
トランプ米大統領は2月18日、米国に輸入される自動車に対し、25%程度の関税を課す方針を示した。さらに、半導体や医薬品にも同様の関税を適用し、1年かけて段階的に引き上げる考えを明らかにした。現行の乗用車関税は2.5%であり、新たな関税措置が実施されれば日本の自動車メーカーにとって大きな打撃となる可能性がある。詳細は4月2日に発表される見込みで、日本政府や企業は対応を迫られている。
米国の新関税政策の概要
トランプ大統領は2月18日、米南部フロリダ州で記者団の取材に応じ、米国に輸入される自動車に対し25%程度の関税を課す方針を示した。関税の適用対象国については明言を避けたが、日本を含む自動車輸出国にとって大きな影響が予想される。
新関税の詳細
・対象品目:自動車、半導体、医薬品
・税率:25%前後(半導体・医薬品はさらに引き上げの可能性)
・発表予定日:2025年4月2日
・背景:米国内での生産を促進し、企業を国内回帰させる狙い
また、トランプ氏は「米国内に生産拠点を設ける企業には関税を適用しない」と述べ、企業に対し国内生産を促す意図を示している。
日本経済への影響
自動車産業への打撃
日本の自動車産業にとって、米国市場は極めて重要な位置を占める。2024年の日本からの米国向け自動車輸出台数は137万台(財務省貿易統計)であり、これに25%の関税が課されれば価格競争力が大きく低下する。
・トヨタ自動車:2024年の世界販売台数1015万台のうち、米国市場は233万台(約2割強)
・マツダ:米国販売42万台のうち、日本からの輸出が約23万台(半数以上)
・三菱自動車:米国に完成車工場を持たず、関税適用時の対策が難しい
トヨタ関係者は、「生産体制の強化は短期間では難しく、関税が課されれば値上げに踏み切らざるを得ない」と懸念を示している。
半導体・医薬品産業への影響
半導体と医薬品にも25%以上の関税が課される可能性があり、日本企業にとってはさらなる負担増となる。トランプ氏は「1年かけて大幅に税率を引き上げる」と述べており、追加的な関税引き上げの可能性もある。
・半導体業界:米国は世界最大の半導体市場の一つ。関税適用により、日本メーカーの輸出競争力が低下
・製薬業界:価格転嫁が難しく、米国市場での事業展開が厳しくなる可能性
日本政府と企業の対応
日本政府の動き
日本政府は、米国が輸入する鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税について、日本を対象から除外するよう要請しており、自動車関税についても同様の交渉を進める見込みである。
経済産業省幹部は「トランプ政権の関税政策では、自動車が最も大きな脅威だ。日本の基幹産業である自動車業界への影響を最小限に抑える必要がある」と警戒している。
日本企業の対応策
・米国内生産の強化:関税回避のために、米国内工場の生産能力を拡大する企業が増加すると予想される
・価格転嫁:消費者負担の増加が懸念される
・新たなサプライチェーンの構築:他国への生産移転や新たな物流戦略が必要に
ホンダは、「米国、メキシコ、カナダ間で関税が発動されただけでも7000億円超の影響が出る」と試算しており、企業側は厳しい決断を迫られている。
今後の展望
米国の貿易政策の行方
トランプ氏は「関税政策により、米国内の生産拠点を増やす狙いがある」と述べ、企業誘致を進める姿勢を見せている。しかし、これにより日本経済のみならず、世界的な貿易摩擦が激化する可能性がある。
市場への影響
19日の東京株式市場では、トランプ大統領の発言を受けて自動車関連株が売られた。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、「自動車関税に対する警戒感から、自動車株には売りが先行する一方で、金融・銀行株には買いが入りやすい」と分析している。
まとめ
トランプ大統領の表明した自動車関税25%、半導体・医薬品への課税強化は、日本の基幹産業に大きな影響を与える。特に自動車業界では、価格競争力の低下や生産体制の見直しが急務となる。日本政府と企業は、4月2日の詳細発表に向け、迅速な対応を求められている。