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2024年改訂版「新しい資本主義」実行計画を読み解く:インパクトスタートアップが拓く未来と企業の対応

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2024年改訂版「新しい資本主義」実行計画を読み解く:インパクトスタートアップが拓く未来と企業の対応

本記事では、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版の実行計画の主要なポイントを解説するとともに、注目される「インパクトスタートアップ」に対する支援策の詳細に焦点を当てます。

さらに、企業が本実行計画をどのように事業に活用できるか、サステナビリティ担当者はどのように開示戦略を構築すべきか、具体的なインサイトを提供します。

新しい資本主義グランドデザイン及び実行計画について

2021年10月に岸田文雄首相が提唱した「新しい資本主義」は、成長と分配の好循環による持続可能な経済社会の実現を目指しています。その実現に向けた具体的な施策をまとめた「新しい資本主義グランドデザイン及び実行計画」は、毎年改訂を重ね、進化を続けています。

2024年6月に閣議決定された2024年改訂版では、これまでの取り組みの成果と課題を踏まえ、物価高騰を乗り越え、賃上げを定着させるための施策が強化されています。特に、スタートアップ育成やGX推進、資産運用立国など、未来への投資を加速させるための内容が充実しています。

本記事では、2024年改訂版実行計画の主要なポイントを解説するとともに、注目される「インパクトスタートアップ」に対する支援策の詳細に焦点を当てます。さらに、企業が本実行計画をどのように事業に活用できるか、サステナビリティ担当者はどのように開示戦略を構築すべきか、具体的なインサイトを提供します。

2024年改訂版の要点

2024年改訂版実行計画では、以下の3つの循環を作り出すことで、継続的な所得向上と社会課題の解決を両立させる成長戦略が示されています。

  • 生産性を高め供給を増やす循環: 人口減少を機会と捉え、スタートアップの成長、既存企業のイノベーション、事業承継、M&Aを促進し、リ・スキリングと労働移動を通じて供給サイドを強化
  • 需要を増やす循環: 社会課題解決を通して需要を開拓し、対価を伴う付加価値の高い解決策を生み出すことで新たな市場を創出・拡大
  • 海外とつながる循環: 海外との双方向のつながりによって、ソリューションの海外展開、投資や人材の流入を促進し、市場拡大を加速

これらの循環を実現するための具体的な施策として、以下のような項目が挙げられています。

  • 人への投資: 中小・小規模企業の賃上げ定着、非正規雇用労働者の処遇改善、三位一体の労働市場改革
  • 産業の革新: スタートアップ育成、企業の参入・退出の円滑化、コンテンツ産業活性化
  • 投資の推進: DX、AI、半導体、健康・医療、科学技術・イノベーション、GX・エネルギー・食料安全保障: 脱炭素化、エネルギー安全保障、食料自給率向上
  • 資産運用立国: 家計の安定的な資産形成支援、金融市場の活性化

インパクトスタートアップへの期待と支援策

2024年改訂版実行計画では、社会課題の解決と経済成長を両立させる「インパクトスタートアップ」に対する総合的な支援策が打ち出されています。

インパクトスタートアップとは、社会課題の解決を目的とする事業を行い、経済的価値と社会的価値の両立を目指す企業です。 従来のスタートアップは、主に経済的価値の最大化を目指してきましたが、インパクトスタートアップは、貧困、環境問題、教育格差など、社会課題の解決に直接的に貢献することを目指します。

政府は、インパクトスタートアップを「課題解決を通じての新たな市場の創造」を牽引する存在として期待しており、以下の4つの柱からなる総合的な支援策を推進します。

  • 関係者間の連携強化: インパクトスタートアップ、NPO、既存企業、投資家など、多様なステークホルダーによる連携を促進するため、コンソーシアムの設立や情報共有プラットフォームの構築などを支援します。
  • インパクト投資の案件創出: インパクト投資とは、財務的リターンに加え、社会的なインパクトも重視する投資のことです。政府は、インパクト投資の案件創出を促進するため、インパクトスタートアップの認証制度や評価指標の整備、情報開示の促進などを進めます。
  • インパクトスタートアップの認証制度: インパクトスタートアップを明確に定義し、認証制度を導入することで、インパクト投資の対象を明確化し、投資家の参入を促進します。
  • 地方自治体とのマッチング: 地域の社会課題解決に貢献するインパクトスタートアップを育成するため、地方自治体とのマッチングを支援します。地域資源を活用したビジネスモデルの構築や、地域課題に特化したアクセラレーションプログラムなどを推進します。

