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硫黄島「星条旗写真」削除 米国防総省 トランプ氏の「反DEI」の影響

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父親たちの星条旗
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太平洋戦争の象徴として知られる「硫黄島の星条旗掲揚写真」が、米国防総省のウェブサイトから削除された。この歴史的な写真が突如消された背景には、トランプ前大統領が推進する「反DEI」政策が関係しているという。戦争の記録として名高い写真がなぜ削除されたのか。その経緯と、社会に広がる波紋を詳しく伝える。

 

歴史的写真「硫黄島の星条旗掲揚」とは

硫黄島の戦いは、太平洋戦争末期の1945年2月から3月にかけて行われた激戦として知られる。日本軍が守る要塞島を米軍が攻略するために繰り広げられた戦闘では、数万人の犠牲者を出した。

その中でも有名なのが、摺鉢山(すりばちやま)の山頂で星条旗が掲げられた瞬間の写真である。AP通信のカメラマン、ジョー・ローゼンタール氏が撮影し、この写真は1945年のピュリツァー賞を受賞。さらに、バージニア州アーリントンにある「海兵隊戦争記念碑」のモデルとしても知られている。

この写真に写る6人の米兵のうちの1人が、ネイティブ・アメリカンの海兵隊員アイラ・ヘイズ氏である。彼の姿は、アメリカの先住民が国のために果たした貢献と犠牲の象徴として称えられてきた。

突如削除された「星条旗掲揚写真」

2024年2月、米国防総省が公式ウェブサイトから、この歴史的な「星条旗掲揚写真」を含むページを削除したと報じられた。このページには、写真と共に「先住民が米軍や社会に果たした貢献と犠牲」についての記述が掲載されていた。

「ワシントン・ポスト」紙によると、国防総省は同ページを削除した理由として「多様性・公平性・包括性(DEI)を重視する象徴的な要素がある」と判断したことが挙げられている。DEIは、人種、性別、民族的背景、障がいの有無などを問わず、多様な人々が公平に参加できる環境を推進する取り組みを指す。近年、米国内ではこのDEIをめぐる議論が加熱しており、今回の削除はその一環とみられる。

トランプ氏の「反DEI」政策の影響

今回の写真削除の背景には、トランプ前大統領が推進する「反DEI」政策が大きく影響しているとみられる。

トランプ氏は自身の政権時代に「DEIは逆差別を引き起こす」として、米国内の多様性推進の動きを強く批判してきた。2024年に発表した新たな政策でも「DEI推進に関する予算の大幅削減」を打ち出し、政府機関や企業に対してDEI関連の施策を取りやめるよう呼びかけている。

今回の硫黄島「星条旗掲揚写真」削除も、その流れの一環とされる。特に、写真に写る海兵隊員がネイティブ・アメリカンであったため、DEI推進を象徴するものと判断された可能性がある。

「エノラ・ゲイ」も削除候補に

「ワシントン・ポスト」などの報道によると、硫黄島の星条旗写真だけでなく、広島に原爆を投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ」の写真も削除候補に挙がっているという。理由は「ゲイ」という言葉が同性愛者を指す言葉であるため、誤解による混乱を防ぐ目的があったとみられる。

戦争の記録が消える?懸念される歴史の風化

 

こうした国防総省の対応に対し、戦争史の専門家や関係者からは「重要な歴史的記録が失われる」との懸念の声が上がっている。

米国内では「反DEI」の動きが広がる中、教育機関や博物館などでもDEI推進に関する取り組みの縮小や見直しが相次いでおり、歴史教育のあり方にも影響を及ぼしている。

今後の行方と広がる波紋

米国防総省は削除した「星条旗掲揚写真」について「一時的な措置であり、再掲載を検討する」との立場を示している。しかし、「反DEI」の動きが進む中、今回の事例が先例となり、他の歴史的資料や記録の削除に発展する可能性も指摘されている。

戦争の記憶を後世に伝えることは、平和のために重要な役割を果たしている。今回の「硫黄島の星条旗掲揚写真」削除が象徴するように、政治の動きが歴史の記録に影響を与える事態は、今後も注視する必要がある。

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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