組合中央金庫(以下、商工中金)は、マテックスのメインバンクだ。そして、マテックスと同じくパーパス経営をしている企業であり、日本を変える志を掲げている。
商工中金のパーパス経営や、同じ志を持ったマテックスに対する思いについて、池袋支店長である松本 啓一郎氏に話を伺った。
自己紹介
松本
弊社は「中小企業による中小企業のための金融機関」で、中小企業を専門に安定した融資をしています。
それに加えて近年は、企業様が融資以外で困っていることに合わせたオーダーメイドのソリューションの提供もしています。
資金調達や資産運用、事業・経営のサポートなど、中小企業のお悩みを解決する「なんでも屋」のような会社です。
その中でも弊社だけでソリューションの提案ができないこともあります。その場合は提携している業者さんにもお力添えをいただくことで、オーダーメイド型のサービスを実現しています。
松本
2023年に本部から池袋支店に異動してきて、支店長に着任しました。まだ着任から3か月ですが、池袋支店の中の課題も徐々に見えてきているので、それをこれから少しずつ変えていこうと思っています。
異動してきて、池袋はどんな地域だと感じていますか。
松本
池袋に来て感じるのは、やはり人の多さです。そしてそれが経済力に直結しているように思います。人が多いために会社も多い。となると、その分業種の幅も広いですし、中にはかなり大規模な会社もあります。
大規模な会社は、年商や設備投資の額、会社としての動きも非常にダイナミックで、東京が日本の経済を引っ張っていくエリアであることを実感しますね。
松本さんは業務改善にも尽力されてきたと伺いましたが、それはどのような経緯だったのでしょうか。
松本
弊社は2018年頃に、企業風土、仕事の進め方などをゼロから見直して変えていくことになり、プロジェクトチームが立ち上げられ、そのメンバーに入りました。
主に担当したのは営業面での業務効率化です。当時は無駄とも考えられる仕事が結構残っており、そのプロジェクトチームで抜本的に見直しを行い、業務の廃止やシステム化等を行っていきました。
松本
プロジェクトチームに入っていた時に、日本生産性本部の講習を1年間受けて、現場を変えていくことについてみっちり勉強をしました。
そして、そこで学んだことを会社の中でアウトプットするような形で進めていきました。
しかし、多くの社員は、職場や企業風土を変えていくような訓練を全く受けていません。
そのため、新しい方向性を本部が打ち出した一方で、現場は実際にどう変えていけばいいのか分からず苦労していました。
そういったなかで現場を変えていくためにたくさん試行錯誤しましたし、いろいろな失敗も体験しましたね。
それでも「こういう時はこうすると上手くいくかもしれない」というような感じで、アプローチの仕方が自分なりに分かってきたことは大きな成果でした。
(分からないことばかりのなかで、手探りで成功や失敗を重ねてきたという)
商工中金から見たマテックス
マテックスとはどれくらいのお付き合いなのでしょうか。
松本
平成14年からもう20年以上、マテックスさんのメインバンクとして良い関係を続けさせていただいています。
支店長に着任するにあたって前任からは、先進的にパーパス経営に取り組んでいる会社だと伺っていました。
先日は松本社長から、他の会社を集めた勉強会をしていると聞きましたし、一般的な卸商社がやらないようなことをしていて、すごい会社だなと思っています。
実は弊社も2年ほど前に「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする。」というパーパスを策定しました。
ただ抽象的なものでもあるため、各社員に自分ごととして考えてもらえるようになるには時間がかかると思っています。
そのため、ワークショップをしたりマイパーパスを作ってもらったりしながら、社内に浸透させていっているところです。
マテックスさんは弊社よりも早くパーパス経営を始めていてノウハウの蓄積もあるので、松本社長からはパーパス経営についてお話を聞かせていただいています。
(商工中金の名刺の裏にはパーパスが記されている)
関わっている企業はたくさんあると思いますが、そのなかでもパーパス経営や地域を盛り上げるような取り組みをしている企業は珍しいのでしょうか。
松本
珍しいですね。最近になって「パーパス経営」という言葉や話が出てきて、パーパスを掲げる会社さんも増えてきています。
その中でも、マテックスさんはいち早くパーパスやビジョンを大切にした経営や事業展開をしているので、とても進んでいると思いますね。
