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日産子会社が下請け5社に金型保管強要、公取委が再発防止を勧告へ

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日産自動車の完全子会社である「愛知機械工業」(名古屋市)が、自社所有の金型を下請け5社に無償で長期間保管させていたことが明らかになった。公正取引委員会(公取委)は、これが下請法違反(利益提供要請の禁止)に該当すると判断し、同社に対して再発防止を勧告する方針を固めた。

自動車業界では、金型の処分にはメーカー側の許可が必要なケースが多く、下請け業者に負担が強いられる構造的な問題が指摘されている。日産の広大なサプライチェーンにも影響を与え得る今回の問題は、業界全体の取引慣行の見直しを迫る契機となる可能性がある。

今回の概要

下請け5社に400点の金型を無償保管

愛知機械工業は、エンジンやトランスミッションなどの部品製造に使用する約400点の金型を、下請け5社に無償で長期間保管させていた。最長で10年以上のケースもあり、2023年夏以降、新たな発注予定がないにもかかわらず保管が継続されていた。公取委の調査を受け、同社は下請け業者に対し、保管費用として計約2000万円を返金した。

公取委の判断と再発防止勧告

公取委は、今回の行為が下請法に違反すると判断し、再発防止を勧告する方針を固めた。公取委は2023年7月にも、トヨタ自動車系列の子会社が同様の行為を行っていたとして、下請法違反で勧告を出しており、自動車業界全体で取引慣行の見直しが求められている。

自動車業界における下請けの実態と日産のサプライチェーン

国内1万9000社以上の広がりを持つ日産のサプライチェーン

帝国データバンク(TDB)の調査によると、日産のサプライチェーンは全国に1万9084社に及ぶ。その内訳として、日産自動車と直接取引を行う「Tier1(一次取引先)」が1817社、Tier1と取引を行う「Tier2(二次取引先)」が1万2204社、「Tier3以降(三次以下の取引先)」が5063社とされる。

【参照】「日産自動車」の全国サプライチェーン実態調査(帝国データバンク)

下請け企業にのしかかる負担

サプライチェーン全体の企業のうち、売上高が判明している企業のデータによると、「1億円未満」または「1億~10億円未満」の中小企業が7割以上を占めており、多くの下請け企業が経営的な負担を抱えている。特にTier2・Tier3では、大手メーカーからの要求に従わざるを得ない構造が存在しており、今回のような無償保管問題が発生しやすい環境があると指摘される。

公取委の対応と日産の過去の違反事例

日産の過去の下請法違反

日産は2023年3月にも、下請け業者への納入代金を一方的に引き下げたとして下請法違反(減額の禁止)が認定され、約30億円を返金した。この際、再発防止策として取引先が匿名で通報できる窓口の設置などを公表したが、今回の金型問題の発覚により、その実効性に疑問が残る。

公取委の今後の対応と業界への影響

公取委は、下請け取引の適正化を進める方針を示しており、今回の勧告もその一環とされる。業界全体で取引慣行の是正が求められる中、今回の事例がどのような影響を与えるかが注目される。

今後の展望と求められる対応

自動車業界全体で下請け企業への負担を強いる商慣行を見直す必要がある。特に取引の透明性を高め、サプライチェーン全体で適正な契約管理を徹底することが求められる。また、EV(電気自動車)シフトや自動運転技術の発展が進む中、サプライヤー間の競争はますます激化している。大手メーカーと下請け業者が共存共栄できる仕組みを構築することが、業界全体の持続的発展につながるだろう。

今回の問題は、日産のサプライチェーンに限らず、自動車業界全体の構造的な課題を浮き彫りにした。今後、こうした問題が再発しないためにも、メーカーと下請け業者の関係を適正化し、公正な取引環境を整備することが不可欠である。

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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