
夏の高温多湿な環境下では、熱中症の予防策として水分補給が欠かせない。とりわけ汗によって体内の水分や電解質が急激に失われる運動時には、ナトリウムやカリウムなどを含むスポーツドリンクの摂取が効果的とされている。しかし、持参時の容器の扱いを誤ると、思わぬ健康被害を引き起こすおそれがあるとして、厚生労働省が注意喚起を行っている。
「金属製容器に長時間保管」は中毒の危険性も
厚生労働省は2025年7月、公式X(旧Twitter)アカウントを通じ、「金属溶出に伴う中毒にご注意!」と呼びかけた。投稿では、「金属製の容器(やかんや水筒)にサビや傷があると、酸性の飲み物と反応し、金属が溶け出す可能性がある」と指摘。特に、スポーツドリンクや酸性ジュースなどを長時間入れたままにすることで、腹痛や下痢、吐き気などの症状が現れることがあるとして、使用容器への注意を促している。
スポーツドリンクは一般にpHが3〜4の「酸性」に分類される。これは金属と化学反応を起こしやすい性質であり、特にアルミ製やステンレス製の容器に長時間保管すると、金属成分が溶出する危険がある。
部活や運動時に適した「正しい持参方法」とは
部活動や野外運動では、スポーツドリンクの携帯が一般的だが、正しい方法を守らなければ熱中症予防どころか体調不良の一因ともなりかねない。以下に、適切な持参方法と注意点を示す。
◆ スポーツドリンク持参時のポイント
項目 | 内容 |
---|---|
容器の材質選び | プラスチック製や内側にコーティングが施された専用ボトルを使用する。金属製は避ける。 |
使用前の確認 | 傷やサビの有無をチェックし、劣化した容器は使用しない。 |
長時間の保管を避ける | 作り置きしたスポーツドリンクを一日中容器に入れておくのは避け、こまめに補充・洗浄を行う。 |
洗浄と乾燥 | 使用後は必ず分解洗浄し、内部を十分に乾燥させる。雑菌繁殖や腐敗防止にもつながる。 |
冷却管理 | 保冷機能付きボトルを活用し、炎天下では日陰に置くなど温度管理を意識する。 |
スポーツドリンク以外の熱中症対策飲料とは
スポーツドリンクは水分と電解質を同時に補えるという利点がある一方で、糖分の多さや保存容器との相性といった点に課題もある。そこで、状況や体調に応じて活用できる代替飲料の選択肢も知っておくべきである。
◆ 熱中症対策に適した代替飲料の比較
飲料名 | 特徴 | 備考 |
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経口補水液(ORS) | ナトリウム濃度が高く、軽度~中等度の脱水に最適 | 医療用にも使用。塩分が高いため日常的摂取には不向き |
麦茶(無糖) | カフェインを含まず、利尿作用がない。ミネラルが豊富 | 子どもや高齢者にも安心。冷やしすぎないのが理想 |
塩水(0.1〜0.2%) | 水に少量の塩を加えた簡易電解質飲料 | 例:500mlの水に塩ひとつまみ(1g程度) |
梅干し入り水(梅湯) | ナトリウムとクエン酸を自然に摂取 | 疲労回復にも効果。好みによって味が分かれる |
薄めたスポーツドリンク | 糖分を抑えつつ、電解質を補える | 経済的。2倍程度の水で希釈するのが目安 |
水+塩タブレットや塩飴 | 水はそのまま、塩分は別途摂取 | 糖分摂取をコントロールできる柔軟な方法 |
いずれの飲料でも、飲み過ぎや急激な冷却による胃腸の負担を避けるため、常温に近い温度でこまめに摂ることが推奨される。また、持参の際には、ボトルの素材や保管時間にも十分な注意が求められる。
「飲みやすさ」だけでなく「安全性」にも配慮を
夏季の熱中症予防においてスポーツドリンクの有用性は科学的にも支持されているが、その管理方法を誤ることで逆に健康を害するケースも起こり得る。とりわけ、金属製容器と酸性飲料の相性の悪さについては、過去にも複数の中毒事例が報告されており、今後も繰り返されるおそれがある。
厚生労働省は「安全な水分補給」を呼びかける一方、スポーツやレジャーの現場では「便利さ」だけでなく「安全性」にも配慮した飲料管理の習慣づけが求められている。