
北海道と東北6県(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)で2025年5月21日朝、一時すべての運転免許関連の手続きが停止した。原因は、深夜に発生した通信回線の障害で、道路工事中の有線ケーブル損傷が影響したとみられている。警察庁によると、正午過ぎには応急対応によって復旧が完了したが、システムの全面停止という事態は、広域ネットワークの脆弱性と即応体制の課題を浮き彫りにした。
通信回線修復は応急措置 本格的復旧工事は今後
今回の復旧は、あくまでも緊急の「バイパス措置」であり、恒久的な修復工事は今後順次進められる見込みだ。関係者によれば、損傷したのは北海道から東北へとつながる基幹通信ケーブルであり、国土交通省およびNTT系通信事業者が中心となって詳細な損傷箇所の特定と本復旧計画の策定に入っている。
復旧には、地下ケーブルの再敷設や配線経路の見直しが必要となる可能性があり、早くとも数週間から1か月程度を要するとの見方がある。また、通信障害が再び発生しないよう、代替ルート(バックアップ回線)の整備や、自治体ごとの「局所自立型」の運用体制強化も検討課題となっている。
同様の障害、今後も起きる可能性
今回の障害は、民間業者が関与する道路工事に起因していたとされる。こうした工事中の通信ケーブル損傷は、近年全国で年間数百件発生しており、特に都市部やインフラが密集する地域でのリスクが高い。
国土交通省の資料によれば、2023年度には全国で357件の工事中断や通信遮断が報告されており、そのうち約3割が「誤掘削によるケーブル損傷」が原因とされている。今後も道路拡張や老朽管の更新工事が各地で計画されており、今回のような広域障害が再発するリスクは否定できない。
住民生活への影響とその対策
今回の障害では、運転免許証の交付・更新だけでなく、高齢者講習の受付、交通違反時の手続き、運転経歴証明書の発行なども停止した。結果として、各地の免許センターでは朝から混乱が広がり、高齢者や就職活動中の若年層からは「予定が狂った」「遠方から来たのに対応してもらえなかった」といった声も聞かれた。
また、交通行政と連携している一部の行政手続きやマイナンバー関連業務にも影響が及んだとされ、自治体窓口でも業務の一時中断を余儀なくされたケースがあった。
このような影響に対し、今後求められる対策は以下の通りである:
- 工事業者への掘削前調査(事前のケーブル位置確認)の義務化と罰則強化
- 自治体・警察庁間の通信ルートの多重化(バックアップ経路の整備)
- 一時的な障害時にも対応可能な「オフライン受付」や「仮証発行制度」の導入
- 住民向けの情報提供手段の多様化(SNS、アプリ、地域放送など)
制度的な対応としては、地方自治体が単独で業務を続行可能な「局所サーバー運用体制」の整備を求める声も出ており、総務省も一部地域での試行運用を検討中とされる。