取り組んできた時間が長いことも強みになると思っていて、時間をかけて理解が深まることもあると思いますし、上司や先輩が理解していれば、その次の世代の方の理解も早いと思います。
日本の人口減少が進んでいる今、労働力不足が叫ばれています。私もいろいろな会社の社長とお話させていただくのですが、やはりどこも採用や労働環境に関する課題を抱えています。
そこで一つの手がかりになるのが、パーパス経営ではないかと思っています。会社のパーパスに向かっていけば、何かのため、誰かのためとなる目的ができて、さらにそれが地域や日本を変えることにもつながっていく。
そういう気持ちが社員にも浸透していくことができれば、仕事のやりがいや達成感にも繋がると思います。マテックスさんはまさにそういう土壌作りをしていると思っています。
(「一丸となって取り組んでいるマテックスさんはすごいと思う」と語る松本さん)
松本
弊社のパーパス「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする。」にも、マテックスさんの「窓から日本を変えていく」にも、「日本」というキーワードが入っています。
非上場の中小企業が「日本」を意識したパーパスを掲げていることは、あまり多くないと思います。そういう意味では、マテックスさんの「窓から日本を変えていく」という志にはとても驚きました。
それと同時に、日本を変えていく意思を持った同志のようにも思っていますね。
同志として、「これからこんなことを一緒にしたい」という取り組みはありますか。
松本
これまで私自身、社内でいろいろな経験をさせていただき、会社を変えるためのアプローチ方法も多く学んできました。
ただ、それがどのお客様にも通用するかというと、そうではありません。お客様のことを理解して、課題に合わせたやり方を考えなければなりません。
そして視野を広くして、コンセプトも含めてパーパスを考えるべき企業がたくさんあると思います。
例えばそういう企業と共にパーパス経営について考えてみる、そういうことができたら良いのかもしれないと思います。
今後は、松本社長とともにパーパス経営の成功体験を共有する場を作りたいとも思っています。
私が生産性本部で特に勉強になったことがあり、「プレイヤーとマネージャーは全く違う領域だと思った方が良い」と教えていただいたことです。
プレイヤーとして成功していても、部下を持った時にはマネージャーとしてのスキルを上げないと部下はついていかない、ということです。これを意識するようになってから、私自身の視点が変わりました。
そういう学びや気づきを共有できたら、みんなで高め合えるような場が作れそうだと思いますね。
マテリアリティーマテックスの4つのマテリアリティである「依(よりどころ)」「自分ごと化」「脱炭素」「経済成長至上主義からの脱却」のうち、最も納得するものはどれですか。
松本
「経済成長至上主義からの脱却」です。実は私も最近似たようなことを考えていて、今は資本主義に行き過ぎていて、取り残されてしまっている人達がいると感じています。
社会主義とはまた違いますが、みんなで支えあって共生できる社会になることが、理想だと思います。
また、一企業の経営者が「経済成長至上主義からの脱却」と言っているのは初めて聞きましたし、なかなかないと思います。
それを目指していることが素晴らしいと思いますし、日本を変える志がある松本社長だからこそ、掲げることができるのだと思います。
松本
日本では「失われた30年」とよく言われており、昔は世界の時価評価ランキングに日本企業が何社も入っていたのが今は全然入っておらず、GAFAのような新しいビジネスモデルの会社が日本では出てきていないといわれています。
最近では日本のGDPがドイツに抜かれて世界4位になってしまいました。こういう話を聞くと、日本は頑張らなくてはいけないと思っています。
そうは言っても、こうした状況をすぐには打破できません。だとすると、その状況を変える意思を企業が持って頑張らないといけない。
マテックスさんや弊社のように、日本を変えていく志を持った会社を仲間として増やしていかないと、日本は変わっていかないと思っています。
業界は違えど「日本を変える」という意思を持った同志として、共により良い社会をつくっていきたいです。
◎プロフィール
松本 啓一郎
株式会社商工組合中央金庫 池袋支店 支店長
◎企業情報
株式会社商工組合中央金庫
会社成立:1936年10月8日
本店所在地:〒104-0028 東京都中央区八重洲二丁目10番17号
電話:03-3272-6111
代表取締役社長:関根 正裕
資本金:2,186億円(内政府保有株式1,016億円)
店舗数:国内102/海外4
職員数:3,547人