
警視庁サイバー犯罪対策課は21日、楽天モバイルの回線を不正に契約したとして、17歳の少年2人を逮捕し、書類送したと発表。IDとパスワードを入手し、SNSを利用して他人名義の回線を次々と契約。その背後には「荒らし共栄圏」と呼ばれるサイバー犯罪グループの存在があった。巧妙な手口の実態と、狙われた楽天モバイルの課題、そして私たちが気をつけるべき点について解説する。
楽天モバイル回線を不正契約した少年の逮捕
2024年4月、楽天モバイルの回線を不正に契約したとして、住所不定・無職の17歳の少年が「不正アクセス禁止法違反」と「電子計算機使用詐欺」の疑いで逮捕された。また、同じく17歳の高校2年生の少年が書類送検された。警視庁の発表によると、2人は不正に取得した6人分のIDとパスワードを使い、楽天モバイルのシステムに不正ログイン。うち1人のアカウントで4回線を契約したとされる。
2人は容疑を認めており、回線を売却し、その資金をインターネット上で他人を中傷する活動に使っていたという。警視庁は、2人の関与する「荒らし共栄圏」と呼ばれるグループが、サイバー犯罪の拠点になっていたとみて調査を進めている。
不正契約の手口とは?SNSや生成AIの悪用
警視庁の調べによると、逮捕された少年らは、匿名性の高い通信アプリ「テレグラム」を利用して約3万5000件の楽天モバイルIDとパスワードを入手。さらに、生成AIを用いたプログラムで不正に回線契約を結んでいたとされる。
楽天モバイルでは、新規契約時に本人確認が必要だが、契約後は最大15回線まで本人確認なしで追加契約が可能だった。これが不正利用の隙となった。少年らは「本人確認が甘い楽天モバイルを狙った」と供述しているという。
「荒らし共栄圏」とは?少年らが関与したグループの実態
「荒らし共栄圏」は、インターネット上でウェブサイトの改ざんや誹謗中傷、脅迫行為などを行っていたとされるグループだ。今回逮捕された少年は同グループの「主席」と名乗り、リーダー的な役割を担っていたという。
横浜市の高校生2人もこのグループに関与し、グループ内で「政治局委員」と称する役職を持っていた。2人は実際には少年と直接の面識はなく、SNS上のつながりのみで指示を受けていたという。
SNS上で広がるID売買の危険性
IDやパスワードの売買は、匿名性の高いSNSやダークウェブで横行している。特に「テレグラム」では、個人情報の売買が活発に行われている。こうした場では、知らぬ間に自分の情報が流出し、犯罪に悪用されるリスクがある。
警察庁の発表によると、2024年に摘発された不正アクセス容疑者の約3割が10代の若者だった。SNS上で犯罪の手口が広まり、若者が知らぬ間に巻き込まれるケースが増えているという。
被害を防ぐために私たちができること
今回の事件を受け、消費者が意識すべきセキュリティ対策がある。
・怪しいメールやSMSに注意する:フィッシング詐欺の手口が巧妙化しており、慎重な行動が求められる
・パスワードの使い回しを避ける:複数のサービスで同じパスワードを使用しない
・2段階認証の活用:IDとパスワード以外のセキュリティ対策を活用
・ログイン履歴の確認:定期的にアプリのログイン履歴を確認する
まとめ:事件の教訓と社会的影響
今回の事件は、楽天モバイルのシステムの甘さを突いた巧妙な手口であり、SNSや生成AIが犯罪に悪用される危険性が浮き彫りとなった。若者の間でサイバー犯罪が広がる現状に対し、企業側のセキュリティ強化だけでなく、消費者側の意識改革も求められている。
今回の事件をきっかけに、SNSの利用やパスワード管理の重要性が改めて問われている。
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