
6月13日午後、日本政府は中東で発生した軍事衝突に関し、緊急の対応を示した。岩屋毅外務大臣は同日13時41分、本省での記者会見に臨み、イスラエルによるイラン核関連施設への攻撃と、それに対するイランの報復行動について「極めて遺憾であり、事態をエスカレートさせる行動として強く非難する」と述べた。会見では、日本としての外交姿勢、在留邦人保護の体制、今後の対応方針について説明がなされた。
岩屋外相は冒頭、「中東地域の平和と安定は我が国にとっても極めて重要」と語り、米・イラン間の核協議が継続しているさなかに軍事的手段が用いられたことに対し強い懸念を示した。加えて、関係各国に対し「最大限の自制」と「一刻も早い沈静化」を呼びかけた。
邦人退避の可能性、自衛隊機も視野に
会見では日本人の安全についても質疑が及んだ。現地には複数の在留邦人がいるとみられており、岩屋氏は「邦人の保護にはあらゆる手段を講じていく。現時点で具体的な実施はないが、自衛隊機による退避も視野にある」と言及。現地大使館と連携し、邦人の安否確認および注意喚起の継続的な発出を行っていると説明した。
アメリカ政府が衝突発生前から大使館員を周辺国に退避させていたとの報道もあり、日本政府としても今後の緊張の度合いに応じた柔軟な対応が求められる。
また、岩屋外相は「イラン、イスラエル両国への外交的な働きかけは、あらゆるレベルで進めていく」と明言し、双方に対する外相級の接触も調整していることを明らかにした。
攻撃の背景に「ネタニヤフの追い詰められた政権事情」
今回の攻撃は軍事的衝突としての影響だけでなく、政治的にも重大な示唆を持つ。岩屋氏は直接触れなかったものの、外交筋の間では「イスラエル側の判断の背景にはネタニヤフ政権の内政的危機があった」との見方が強まっている。
長期政権を続けるネタニヤフ首相は、ガザ侵攻の批判、汚職疑惑、連立与党内の混乱などを背景に、政権基盤を大きく揺るがせていた。さらに、これまで緊密だったトランプ前米大統領との関係にも亀裂が走っており、外交的孤立が進んでいたとの指摘もある。
米メディアの報道によれば、トランプ陣営は選挙戦への影響を避けるべく、イスラエルの軍事行動に距離を置く姿勢を見せていたとされる。こうした状況の中、ネタニヤフ氏が「国内批判の封じ込めと再選戦略」の一環として、軍事行動に踏み切った可能性も排除できない。
ガソリン価格や生活に迫る影響も
軍事衝突の余波は、生活のインフラにも波及しつつある。中東は日本の原油輸入の大部分を占めており、ホルムズ海峡を経由する物流路の不安定化が現実のリスクとして再浮上した。
攻撃発生以降、原油価格は急騰し、WTIは一時1バレル=90ドル近辺に到達。これにより、ガソリン価格は7月以降に全国平均で180円/Lを超えるとの予測も出ている。実際、国内の石油元売各社も価格転嫁の検討を始めており、早ければ今月末にも小売価格の上昇が顕在化する可能性がある。
岩屋外相は会見の最後に、「日本が果たすべきは、軍事的介入ではなく、外交による橋渡し役だ」と強調。アジア唯一のG7参加国として、日本の調停能力が今こそ問われている。
15日からカナダで開催されるG7サミットでは、この中東問題も緊急議題となる見通しであり、石破総理による首脳級での対応が注目されている。