世界の代表的なESG投資指標である「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・ワールド・インデックス(DJSI World)」。2021年は、全世界で322社、日本企業は35社が構成銘柄に選定されました。今回は、5年連続選定かつ「Commercial & Professional Services(商業サービス・用品)」産業グループにおいて、日本企業では唯一となった凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)の取り組み事例をご紹介します。
DJSI Worldとは
DJSI Worldとは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社のサステナビリティに関する評価指標です。世界中の上場企業のうち、時価総額で世界の上位2500社を対象とし、経済・環境・社会の3側面から総合的に分析。持続可能性に優れた企業を選定しています。
審査は厳正に行われており、2020年には日本企業が39社だったものが、2021年には35社となりました。いったん選定されても翌年の審査をクリアし、上位10%に入らなければワールドインデックスにはなれません。
DJSIは、 グローバル、地域別、および国別のインデックスで構成されおり、World以外にもDJSI North America(北米)、DJSI Europe(欧州)、DJSI Asia Pacific(アジア・パシフィック)などがあります。
サステナビリティに対する対応を高く評価された証でもあるDJSIは、選定されることじたいが大きな名誉として内外に対する大きなアピールとなります。
凸版印刷のサステナビリティへの取り組み
それでは、凸版印刷はどのような点を DJSI に評価されたのでしょうか。
公式サイトによると、凸版印刷は、「国連グローバル・コンパクト」を活動の原則に、また組織の社会的責任に関する国際規格「ISO26000」を活動の指針としているそうです。ISO26000は、持続可能な発展への貢献を最大化することを目的として、あらゆる組織に向けて開発された社会的責任に関する世界初のガイダンス文書。倫理的な行動やステークホルダーの利害の尊重など7つの原則を掲げ、ガバナンスや人権などの7つの中核主題を提示しています。
SDGs貢献に向けて事業で注力する分野を特定
凸版印刷では、全社を挙げてSDGsに取り組む宣言として、2019年11月に「TOPPAN SDGs STATEMENT」を策定・公表しています。そこで、SDGsの17目標の中から特に注力する重要課題(マテリアリティ)を選定。選定したマテリアリティを「全社活動マテリアリティ」と「事業活動マテリアリティ」に分け、前者では「環境配慮・持続的な生産」「従業員の健康・働きがい」を、後者では「環境」「まち」「ひと」とカテゴライズしました。
さらに、2020年11月13日に公表した「TOPPAN Business Action for SDGs」では、SDGs貢献に向けて、事業で注力する分野を具体的に特定しています。
例えば「環境」においては「サーキュラーエコノミーの実現」「脱炭素社会の実現」「エコプロダクツ・ソリューションの拡大」の3つを掲げました。さらにそれぞれについてどうするか、例えば「 エコプロダクツ・ソリューションの拡大 」では、自社製品の「GLフィルムのモノマテリアル化(複数の異種素材から構成される包装フィルムを単一素材でフィルムにすること)など、意味が広すぎる言葉に対して「何をどうするか」を示しています。
サステナビリティ推進体制
企業がサステナビリティを標榜していることは、もはや珍しいことではなくなりました。実際に行動しなくては意味がありません。公式サイトによると、凸版印刷はサステナビリティ活動の推進のため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会(以下 委員会)を設置。さらに下部にワーキンググループ(WG)を設置し、毎年主要グループ会社の社員も対象とした全社基礎教育や新入社員研修を実施しています。基礎教育や研修は、地道な取り組みではありますが、繰り返し行うことで社員の中にサステナビリティを常識として根付かせるのに役立っているのでしょう。
また、新たな組織として、事業部門を横断して全社的に活動を推進する「TOPPAN SDGs Unit」を2020年に設立。今後の課題としては、グループ全体としての活動強化、ならびに外部視点を採用した意思決定なども掲げています。
明確な目標からすべきこと、さらに推進・教育体制を整えることが、企業のSDGsにとって重要だといえるのではないでしょうか。