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カナダ元五輪スノーボーダーが「現代の麻薬王」へ FBI最重要指名手配犯となった男の転落

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FBI
PhotoACより

静かな雪山を滑り降りていたはずの青年は、20年後、麻薬カルテルの闇に姿を消すことになる。2002年ソルトレークシティー五輪に出場したカナダの元スノーボード選手、ライアン・ウェディング被告が、FBIの「最重要指名手配犯10人」に名を連ねた。

CNNによると、米国務省は拘束につながる情報に最大1500万ドル(約23億円)の懸賞金を提示し、逃亡劇は国際的な捜査網に広がっている。

 

 

雪山に育まれた才能 “恐れを知らない”少年時代

カナダ・オンタリオ州サンダーベイ。凍てつく風が吹き抜ける地元のスキー場で、ウェディング被告は幼い頃から滑走技術を磨いた。祖父母の経営するスキー場、おじは代表チームのコーチ。まさに雪山の申し子だった。

15歳でカナダ代表に抜擢されると、世界の斜面が舞台に変わった。イタリア、フランス、チリ、日本。各国の大会を転戦しながら、彼はスノーボードの道を駆け上がっていく。

元スキーチャンピオンのボビー・アリソン氏は、当時を「彼には恐怖の概念がなかった」と語り、「転倒を恐れず突っ込む稀有な選手だった」と振り返る。

そして2002年、ソルトレークシティー。世界24位。若者の未来はそのとき確かに輝いていた。

だが、競技人生は長く続かなかった。

 

バンクーバーで始まった“転落” 用心棒から闇社会へ

競技から退いたウェディング被告はサイモンフレーザー大学に進み、バンクーバーで新たな生活を始めた。だが、都市の喧騒のなかで関わったナイトクラブの用心棒という仕事が、人生を大きく変えていく。

夜ごと集まる人々の影。その奥には、違法薬物の流通という別の世界があった。ウェディング被告は次第にその内部へ足を踏み入れ、2008年にはコカイン販売を目的とした共謀罪で逮捕される。

裁判を戦った末に2009年に有罪となり、禁錮4年。2011年には釈放されるが、その後の歩みは雪山とは正反対の、暗い谷底へと向かうことになる。

 

国際麻薬組織の頂点へ “現代版エスコバル”と呼ばれた理由

連邦検察が2024年に公表した起訴状では、ウェディング被告とその仲間は、米国からカナダへ長距離セミトレーラーで数百キロ規模のコカインを運ぶ国際組織を構築したとされる。

活動は北米から南米にまたがり、メキシコの麻薬組織シナロア・カルテルの保護下で潜伏している可能性が高いとみられている。

FBIのパテル長官は、「彼は現代版パブロ・エスコバル、現代版『エル・チャポ』だ」と語り、その危険性は歴代の麻薬王に匹敵すると指摘した。

米司法当局によれば、ウェディング被告の組織は年間60トンのコカインを扱う巨大ネットワークに成長していたという。

 

報復と恐怖 複数の殺人を指示した疑い

ウェディング被告は、麻薬の盗難や負債を理由に複数の殺害を指示した疑いが持たれている。

2023年11月にはオンタリオ州で一家の2人の殺害を命じ、2024年5月にも別の人物の殺害を指示したとされる。
さらに2025年1月には、彼の裁判で証言する予定だった人物がコロンビア・メデジンの飲食店で射殺され、捜査当局は“口封じ”のための賞金がかけられていたとみている。

かつて恐れを知らず雪山を駆けた男は、今や別の意味で恐怖をまとい、国際社会の脅威となっている。

 

FBI「最重要指名手配10人」へ 懸賞金は1500万ドル

2025年3月、FBIはウェディング被告を「最重要指名手配犯10人」に追加。
11月には、証人殺害に関与したとして弁護士を含む10人が逮捕され、米当局は懸賞金を1500万ドルへ引き上げた。

FBIは「報告は増えているが、依然として逃亡中」とし、国際的な捜査が続いている。
有罪となれば「継続的犯罪組織活動(CCE)」により終身刑以上の刑が科される見通しだ。

 

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ライター:

広告代理店在職中に、経営者や移住者など多様なバックグラウンドを持つ人々を取材。「人の魅力が地域の魅力につながる」ことを実感する。現在、人の“生き様“を言葉で綴るインタビューライターとして活動中。

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