
愛媛県今治市と西条市にまたがる山林火災が拡大し、焼失面積は442ヘクタールに達した。火の手は住宅地にも迫り、一時は7,000人を超える住民が避難を強いられた。27日夜の雨により火勢はやや落ち着いたが、消防の調査では熱源が複数残されており、再燃への警戒が続いている。避難所では生活環境の変化に伴うストレスも深刻化し、福祉支援と生活再建の早期対応が急がれている。
焼失面積は442ヘクタール 熱源残存で再燃の恐れ
愛媛県今治市と西条市にまたがる山林火災は、3月23日の発生から6日が経過した3月28日朝までに焼失面積が442ヘクタールに達した。27日夜からの雨で火勢はいったん沈静化したが、消防のドローン調査では複数の熱源が確認されており、依然として鎮圧には至っていない。
今治市・西条市で7,000人以上が避難 住民生活に影響
火災は今治市笠松山東側の斜面から発生し、乾燥と強風により周囲の森林や民家にも延焼が及んだ。25日には陸上自衛隊と県防災航空隊が空中散水203回を実施。県内外の消防士約90人が地上からの消火活動を展開した。
今治市と西条市の7地区には最大7,342人に避難指示が出され、避難所は桜井公民館や朝倉小学校など10か所に開設された。28日朝までに今治市内の避難指示は解除されたが、西条市では一部の高齢者施設の利用者が避難を継続している。
「胸がざわつく」「祈るような気持ち」――住民の声
避難した住民の間では、火災に対する不安が色濃く残っている。今治市朝倉北地区に住む68歳の女性は、「風向きが変わるたびに胸がざわつく。黒煙が見えると家のことが心配で落ち着かない」と語る。郷桜井地区の会社員女性(40)も、「飛び火するなんて思ってもみなかった。庭に水をまきながら祈るような気持ちだった」と述べた。
テレ朝newsによると、避難所に身を寄せる高齢男性は「17年前の山火事の記憶がよみがえり、ただただ怖い」と証言。朝日新聞デジタルは、JR伊予桜井駅近くの農家の女性(36)が「まだ小雨だが、本降りになってくれることを願うばかり」と話したと伝えている。
DWAT派遣と仮設住宅支援へ 愛媛県の対応進む
愛媛県は24日に災害対策本部を設置し、陸上自衛隊に災害派遣を要請。加えて、県社会福祉協議会と連携し**災害福祉支援チーム(DWAT)**を避難所に派遣した。
25日には仮設住宅の整備や生活再建支援金などの対応を担う「生活再建支援班」も立ち上げ、被災者の支援体制が強化された。今後は森林所有者への聞き取りや、林業関係の復旧支援の枠組みづくりも急がれる。
避難生活で住民のストレス高まる 心身ケアが課題
避難所では、生活環境の変化・将来への不安・情報不足といった要因により、住民のストレスが顕著に高まっている。プライバシーの確保が難しい状況下で、睡眠不足や持病の悪化といった健康被害も懸念される。
DWATの巡回相談や保健師による支援が始まっており、県は避難者の心身のケアに本腰を入れる方針を示している。
避難中にもできる協力 地域の助け合いが鍵に
避難所で住民ができる現実的な協力として、以下のような行動が挙げられる。
- 秩序の維持や清掃活動
- 高齢者・障がい者への声かけや見守り
- 情報共有(放送や掲示内容の伝達など)
- 被災経過の記録(避難ルートや被害状況)
それぞれが無理のない範囲で「自分にできることを一つ」担うことが、避難所運営の安定につながる。
市長「再燃警戒を継続」 消防は熱源の監視強化
今治市では27日夜から28日未明にかけて28.5ミリの降雨が観測された。市消防本部は「恵みの雨になったと信じたい」とコメントしたものの、28日午前8時現在も複数の熱源が残存している。
今治市の徳永繁樹市長は28日、「再燃の可能性がある中で、引き続き警戒と支援に万全を期す」と述べ、県の予備費や国の制度の活用も視野に入れて対応を継続する考えを示した。
気象台が乾燥注意報 引き続き火の取り扱いに注意を
松山地方気象台によると、29日以降も晴れや曇りの天候が続く見通しで、乾燥注意報が継続中である。気象庁は、火の取り扱いに最大限の注意を払うよう呼びかけている。