
ホロライブ所属のVTuber星街すいせいが3月22日、個人事務所「Studio STELLAR」の設立を発表した。ポイントは、ホロライブを離れる話ではないという点である。カバーによると、ホロライブ所属VTuberとしてのコラボやグループ活動は今後も継続しつつ、ソロアーティストとしての音楽活動、配信活動、新規グッズ販売、ファンクラブ運営などを新事務所側へ移していく。単純な独立でも、単なる暖簾分けでもない。星街すいせいという巨大化した個人ブランドに合わせ、活動の器そのものを拡張する再編と見たほうが実態に近い。
星街すいせいは何を発表したのか
この日の発表では、個人事務所「Studio STELLAR」の設立に加え、公式サイト公開、公式ファンクラブ「星詠み」の開設、さらに2026年アリーナツアー「Once Upon a Stellar」の開催も明らかになった。PANORAによると、ツアーは横浜、神戸、名古屋、福岡の4都市5公演で予定されている。公式サイトにも同ツアーとファンクラブ開設が掲載されており、新体制が発表だけで終わるものではなく、即座に運用段階へ入っていることがうかがえる。
「ホロライブ脱退」ではない
この話が大きく広がるたびに起きやすいのが、「個人事務所設立=事務所離脱」という早合点である。だがカバーの発表はかなり明確で、ホロライブプロダクション所属VTuberとしてのコラボやグループ活動は継続するとしている。その一方で、ソロアーティストとしての音楽活動や配信、新規グッズ販売、ファンクラブ運営などは「Studio STELLAR」に移行する。つまり線引きは“所属の有無”ではなく、“どの活動をどの器で回すか”にある。KAI-YOUやPANORAも、ホロライブでの活動継続を前提に報じている。
なぜ今、個人事務所なのか
カバーは今回の体制変更について、星街すいせい本人の目標である東京ドーム公演の実現と、さらなるメジャーシーンでの活躍を見据えたものだと説明している。ここで見えてくるのは、VTuberの活動がもはや配信者マネジメントだけでは収まらない段階に入ったという現実である。音楽制作、ライブ、タイアップ、ファンクラブ、グッズ、メディア出演を一体で回すなら、一般的な“所属タレント”の枠だけでは機動力が落ちる。個人事務所の設立は、自由を求めた反旗というより、拡大した事業規模に合わせた経営と運営の最適化と見るべきだろう。
星街すいせいだけの話では終わらない
今回の発表は、星街すいせい個人の節目であると同時に、VTuber産業の成熟を示す出来事でもある。カバーは「VTuberカルチャーの次なるステージ」とまで言い切った。大手事務所に所属しながら、個人ブランドとしてのソロ事業を切り出し、なおかつグループ活動とも接続し続ける。この形が機能すれば、今後は音楽、映像、イベントで強い実績を持つVTuberほど、似た再編モデルを検討しやすくなる。所属か独立かという二択ではなく、両立型のハイブリッド運営が現実味を持ち始めたということだ。
運営面で見逃せない株式会社NERDの関与
もう一つ重要なのが、個人事務所の立ち上げにあたり、株式会社NERDがタレントマネジメントを担う点である。カバーは、自社との協業・連携体制のもとでソロアーティスト活動を支援すると説明している。つまり完全な自己運営ではなく、事務所機能をプロのマネジメント会社が支え、カバーとも連携する三層構造に近い。個人事務所と聞くと“ひとりで全部抱える”印象を持ちやすいが、実際には逆で、より大きな挑戦のために分業体制を再設計したと見るほうが自然である。
ファンにとっては何が変わるのか
短期的にわかりやすい変化は三つある。ひとつは情報導線が整理されることだ。公式サイト、事務所SNS、ファンクラブが動き始め、ソロ活動の受け皿が明確になった。二つ目はライブと会員施策の強化である。ORICONやOTOTOYによると、ファンクラブではチケット先行や会員限定コンテンツが用意される。三つ目は、今後の“星街すいせい名義”の展開が、より大きなスケールで組み立てやすくなることだろう。ファンから見れば、追いかけるための窓口が増えた形だ。
VTuberはどこまで“アーティスト”として拡張できるか
星街すいせいはすでに、THE FIRST TAKE出演や「ビビデバ」の1億再生突破、さいたまスーパーアリーナ、日本武道館公演成功など、VTuberの枠内だけでは語りきれない到達点を積み上げてきた。今回の体制変更は、その延長線上にある。配信文化から生まれた存在が、音楽市場やライブ市場で本格的に戦うために、従来の枠組みを少しずつ組み替え始めた。その最前線にいるのが星街すいせいであり、今回の「Studio STELLAR」設立は、個人の吉報であると同時に、VTuber史の次章を告げるニュースでもある。



