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第一生命HD、情報無断持ち出し1155件!生保大手4社全てで発覚した「禁じ手」の正体と「出向者ビジネス」の闇

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第一生命HD スクリーン
第一生命HDより

第一生命HDは12日、出向先から1155件の情報の不正取得をしていたと発表。日本生命、明治安田、住友生命に続き、生保大手4社すべてで「禁じ手」が発覚

業界に蔓延する不適切な情報共有の実態と、その背景にある深い闇に迫る。

 

第一生命HDで1155件の不正発覚!生保業界を揺るがす「スパイ行為」の実態

第一生命ホールディングス(以下、第一生命HD)は2026年2月12日、グループ会社から保険代理店へ派遣されていた出向者が、出向先の内部情報を無断で持ち出していたとする調査結果を公表した。

今回判明した不正取得の件数は、グループ全体で合計1,155件にのぼる 。第一生命HDの発表資料によれば、調査対象期間は2021年4月から2025年10月までの約4年半。この期間中、28社の保険代理店に派遣されていた出向者64名が、出向先の了承を得ることなく情報を取得し、自社へと共有していたのである。

傘下企業別の不正取得件数は以下の通りだ 。

・第一フロンティア生命保険:754件
・第一生命保険:242件
・ネオファースト生命保険:159件

持ち出された情報には、ライバル他社のシェアや商品情報のほか、あろうことか顧客の個人情報までもが含まれていたという。

なぜ「他社の秘密」を盗んだのか?暴かれた「営業支援」の裏の顔

 

銀行や保険代理店は、複数の保険会社の商品を取り扱う、いわば「中立的な販売窓口」である。本来であれば、各保険会社は公正な競争を行うべき立場にある。しかし、生保各社は「営業支援」という名目で自社社員を代理店に出向させており、この仕組みが不正の温床となった。

第一生命HDの調査結果によると、持ち出された情報の種類は極めて多岐にわたる 。

  • 保険代理店の営業実績や営業方針
  • 他の生命保険会社の商品情報や販売状況
  • 代理店内部の研修資料や業績評価体系
  • 顧客情報(氏名など)

これらの情報は、会社メールだけでなく、個人のスマートフォンのメッセージアプリや紙媒体を通じて、第一生命グループ内の代理店営業部門や人事部門へと流されていた。取得された情報は、自社商品を有利に売り込むための営業戦略などに活用されていたとみられる。

第一生命HDは「組織的に指示した事実は確認されていない」と説明している。しかし、同時に「了承の有無に関わらず情報の取得が出向者に期待されているとの誤った認識を醸成してしまった」とも認めており、現場では「他社の情報を取ってくるのが当たり前」という歪んだ文化が定着していたことがうかがえる。

生保大手4社すべてが「黒」——業界全体に蔓延するコンプライアンス欠如

 

この問題は、第一生命HD一社に留まるものではない。今回の発表により、日本の生保業界を代表する「大手4社」すべてにおいて、同様の不適切な情報取得が行われていたことが明らかになった。

報道各社の情報を総合すると、生保大手における不正取得の件数は以下の通りである。

・日本生命保険(グループ全体):約1,500件
・第一生命HD(グループ全体):1,155件
・住友生命保険:780件
・明治安田生命保険:39件

大手4社だけで、無断取得された情報は合計3,500件を超える。銀行が複数の生保商品を販売する中で、各社は「一歩でも他社より抜きん出たい」という焦りから、出向者を「情報収集の道具」として利用していた実態が浮き彫りとなった。

第一生命HDは、この事態を「社会の常識から外れた不適切な行為」と断じ、謝罪している。しかし、業界全体でこれほど大規模に不正が横行していた事実は、保険業界が長年抱えてきた構造的な欠陥を示している。

経営陣の責任と処分——1カ月の報酬返納で信頼は取り戻せるか

 

第一生命HDは、今回の不祥事を受けて経営陣の処分を発表した。
主な処分内容は以下の通りである。

・明石衛 専務執行役員(第一フロンティア生命社長):戒告の懲戒処分
・稲垣精二 会長・菊田徹也 社長:報酬月額の30%を1カ月間自主返納
・第一生命・第一フロンティア生命・ネオファースト生命の各社長:報酬月額の15%を1カ月間自主返納

しかし、顧客の信頼を裏切り、業界の健全性を損なった対価として、わずか1カ月分の報酬一部返納という処分が妥当なのかについては、厳しい批判も予想される。

第一生命HDは「事案への関与・責任の所在を明確化の上、社内規程に則り処分を行う」としているが、失われた信頼の重みに見合っているとは言い難いのが現状だ。

再発防止の切り札?「営業部門への出向ゼロ」という劇薬

 

相次ぐ不祥事に歯止めをかけるべく、第一生命HDは極めて異例の対策を打ち出した。それは、「保険代理店の営業フロント部門への出向者派遣を取りやめる」という決定である。

同社によれば、2026年4月までに当該部門への出向者はゼロになる予定だという。これまで「営業支援」として当たり前に行われてきた出向そのものを廃止することで、物理的に不正の芽を摘む狙いがある。

その他にも、以下のような再発防止策を掲げている。

  1. システム監視の強化
    2025年5月から導入された受信メールモニタリングシステムの運用を徹底する。

  2. 管理体制の刷新
    2026年4月より、国内生保3社に新たにチーフ・コンプライアンス・オフィサー(CCpO)を任命し、牽制機能を強化する。

  3. 意識改革
    「知る必要のある人に限って情報を許可する」という「Need to Know の原則」を徹底し、全社員への教育を継続する。

私たちの「安心」はどこへ行く?消費者として注視すべきこと

 

生命保険は、契約者の万が一の際に家族を支えるための、高い公共性と倫理性が必要とされるビジネスである。その担い手である大手生保が、利潤追求のためにルールを軽視し、他社の機密情報を盗み見ていたという事実は、消費者の安心を根底から揺るがすものだ。

第一生命HDは今後、外部コンサルティング会社や弁護士の評価を得ながら、さらなる調査と態勢強化を進めるとしている。しかし、真に変わるべきは、形だけのルールではなく「数字のためなら不適切行為も厭わない」という企業風土そのものであろう。

「営業出向ゼロ」という決断が、単なるポーズに終わるのか、それとも業界の健全化に向けた第一歩となるのか。私たち消費者は、耳当たりの良い広告や勧誘の裏側に、どのような企業姿勢が隠れているのかを厳しく見極めていかなければならない。

参照:保険代理店への出向者からの不適切な情報取得について(第一生命ホールディングス)

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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