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米フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は、トランプ大統領がメキシコとカナダに課す予定の25%の関税について、「米国の自動車産業に壊滅的な影響を及ぼす」と警告した。フォードは2024年10〜12月期決算で黒字に転換したものの、電気自動車(EV)部門の赤字が3年連続で続いており、厳しい経営環境が続く。関税の影響が業界全体に及ぶ可能性があるなか、今後の展開が注目される。
フォードCEO「関税は壊滅的な影響をもたらす」
フォード・モーターのファーリーCEOは、2月11日にニューヨークで開催されたウルフ・リサーチの自動車業界イベントで、トランプ大統領が検討している関税政策について懸念を示した。
「この関税は米国の自動車メーカーにとって壊滅的な影響を与える」とし、メキシコやカナダからの輸入品に25%の関税が課されることで、フォードだけでなく米国の自動車業界全体が大きなコスト増に直面すると警鐘を鳴らした。
コンサルティング会社アリックス・パートナーズの試算によると、新たな関税が導入された場合、米国の自動車業界全体で最大600億ドルのコスト増となる可能性がある。これにより、新車価格が約3000ドル上昇し、消費者への影響も避けられないと指摘されている。
フォードの決算、EV事業の赤字が続く
フォードは2月5日に2024年10〜12月期決算を発表し、最終利益が18億ドル(約2750億円)の黒字となった。前年同期の5億ドルの赤字から大幅な改善を見せたが、EV事業の赤字は3年連続で続いている。
フォードのEV事業はコスト削減の努力を続けながらも、依然として厳しい状況にある。2024年のEV販売台数は9万7865台にとどまり、一方でハイブリッド車は18万7426台と約2倍の販売実績を記録した。これを受け、フォードはEV生産計画を縮小し、ハイブリッド車に軸足を移す戦略を進めている。
2025年のEV事業の赤字は最大55億ドルに達する可能性があり、経営の重荷となっている。
関税が自動車業界全体に与える影響
フォードだけでなく、ゼネラル・モーターズ(GM)や他の米国自動車メーカーも関税の影響を警戒している。
GMのメアリー・バーラCEOは、同じウルフ・リサーチのイベントで、「追加の資本を投入せずとも、関税の影響を30〜50%抑えることが可能」との考えを示した。しかし、長期的に関税が続けば、全体のコスト構造に悪影響を及ぼす可能性が高い。
また、フォードのシェリー・ハウス最高財務責任者(CFO)は、「メキシコとカナダに25%の関税が課されれば、業界全体に多大な影響を及ぼすのは間違いない」としながらも、「米国の自動車産業を支援する意図があると信じている」と述べた。
今後の展望と業界への影響
フォードは、関税が発動された場合に備え、大幅な戦略転換を迫られる可能性がある。ファーリーCEOは、「米国内で新工場を建設する必要が出てくるかもしれない」と述べており、生産拠点の見直しを余儀なくされる可能性がある。
関税が実施されれば、米国の自動車メーカーの生産コストは上昇し、消費者に価格転嫁される形となる。結果として、自動車の販売台数が減少し、業界全体の収益性が低下する可能性がある。
一方で、アジアや欧州の自動車メーカーには同様の関税が適用されないため、競争環境が不公平になるとの指摘もある。フォードをはじめとする米国メーカーは、関税の影響を最小限に抑えるための対策を検討しているものの、不透明な状況が続いている。
トランプ政権の関税政策が実際に発動されるかどうかは不明だが、仮に実施されれば、米国の自動車産業にとって大きな転換点となることは間違いない。今後の政権の動向とともに、各自動車メーカーの対応が注目される。
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