
ビットコイン現物ETF市場に激震が走った。2月25日、1日で10億ドル(約1500億円)の資金が流出し、過去最大の記録を更新。暗号資産市場の不安定さが浮き彫りとなった。機関投資家の動き、ビットコイン価格の低迷、さらには裁定取引の縮小など、流出の背景に何があるのか?そして、今後ビットコインETFはどのように推移するのか?
ビットコイン現物ETFとは?今さら聞けない基本情報をおさらい
ビットコイン現物ETF(Exchange-Traded Fund)とは、ビットコインの価格に連動する上場投資信託の一種である。株式市場で取引が可能であり、投資家は実際にビットコインを保有することなく、ビットコインの値動きに応じた投資ができる。2023年1月に米証券取引委員会(SEC)が承認し、投資家の関心を集めてきた。
暗号資産市場の成長とともに、ビットコインETFは機関投資家の参入を促し、流動性向上の役割を果たしてきた。しかし、今回の大規模流出は、市場の不確実性が増していることを示唆している。
1日で1500億円の資金流出 過去最大規模の背景とは?
ビットコイン価格の下落 過去最高値からの調整
ビットコイン価格は2024年初頭に過去最高値を更新したものの、その後下落に転じた。2月25日には8万7000ドルを割り込み、3カ月ぶりの安値を記録。ビットコインの価格変動が投資家心理に影響を与えた。
ブルームバーグによると、ビットコインの価格低迷に伴い、投資家はリスク回避の姿勢を強め、ETFから資金を引き揚げる動きが加速した。短期間での価格下落により、利益確定を優先する投資家が増加したとみられる。
機関投資家のポジション整理
機関投資家の動向も、大規模な資金流出の要因の一つだ。ブラックロックの「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」やフィデリティの「ワイズ・オリジン・ビットコイン・ファンド(FBTC)」が最も多くの資金を失った。
SoSoValueのデータによると、2月25日の流出額は以下の通りである。
・FBTC:3億4465万ドル(約513億円)
・IBIT:1億6430万ドル(約245億円)
・バルキリーのBRRR:1億ドル(約149億円)
機関投資家は、市場のボラティリティに敏感に反応し、ポートフォリオの調整を行う傾向がある。特に、金利上昇や金融政策の変動に伴い、リスク資産の保有割合を調整するケースが増えている。
裁定取引の縮小 ETFの魅力低下
ビットコインETF市場では、裁定取引(キャリー取引)が盛んに行われてきた。これは、現物ETFを購入し、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のビットコイン先物を売ることで、価格差を利用して利益を得る戦略だ。
しかし、CMEのビットコイン先物のプレミアムが低下し、この戦略の利回りが縮小。これにより、裁定取引を行っていた投資家がポジションを解消し、ETF市場から撤退したと考えられる。
今後のビットコインETF市場はどうなる?
さらなる資金流出の可能性
過去6日間連続で資金流出が続いており、累計で約21億ドルが流出。市場の不安定さが続けば、今後も資金流出が継続する可能性がある。
スタンダードチャータードのデジタル資産調査責任者ジェフ・ケンドリック氏は、「今後さらに痛みを伴う展開になる可能性が高い」と指摘。ビットコイン価格が8万ドル前後に下がる可能性を示唆した。
押し目買いのチャンスは?
一方で、価格下落を押し目買いの好機と見る投資家もいる。
過去のビットコイン市場では、大きな下落の後に価格が反発することが多い。
「Bitcoin Opportunity Fund」の共同マネージングパートナー、David Foley氏は、「機関投資家の資金流入はすでに大きく、現在の流出は一時的な調整にすぎない」と分析する。
長期的な展望 市場は成長を続けるか?
ビットコインETF市場は、2023年の誕生以来、急速に成長してきた。
短期的な流出が続いているものの、長期的には市場が安定し、再び資金が流入する可能性もある。
グレースケールのアナリストは、「暗号資産市場の成長は依然として進行中であり、一時的な資金流出を過度に懸念する必要はない」とコメントしている。
まとめ
ビットコイン現物ETF市場は大きな変動を迎えているかもしれない。過去最大の資金流出は、価格下落や機関投資家の動向、裁定取引の縮小といった要因が絡み合った結果だ。しかし、市場のボラティリティが高いからこそ、新たな投資機会を模索する動きも見られる。そのため、短期的な不確実性を見極めつつ、長期的な視点で市場の動向を注視することが重要だろう。