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インフルエンサー門口拓也氏の誤算 キラキラ実績をちょめ子氏に公的データで論破され、訴訟も完敗

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インフルエンサー門口氏の誤算

昨今、SNS上の誹謗中傷に対する抑止力として「情報開示請求」や「訴訟」が活用されるケースが増えている。しかし、その正当な権利行使が一歩間違えれば、自身の社会的信用を大きく毀損する「諸刃の剣」となり得ることを示す判決が出た。

実名インフルエンサー・門口拓也氏らが、同じくインフルエンサーのちょめ子氏(@chome2xx)を相手取り、約490万円の損害賠償を求めた訴訟である。結果は、一審・二審ともに原告(門口氏側)の請求が棄却される「完全敗訴」となった。

この事例は、インフルエンサーという立場にある者が、安易に法的措置を講じることのリスクと、言論空間における「スラップ訴訟(批判的言論を威圧するための訴訟)」的な振る舞いへの警鐘として、多くの示唆を含んでいる。

 

「公的データ」に基づく指摘は名誉毀損か

事の発端は、門口氏による「4ヶ月で採用面談100名、採用40名」というSNS投稿だった。 これに対し、被告となったちょめ子氏は、誰もが閲覧可能な「厚生年金保険・健康保険適用事業所検索システム」を参照。公的な登録情報と、門口氏の主張する数字に乖離があること(システム上の年金加入した正社員数は2名)を指摘し、「何を採用したのか知りませんが」と疑義を呈した。

この行為に対し、門口氏側は名誉権の侵害だとして提訴に踏み切った。しかし、司法の判断は冷静だった。

一審判決では、門口氏が主張した「採用40名」という実績そのものが、実際には別法人の数字であった上、その別法人の実数と比較しても「約2倍にあたる誇大なもの」であったと認定された。

さらに二審でも、一般の読者が誤認するような表現であったことが指摘され、ちょめ子氏の投稿には「公益を図る目的」と「真実相当性」があると認められたのである。

 

スラップ訴訟的行為が招いた「信用の失墜」

本件で特筆すべきは、自身の正当性を主張するために起こした裁判が、結果として「実績の誇張」がより広く知られてしまうという皮肉な結末を招いた点にある。

仮に、ちょめ子氏からの指摘を受けた段階で、誠実に誤解を解く説明や、「業務委託を交えた人数」や「運営している他社の人数も込みであること」を早々にして訂正を行っていれば、ここまでの事態には発展しなかっただろう。しかし、対話ではなく、賠償請求という「力」で疑義を封じ込めようとした結果、かえって自身の発信内容の信頼性を公的に否定されることとなった。

批判や指摘に対し、直ちに法的措置をちらつかせて威圧する行為は、いわゆる「スラップ訴訟」にも通じるものがある。だが、事実に基づいた正当な検証さえも許さない姿勢は、インフルエンサーとしての「器量」を疑わせ、フォロワーや社会からの信用を遠ざける要因となりかねない。

 

「他山の石」として 大らかな社会であるために

ちょめ子氏は報告の中で、今回の勝訴について「SNS上の誇大広告や誤解を招く情報に対し、客観的なデータに基づいて正当な疑問を投げかける行為が、公共の利益に資する正当な表現であることを証明できた」と述べている。

門口氏の事例は、発信力を持つすべての人間にとって「他山の石」となるはずだ。 実名で影響力を行使する以上、そこには一定の検証や批判が伴う。それをすべて「アンチの攻撃」と見なし、法廷闘争に持ち込むような社会は、決して健全とは言えない。

 

事実に基づく指摘であれば、たとえ耳の痛い内容であっても受け止める。あるいは、誤りがあれば訂正し、議論する。そうした「大らかさ」と「誠実さ」こそが、真のインフルエンス(影響力)を育むのではないだろうか。

敗訴確定後、門口氏は関連する投稿を削除し、沈黙を守っているという。

しかし、消すべきは過去の投稿ではなく、異論を力でねじ伏せようとする姿勢そのものだったのかもしれない。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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