
北九州市にある福岡県警第二機動隊。その中で水難救助を担うスクーバ部隊で、後輩隊員に裸踊りをさせる、真冬のプールに無理やり入らせるなど、組織的ともいえるハラスメントが繰り返されていたことが判明した。
複数の隊員が不同意わいせつや暴行の疑いで書類送検され、県警は十数人の懲戒処分に踏み切る方針だ。
寮で起きていた不適切行為
問題が明らかになったのは、スクーバ部隊内部からの相談がきっかけだった。寮では、飲み会後に後輩隊員が呼び出され、服を脱がせられる行為が行われていたとされる。これらの行為は複数回確認され、通常の指導や訓練とは明らかに異なる内容だった。
別の機会には、会合の場で後輩に裸踊りをさせる行為もあった。周囲にいた隊員は止めることなく、そのまま行為が続けられたという。こうした不適切な行為は、一部の隊員によって繰り返されていたとされる。
凍てつく訓練場での強制 “恐怖のプール”
調査によって確認された行為の中には、冬の寒い時期に訓練用プールへ入水させる行為も含まれていた。気温が低く、訓練に適さない状況でも先輩隊員が後輩に入水を指示し、従わせていたケースが複数あったという。
これらの行為は業務訓練としての合理性が認められず、後輩に対する強要行為として扱われている。また、勤務時間外に後輩へ暴行を加えた事案も確認されており、複数の行為が同時並行的に発生していたことがうかがえる。
不同意わいせつと暴行で書類送検 十数人を懲戒処分へ
県警は27日、複数の隊員を不同意わいせつと暴行の疑いで書類送検した。わいせつ行為は昨夏、飲酒の場で後輩の服を無理やり脱がせたとされるもので、暴行についても複数の隊員への行為が確認された。
同時に、直接関与した隊員だけでなく、指導や管理の立場にあった上司も処分対象となる見通しで、合計十数人に懲戒処分や監督上の措置が取られる方針である。県警は「調査結果を踏まえ、厳正に対処する」とコメントしている。
スクーバ部隊とはどのような組織か
スクーバ部隊は、水中での捜索や救助に特化した潜水専門の部隊で、海や河川での水難事故対応、水没した車両や証拠品の捜索など、高度な専門技能を必要とする。危険性の高い任務も多く、隊員同士の連携が重要視される一方で、訓練環境は閉鎖的になりやすい特徴がある。
こうした閉鎖性は、適切な監督が行われない場合、内部の慣習がそのまま温存される要因ともなり得る。専門的な技術を要する部署であればあるほど、上下関係が固定化しやすい点も指摘されてきた。
組織に残された課題と再発防止への道
今回の調査で浮かび上がったのは、特定の個人だけではなく、組織としての監督不十分さが重なっていた可能性である。寮や訓練場といった外部の目が届きにくい環境では、不適切な行為が見過ごされる恐れがある。これが連鎖的に起き、複数の行為が重なっていたとみられる。
再発防止に向けては、隊員が不適切な行為を相談しやすい体制を確立することが欠かせない。また、評価制度や指導体制が上下関係に偏りすぎないよう改善し、寮や訓練施設を含む活動環境の監査を定期的に行う必要もある。組織として問題の芽を早期に見つけ、明確な対応が取れるかどうかが今後の鍵となる。



