
牛丼チェーン大手「すき家」が、全国の店舗を一時閉店すると発表した。背景には、相次ぐ異物混入と、それを巡る消費者の不安がある。業界内でも異例の対応となる今回の決断には、どのような経緯と再発防止への意志が込められているのか。報道各社の情報をもとに、すき家の対応と混入の実態、そして今後の見通しを追った。
異物混入受け、すき家が全店一時閉店を発表
3月29日、ゼンショーホールディングス傘下の牛丼チェーン「すき家」が、公式サイトにて全国の直営店を一時閉店する方針を発表した。きっかけは、東京都昭島市にある「すき家 昭島駅南店」で、提供された商品の中にコキブリの一部が商品に混入していたという顧客からの指摘だった。
すき家によると、3月28日(金)に商品を購入した顧客から「異物が入っていた」との連絡を受け、店舗責任者が謝罪、商品代金の返金と異物の回収を行った。その後、当該店舗は当日午後5時頃から営業を停止し、3月31日には専門の害虫駆除会社による駆除作業が予定されている。
今回の異物混入を「大変重く受け止めております」とするすき家は、この問題を受けてショッピングセンター内など一部店舗を除く全国の店舗を、3月31日(月)午前9時から4月4日(金)午前9時までの期間、一斉に休業することを決定した。
1月には“ネズミ混入”事案も 相次ぐ異物混入に世間の注目集まる
この決断の背景には、今回の害虫混入だけでなく、2025年1月にも発生した異物混入騒動がある。
2025年1月21日、鳥取県鳥取市の「すき家 鳥取南吉方店」で、提供されたみそ汁にネズミが混入していたことが判明。SNS上には《味噌汁にねずみの死骸が混入していました》との写真付きの投稿が広まり、メディア各社がこれを取り上げた。
「すき家」はこの件について3月22日に公式ホームページで調査結果を公表。異物が混入した原因について、店舗に設置された大型冷蔵庫のパッキン部分にひび割れがあり、そこからネズミが侵入した可能性が高いと説明した。
また、異物がみそ汁の“鍋”ではなく、具材を入れた“お椀”に混入していたことが、店内カメラの映像確認やカタラーゼ検査(異物が加熱されたかどうかを調べる化学的検査)により判明している。
この検査で異物が加熱されていなかったことが示され、「加熱された味噌汁にネズミが入っていたのではないか」との一部ネット上の噂は否定された。
「異例の全店休業」から見える企業姿勢と危機対応
異物混入への企業対応は、そのスピードと透明性が問われる。今回のすき家の決定は、国内約2000店舗を展開する大手外食チェーンとしては極めて異例のものである。
ゼンショーホールディングスは、すき家の全店休業について「害虫・害獣の外部侵入、および内部生息発生撲滅のための対策」とし、外部の専門会社と連携しながら衛生管理体制の強化を図るとしている。
また、同社は1月の事案後、問題の冷蔵庫と同タイプの設備を持つ全国72店舗についても点検を実施し、パッキンの交換や必要な修繕を2月末までに完了したと説明している。
さらに、従業員への衛生教育の再徹底、建物の点検、ゴミ庫の冷蔵化など、ハード・ソフト両面での再発防止策を講じている。
今後の見通しと信頼回復への道
すき家は、全店の一時閉店を経て、4月4日午前9時の営業再開を予定している。短期間での再開ではあるが、今回の騒動を受け、消費者の信頼回復は容易ではない。
今後求められるのは、問題の本質を隠さず開示し、再発防止策を着実に実行することに加え、日々の運営においても安心・安全を実感できる店舗づくりだ。
ゼンショーグループは外食産業最大手としての社会的責任を背負っており、今後の対応は同業他社にも大きな影響を与えるとみられる。
【参照】異物混入に関するお詫びと全店一時閉店に関するお知らせ(すき家)
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