
STARTO ENTERTAINMENT所属アーティストが一堂に会する年越しライブが、配信プラットフォームを主戦場に新たな局面を迎えた。Netflixは13日、東京ドームで開催される『COUNTDOWN CONCERT 2025-2026 STARTO to MOVE』を2026年1月7日午後10時から世界独占配信すると発表した。地上波中継が行われない可能性が高まる中、ファンと業界の双方に波紋が広がっている。
三年ぶり復活となる年越しライブの全容
大みそかの12月31日、東京ドームで開催される『COUNTDOWN CONCERT 2025-2026 STARTO to MOVE』は、三年ぶりに実施されるSTARTO ENTERTAINMENTの年越しライブだ。
出演者として発表されたのは、NEWS、Hey! Say! JUMP、Kis-My-Ft2、timelesz、中島健人、A.B.C-Z、King & Prince、SixTONES、Snow Man、なにわ男子、Travis Japan、Aぇ! Groupの十二組。旧ジャニーズ事務所時代から続く「カウコン」の系譜を引き継ぎつつ、社名変更後では初開催となる点が大きな節目となる。
これまで年末年始の風物詩として定着してきた同公演は、テレビとファンクラブ配信を軸に展開されてきた。しかし今回は、開催発表と同時に有料生配信の実施が決定しており、従来の無料地上波中継の枠組みから大きく舵を切った形だ。
Netflix世界独占配信という選択
Netflixは、ライブ本編を2026年1月7日午後10時から世界独占配信すると発表した。
さらに、舞台裏を収めたメイキング映像を1月30日午後10時から独占配信することも明らかにしている。
各社報道によると、国内外での同時展開を可能にする配信プラットフォームとしてNetflixを選んだ背景には、海外ファンの増加とグローバル戦略があるとみられる。日本国内のファン向けイベントでありながら、世界同時に届けるという判断は、STARTO社が今後、国際市場を強く意識していく姿勢の表れとも言える。
地上波中継が消えた理由を探る
今年の年越しライブについて、地上波での生中継は現時点で発表されていない。過去には民放各局が中継を担い、年末の高視聴率コンテンツとして存在感を放ってきたが、今回は状況が異なる。
テレビ局関係者の話として伝えられているのは、権利処理の複雑化や制作コストの高騰、そして配信との役割分担だ。特にNetflixが世界独占配信を掲げたことで、放送権の整理が難しくなった可能性は否定できない。地上波から配信への重心移動は、テレビ業界全体の構造変化とも重なる。
ファンクラブ配信との違いに注目集まる
今回のNetflix世界独占配信決定を受け、ファンの関心は自然と「ファンクラブ向け有料配信と何が違うのか」という一点に集まっている。STARTO ENTERTAINMENTでは、すでにファンクラブ会員向けに生配信や見逃し配信を行うことが発表されており、そこにNetflixという巨大プラットフォームが加わる形だ。
SNS上では「結局どっちを見ればいいのかわからない」「同じ映像ならFCで十分では」といった戸惑いの声がある一方で、「Netflixは演出や編集が違うはず」「世界向けならカメラワークも別物になるのでは」と期待を寄せる投稿も少なくない。
ファンクラブ配信は、会員向けに最適化された構成が特徴だ。リアルタイム性を重視し、アーティストとファンの一体感を最優先する一方、視聴環境や配信クオリティは国内ユーザーを前提としている。対してNetflixは、世界中の視聴者を想定したプラットフォームであり、字幕対応や編集、音響面など、国際基準でのクオリティが求められる。ライブそのものが「世界に輸出される映像作品」として再構築される可能性が高い。
さらに注目されているのが、配信タイミングとアーカイブ性だ。ファンクラブ配信は一定期間の見逃し配信に限られるケースが多いが、Netflixでは長期的に視聴可能となる公算が大きい。年越しという一瞬の体験が、後から何度でも視聴できるコンテンツに変わる点は、従来のカウコンにはなかった要素だ。
加えて、1月30日に予定されているメイキング映像の独占配信は、ファンクラブ配信との差別化を明確にする切り札とも言える。リハーサルや舞台裏、アーティスト同士の素顔を切り取ることで、ライブ当日の熱狂を補完する構成となりそうだ。
こうした違いを踏まえると、ファンクラブ配信は「その瞬間を共有する場」、Netflixは「後世に残る公式アーカイブ」という役割分担が浮かび上がる。ファンにとっては二重の課金負担という現実的な問題もあるが、それ以上に、STARTO ENTERTAINMENTがコンテンツを複線的に展開し始めた象徴的な事例と見る向きも強い。
年越しライブという一大イベントを、どのプラットフォームで、どの体験として受け取るのか。その選択そのものが、ファン一人ひとりに委ねられる時代に入ったと言えそうだ。
世界配信がもたらすSTARTO社の戦略転換
STARTO ENTERTAINMENTは、社名変更後、タレントマネジメントの透明性や国際展開を重視する姿勢を打ち出してきた。今回のNetflixとの取り組みは、その象徴的な一手と言える。
音楽ライブを単なる国内イベントとして終わらせず、アーカイブ性の高いコンテンツとして世界に流通させることで、収益モデルも多層化する。メイキング映像を別日程で配信する構成は、ライブを起点にした長期的な視聴を狙ったものだ。
テレビの生中継で新年を迎えるという体験は、日本の大衆文化の一部だった。しかし、その形は確実に変わりつつある。今回の「カウコン」は、配信時代における年越しライブの新たなモデルケースとなる可能性が高い。
ファンにとっては視聴手段が増える一方で、選択と負担も増える。業界にとっては、テレビと配信の役割分担をどう描くかが問われる。STARTO ENTERTAINMENTとNetflixの協業は、その試金石となるだろう。



