未登録者・侵入者検知で施設の安全性向上へ

サイバーリンク株式会社は3月18日、AI顔認証を活用したスマートセキュリティシステム「FaceMe® Security」の最新バージョン8.1をリリースした。
本バージョンでは、登録されていない人物をリアルタイムで検知する「未登録者検知」と、指定エリアへの不正な侵入を即時検知する「侵入者検知」という2つの新機能が追加され、より多角的な防犯対策が可能となる。
FaceMe® Securityとは
FaceMe® Securityは、IPカメラと連携し、施設の入退室管理や監視システムを強化するソリューションである。従来の監視カメラでは映像を記録するのみであったが、AI顔認証を活用することで、事前に登録された従業員や許可された訪問者のみを認識し、それ以外の人物を即座に識別してアラートを発報することが可能となった。
特に「未登録者検知」機能は、データセンターやオフィスビル、工場など、特定の関係者以外の立ち入りが禁止されている施設に適している。事前登録されていない人物がカメラに映ると自動でアラートを発報し、管理者に通知が届く。このアラート条件はカスタマイズ可能で、一度検知された未登録者が一定時間後に再度出現した場合、より強い警告を発することもできる。
また、「侵入者検知」機能は、特定エリアへの立ち入りを防ぐための機能である。ラインクロス検知では、監視エリアの境界を設定し、そのラインを越えた場合にアラートを発する。一方、滞留検知では、指定エリア内に一定時間以上留まる人物を検出し、警告を発することが可能である。この機能は、工事現場や工場の危険区域、商業施設のバックヤードなどでの不正侵入防止に有効だ。

新たにサポートされた顔認証端末「Knoctoi Lite」と「GIS YouMe 500」により、システムの拡張性も高まり、より多様な環境への導入が可能となった。さらに、FaceMe® Securityは角度のついた顔やマスク・ヘルメットを着用した状態でも認識できるため、建設現場や医療機関などの特殊環境でも活用が期待される。
AI顔認証の導入拡大とプライバシー問題
今回のFaceMe® Security 8.1のアップデートは、単なる防犯機能の強化にとどまらない。AI技術を活用した顔認証システムは、セキュリティの在り方を根本的に変えつつある。従来の監視カメラでは、人が映像を確認し、異常を発見して対応する必要があった。しかし、AIがリアルタイムで監視し、即時にリスクを警告することで、人的ミスの削減や迅速な対応が可能となる。
また、この技術は犯罪抑止効果にも寄与すると考えられる。未登録者や侵入者を即座に検知し、関係者の目の前でアラートを発することで、不正行為の実行を抑止する心理的効果が期待できる。例えば、オフィスビルや商業施設において、夜間の不正侵入や内部犯罪を未然に防ぐことが可能となる。
一方で、AI顔認証技術の普及に伴い、プライバシーや個人情報保護の問題も浮上する。顔認証データの管理方法や、不正アクセスの防止策が適切に講じられていなければ、逆にセキュリティリスクを生む可能性もある。サイバーリンクでは、FaceMe® Securityの導入企業に対し、データの暗号化やアクセス制限の強化を推奨しており、安全な運用を支援している。
企業の導入拡大と業務効率化への影響
AI顔認証システムの進化により、企業のセキュリティ対策は劇的に変化しつつある。従来は警備員による目視確認やICカード認証が主流だったが、顔認証による自動管理が進むことで、企業の人件費削減や業務効率化が期待される。
特に、大規模な商業施設や空港、オフィスビルでは、毎日の入退室管理に膨大なコストがかかる。AIを活用することで、従来のIDカードを用いた管理と比較して、認証精度が向上し、不正入場のリスクも低減できる。また、物理的なカードの紛失リスクもなくなるため、運用の簡素化にも寄与する。
加えて、建設現場や工場などの危険区域では、滞留検知機能が特に有効だ。例えば、作業員が規定時間以上特定のエリアに滞在している場合にアラートを発報し、安全確保のための即時対応が可能となる。これにより、労働災害の防止にもつながるだろう。
AI顔認証がもたらす「未来の防犯システム」へ
今後、AIを活用したセキュリティ技術は、オフィスや工場のみならず、公共施設やイベント会場、さらにはスマートシティ構想の一環として都市全体の監視システムにも応用される可能性がある。サイバーリンクの技術革新は、セキュリティの未来を形作る重要な一歩となるだろう。