
福岡県福岡市に本社を構えるタウンクロス株式会社が、防犯カメラを軸にした全国展開を加速している。創業から16年で年商10億円を達成し、AI搭載型カメラの普及を進める一方で、福岡を起点にした地域貢献活動にも力を注ぐ。
独自の「みまもりカメラプラスワン」など、地域の防犯意識を底上げする仕組みが注目を集めている。
落ちこぼれからの逆転劇 辻社長の起業ストーリー
辻亮太社長は1976年生まれ。学生時代はスポーツに打ち込みながらも、優秀な兄と比較されるなかで自己肯定感を失い、「落ちこぼれ」の自覚を抱えていたという。就職氷河期の中、福岡のセキュリティ会社に飛び込みで入社。名刺一枚を手に営業現場に放り込まれ、時には名刺を目の前で破られるなど厳しい経験を重ねた。
その後、防犯用品会社への転職を経て、独立。2008年にタウンクロスを設立し、寝る間も惜しんで事業を立ち上げた。現在は全国で防犯カメラやインターホンシステムの販売・施工・保守を手がけるほか、盗聴・盗撮機器の発見業務なども展開している。
「みまもりカメラプラスワン」で防犯意識を地域へ還元
注目されているのが、同社の地域貢献プロジェクト「地域みまもりカメラ」だ。防犯カメラの設置者に対し、もう1台のカメラを無料提供し、地域の共用スペースや通学路などに設置してもらう「みまもりカメラプラスワン」を開始。導入者と地域が一体となって防犯意識を高める取り組みで、設置者自身が「地域の目」となる役割を担っている。

辻社長は「地域に根ざした安心を構築することが、企業の責任であり使命」と語る。地元福岡では、こうした取り組みが少しずつ効果を上げており、防犯とまちづくりの融合としても注目されている。
福岡県警と連携、勉強会を開催
タウンクロスは福岡県警との連携も強化している。2024年12月には「福岡県警察を励ます会」の激励贈答式に参加し、地域防犯に取り組む姿勢をあらためて共有。さらに2025年6月には、警察署員向けに防犯カメラに関する勉強会も開催。警察の現場力と技術力の架け橋を築き、行政との協働による防犯力の底上げを図っている。

AI搭載カメラで「犯罪ゼロ社会」へ
タウンクロスが見据えるのは、AIを活用した次世代型防犯の社会実装だ。顔認証や動作検知などの機能を搭載したAIカメラは、犯罪抑止・証拠保全の両面で高い効果が期待される。現在の年間5000台というカメラ設置台数を、3年以内に倍の1万台に引き上げる計画を掲げている。
「カメラが増えれば、犯罪は減る」という信念のもと、防犯カメラを単なる設備ではなく、地域インフラとして根付かせる意志が見て取れる。
安心を“自分たちの手で守る”時代へ
「昔は“カメラ=監視”というネガティブな印象が強かった」と辻氏は語る。しかし今では、防犯カメラは「見守り」と「安心」の象徴へと変化している。タウンクロスの取り組みは、防犯の概念を単なる警戒から、地域共創へと進化させるものだ。
企業の成長とともに、地域への貢献が深まる――。防犯の未来は、福岡から全国へと広がろうとしている。