企業が実行計画を活用するポイント

2024年改訂版実行計画は、企業にとっても大きなビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。企業は、自社の事業と関連性の高い施策を理解し、戦略的に活用することで、成長と社会貢献を両立させることができます。

例えば、以下のようなポイントが挙げられます。

  • GX関連事業の推進: 脱炭素化に向けた投資は、世界的な潮流となっています。再生可能エネルギー、省エネルギー技術、カーボンリサイクルなど、GX関連事業への投資を強化することで、新たな市場を獲得することができます。
  • デジタル技術の活用: DXは、あらゆる産業において競争力を強化する上で不可欠です。AI、IoT、ビッグデータなどを活用した新製品・サービスの開発や、業務プロセスの効率化などを推進することで、生産性向上と新たな価値創造を実現することができます。
  • スタートアップとの連携: オープンイノベーションは、大企業が新たな技術やアイデアを獲得する上で有効な手段です。スタートアップとの連携を強化することで、イノベーションを加速させ、新たなビジネスモデルを創出することができます。
  • 地域創生への貢献: 地方創生は、日本経済の活性化に不可欠です。地域資源を活用したビジネスモデルを構築したり、地域課題の解決に貢献する事業を展開したりすることで、地域経済の活性化に貢献することができます。

政府は、これらの取り組みを支援するため、補助金制度や税制優遇措置などを用意しています。企業は、これらの制度を積極的に活用することで、投資リスクを軽減し、事業を推進することができます。

サステナビリティ担当者のための開示戦略

2024年改訂版実行計画は、企業のサステナビリティ活動にも大きな影響を与えます。特に、インパクト投資の拡大やESG投資の重要性が高まる中で、企業は、自社のサステナビリティに関する情報開示を充実させることが求められます。

サステナビリティ担当者は、以下のようなポイントを踏まえ、開示戦略を構築していく必要があります。

  • 実行計画に関連する開示項目を整理する: 賃上げ、人材育成、ダイバーシティ、環境負荷低減、サプライチェーンマネジメントなど、実行計画に関連する開示項目を網羅的に洗い出し、自社の取り組み状況を整理します。
  • 投資家やステークホルダーからの期待に応える: 投資家や顧客、従業員、地域社会など、様々なステークホルダーが企業のサステナビリティに高い関心を寄せています。それぞれのステークホルダーが求める情報や期待を理解し、それに応える内容の開示を行う必要があります。
  • 具体的な開示事例を参考にする: グローバルスタンダードであるGRIスタンダードや、業界団体が作成するガイドラインなどを参考に、具体的な開示事例を収集し、自社の開示内容を充実させていきます。

具体的には、以下のような項目について、開示を充実させることが考えられます。

  • インパクト投資への取り組み: インパクト投資に関する方針や目標、具体的な投資事例、インパクトの測定・評価方法などを開示することで、投資家からの信頼を獲得し、資金調達を円滑化することができます。
  • サプライチェーンにおけるESG: サプライヤーの労働環境、人権問題、環境負荷など、サプライチェーン全体におけるESGに関するリスクと取り組みを明確に開示することで、企業としての責任を果たし、ブランド価値を高めることができます。
  • 人材育成・ダイバーシティ: 従業員のスキルアップや多様な人材の活躍を促進するための取り組みを開示することで、優秀な人材の獲得・定着を促進し、企業の持続的な成長につなげることができます。

まとめ

2024年改訂版「新しい資本主義」実行計画は、日本経済の持続的な成長と社会課題の解決を両立させるための、野心的な計画です。インパクトスタートアップへの支援強化は、新たな市場創出と社会変革を加速させる可能性を秘めています。

企業は、本実行計画に示された施策を積極的に活用することで、成長戦略を強化し、持続可能な社会の実現に貢献することができます。サステナビリティ担当者は、情報開示の充実化を通じて、企業の透明性を高め、投資家やステークホルダーからの信頼を獲得していく必要があります。

新しい資本主義の実現には、官民一体となった取り組みが不可欠です。企業は、本実行計画を「成長の羅針盤」として捉え、未来への投資を積極的に行うことで、持続可能な社会の実現に貢献していきましょう。

参考 :新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024年改訂版

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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