
イーロン・マスク氏率いるスペースXの大型宇宙船「スターシップ」がテキサス州で試験準備中に爆発した。幸い負傷者は確認されていないが、今後の開発への影響が懸念されている。
スペースXの宇宙船「スターシップ」が試験中に爆発
地上試験中に突如爆発 映像には炎と破片
米宇宙開発企業スペースXが開発中の巨大宇宙船「スターシップ」が、2025年6月18日夜(米中部夏時間)、テキサス州の打ち上げ拠点「スターベース」にて実施されたエンジン燃焼試験中に爆発した。日本時間では6月19日13時ごろにあたり、現地メディアNASASpaceFlightのライブ配信では、機体から推進剤と思われる液体が漏れ、その直後に爆発が起きる瞬間が映し出されたようだ。
スペースXはX(旧Twitter)を通じて、「重大な異常が発生した」とし、事故は第10回目の飛行試験に向けた準備段階で発生したことを明らかにした。発表によれば、作業中は安全区域が設けられており、従業員や周辺住民に負傷者は確認されていない。
火星・月探査の中核機体 3度目の試験失敗
スターシップは、火星や月への有人探査ミッションに向けて開発されているスペースXの次世代宇宙船であり、NASAの「アルテミス計画」における月面着陸船としても採用が決定している。全長約120メートル、再使用可能な設計を特徴とし、貨物や乗員を地球外へ運ぶ目的で開発が進められてきた。
しかし、今回の爆発は、5月に起きた飛行中の推進剤漏れ・制御不能事故に続くものであり、3回連続の試験失敗となる。今後のスケジュールやNASAとの連携にも影響が及ぶ可能性がある。
マスク氏「窒素タンクの不具合か」原因究明へ
スペースXを率いるイーロン・マスク氏は、自身のXアカウントで「予備データではペイロードベイの窒素貯蔵タンクの不具合が示されている」と言及し、「もしこれが確認されれば、今回の設計では初めてのケースだ」との見解を示した。エンジニアリングチームが原因調査を進めており、環境や安全面での影響についても、地元および連邦機関と連携して対応しているという。
開発継続に暗雲も、安全体制の評価は維持
スペースXは、「作業中は常に安全区域を確保し、作業員の安全を最優先としている」と強調。事故が発生したにもかかわらず、人的被害がなかったことについては一定の評価がされている。
だが、これまでの試験で相次ぐ技術的トラブルは、2020年代後半を目指す本格的な月面・火星探査のロードマップに遅れをもたらす可能性がある。米CNBCによると、NASA関係者は「事業パートナーとしての信頼は揺らいでいないが、タイムラインへの影響は検討対象」と述べているという。
今後の情報開示と再試験に注目
スターシップ開発においてスペースXは、これまでにも試験中の爆発や失敗を経ながら改良を重ねてきた。今回の爆発により、飛行試験の再開時期は未定となっているが、マスク氏の宇宙輸送構想の柱である同プロジェクトの今後に、業界の注目が再び集まっている。今後の技術的な修正、試験の再実施、そして規制当局との調整の動向次第では、宇宙開発における民間主導の道筋にも変化が訪れるかもしれない。