
異変の兆候見逃さず 食品衛生の基本は「保存」と「確認」
東海牛乳株式会社(岐阜県神戸町)は5月30日、同社が製造した牛乳製品約230万本の自主回収を発表した。「味わいらくのう牛乳」や「酪農牛乳」などが対象で、消費者から風味の異変や「加熱でヨーグルト状に固まる」といった報告が相次いだことがきっかけだ。これまでに健康被害は報告されていないが、乳製品に限らず、食品の劣化は日常生活の中で誰もが直面しうる問題である。
食品の安全衛生管理は、製造業者の責任だけでなく、消費者側でも意識と知識が求められる。今回はこの事案を機に、家庭でできる基本的な衛生管理のポイントや、食品の劣化の見極め方、万が一口にしてしまった場合の対応について解説する。
見た目やにおいの「変化」が重要なサイン
食品が劣化したかどうかを見極めるうえでの基本は、「見た目」「におい」「味」の三点である。今回のように加熱により「ヨーグルト状になる」場合、発酵が進行していた可能性がある。これは乳酸菌などの微生物が繁殖した結果であり、冷蔵温度の管理不良やパッケージの密閉性に問題があったことが考えられる。
異常の兆候として、次のような現象が見られる場合は摂取を控えることが望ましい。
- 牛乳やジュースのパックが膨張している
- 酸っぱいにおいがする
- 色が変色している(黄ばみ、灰色など)
- 液体が分離している
- 開封前にもかかわらず、においが漏れている
食品を安全に保つための「保存3原則」
消費者が家庭で食品の衛生状態を保つには、「温度」「時間」「密閉性」の3つの管理が基本となる。
原則 | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
①温度管理 | 冷蔵品は10℃以下、冷凍品は-18℃以下が目安 | 冷蔵庫の詰めすぎやドアの開けっぱなしに注意 |
②時間管理 | 開封後はなるべく早めに消費 | 特に梅雨~夏場は劣化が早まる |
③密閉保存 | 開封後はしっかり蓋をし、匂い移りや菌の混入を防止 | タッパーや密封袋を活用 |
また、牛乳や豆腐など水分が多い食品は雑菌の繁殖が早いため、消費期限に加え「開封後何日経過したか」を自分で記録しておくことも安全確保につながる。
誤って劣化食品を口にしてしまったら
もし異変に気づかずに劣化した食品を摂取してしまった場合でも、慌てずに冷静に対応することが大切だ。下記に家庭での初期対応をまとめる。
状況 | 対応方法 |
---|---|
明らかな異臭や異味にすぐ気づいて吐き出した | うがいをして、口の中を清潔に保つ |
少量を飲食し、違和感を覚えた | 水やお茶を飲んで様子を見る。自己判断で吐くのは避ける |
数時間後に腹痛・吐き気・下痢が出た | 脱水防止のため水分補給を行い、体調悪化時は早めに医療機関を受診 |
異変食品が複数回症状を引き起こす | 食品表示や保管状況を記録し、保健所などへの相談も検討 |
重篤なアレルギー症状や高熱が出る場合は、速やかに医療機関へ連絡を取ることが重要である。
信頼できる製造元の対応が鍵
今回の東海牛乳による迅速な自主回収と情報開示は、企業としての責任を果たす姿勢として評価できる。一方で、消費者としても日々の食品の取り扱いを「自己責任」として捉えることが、家庭内での食の安全を守る第一歩となる。
今後も流通量の多い食品ほど、製造・流通・保存のいずれかで問題が起きれば、多くの家庭に影響を及ぼす。消費者には、「五感」を使って食品の安全を見極める習慣と、万一の際の備えが求められている。