フリマアプリ大手のメルカリで、返品を悪用した詐欺被害が相次いで報告され、SNS上で大きな波紋を広げている。被害者は、返品された商品の中身がすり替えられていた、あるいは抜き取られていたと訴え、メルカリの初期対応の不備も批判の的となっている。
今回の騒動は、メルカリのビジネスモデルの脆弱性を露呈しただけでなく、CtoCプラットフォームにおける信頼の重要性を改めて問うものとなった。
返品詐欺の手口と被害の実態
X(旧Twitter)で拡散された報告によると、被害者は新品未開封のプラモデルやiPhoneといった商品を出品し、購入者から「パーツ破損」や「ロックがかかっている」といった理由で返品を要求された。メルカリの指示に従い返品を受け入れたものの、届いた商品は中身が抜き取られた状態、あるいは全く別の商品にすり替えられていたという。
同様の被害は他にも複数報告されており、高額商品だけでなく、比較的安価な商品も標的になっていることが明らかになっている。初期対応においてメルカリ事務局は、被害者の訴えを軽視するような対応を取ったとされ、その点も批判を浴びた。後にメルカリは対応を改め、被害者への補償を行ったものの、対応の遅れと初期の対応の悪さから、ユーザーの不信感は払拭されていない。
メルカリの対応と課題:危機管理の欠如
メルカリは、盗品販売など不正取引を防止するため、本人確認の強化や売上金の振込口座との名義一致などを義務付けている。しかし、アカウント売買など、これらの対策をすり抜ける不正行為も存在しており、今回の騒動はプラットフォームの安全性を揺るがす事態となっている。
実際に、SNS上ではメルカリアカウントの売買と思われる投稿が確認されており、過去の取引履歴を偽装することも可能になっている。
これはメルカリが掲げる「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というパーパス(CEOメッセージ)と、サーキュラーエコノミーを推進する企業としての姿勢に矛盾する深刻な事態である。
CEOはコーポレートサイトのサステナビリティ欄のメッセージの中で、あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げることを掲げている。あらゆる人の可能性を広げるためには、企業として持続的成長を続けることが重要と説き、CO2排出量の削減に貢献していると述べているが、アカウント売買などの不正行為が横行する現状は、真のサーキュラーエコノミーの実現を阻害する要因となりかねない。
今回の騒動におけるメルカリの対応は、危機管理広報の観点からも問題視されている。広報部署と事務局で異なる対応が行われたこと、SNSでの炎上を受けて返金に応じたと思われることは、企業としての対応のまずさを露呈したと言える。迅速かつ統一された対応こそが、企業の信頼回復には不可欠である。
CtoCプラットフォームの信頼性と今後の展望
CtoCビジネスモデルは、個人間の直接取引を仲介することで、不要なモノの再利用や新たな経済活動を生み出すというメリットがある一方で、取引相手が見えないことによるリスクも内包している。今回のメルカリの騒動は、このリスクが顕在化した事例と言える。
せっかく、12日に子会社のメルペイが、同社が運営するフリマアプリ「メルカリ」のスマホ決済サービス「メルペイ」のネット決済を、2024年11月12日より、アマゾンでも利用可能になったことを伝えるなど、メルカリ経済圏のさらなる拡張が期待できるリリースがあっただけに、今回の炎上をどのように乗り越えるのか注視する人は多いだろう。
株価への影響は限定的か?
14日末時点では、今回の騒動によるメルカリの株価への影響は限定的、というより1,914円と111円上がっている。ただ、9月には2700円を超えた株価が、引き続き下落傾向にあることは変わりない。さらに、今後の対応次第では、ユーザーの離反や企業イメージの低下につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性も否定できない。明日以降の株価動向は予断を許さない状況と言えるだろう。
CtoCプラットフォームが持続的に成長していくためには、取引の安全性と信頼性を確保することが不可欠だ。プラットフォーム運営企業は、不正行為への対策を強化するだけでなく、ユーザー間のコミュニケーションを円滑にするための仕組みづくりや、トラブル発生時の迅速かつ公正な解決システムの構築に尽力する必要がある。
今回の騒動が、メルカリだけでなく、他のCtoCプラットフォーム事業者にとっても、安全性と信頼性向上への取り組みを加速させる契機となることが期待される。