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北京五輪代表・宇佐美大輔監督(46)を懲戒免職 雄物川高校バレー部で繰り返された体罰と暴言

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宇佐美大輔氏

秋田県立雄物川高校男子バレーボール部の監督で、2008年北京五輪に日本代表として出場した経歴を持つ宇佐美大輔氏(46歳)が、複数の部員に対して暴力や暴言を繰り返していたとして、秋田県教育委員会は懲戒免職処分とした。全国屈指の名門を率いた元五輪代表による行為は、教育現場に重い衝撃を与えている。

 

雄物川高校の名門バレー部と輩出された才能

秋田県横手市にある雄物川高校は、男子バレーボール部が県内有数の強豪として知られる。2024年にはインターハイで29年連続29回目の出場を果たし、全国の舞台でも常に上位を狙う存在だった。守備を重視した堅実な戦術が持ち味で、「東北の守りの雄物川」と評されることもあった。
地元の横手市では、試合のたびに地域住民が体育館に駆けつけ、まち全体が応援ムードに包まれる。雄物川高校は単なる高校の一部活動にとどまらず、地域の誇りとして長年にわたって支えられてきた。
こうした伝統の中で、多くの有望選手が巣立っている。

身長201センチの大型アタッカー・鈴木祐貴氏(28歳)は高校1年時から全国大会で注目を集め、「動ける2メートル」と称された逸材だ。

そのほか、実業団で活躍した菊地洋之氏(47歳)や安井勇誠氏(38歳)らも同校の出身である。名門が輩出した選手たちは、後輩にとっての目標であり誇りでもあった。

 

北京五輪代表の輝かしい経歴と母校復帰

宇佐美大輔氏は秋田県横手市出身。雄物川高校から東海大学へ進み、2001年に日本代表入りを果たした。冷静沈着なセッターとして知られ、2008年の北京五輪では全試合に出場。

当時のキャプテン・荻野正二氏(55歳)らとともに日本男子代表を支えた。
実業団ではブルーロケッツやパナソニック・パンサーズに所属し、正確なトスワークと戦術眼でチームを牽引。若手の育成にも定評があり、現役時代から「将来は名指導者になる」と評されていた。
引退後は教員としての道を歩み、2014年に母校・雄物川高校の監督に就任。「地元を強くしたい」と語ったその姿に、生徒や地域の期待は大きかった。だがその後、厳しすぎる指導は次第に暴走へと傾いていった。

 

明るみに出た体罰と暴言の実態

県教育委員会によると、宇佐美監督はおととし4月から今年9月にかけ、複数の部員に対して平手打ちやこぶしで殴る、腹部を蹴る、ボールを強くぶつけるなどの体罰を繰り返していたという。

また「馬鹿」「やる気がないなら辞めろ」などの暴言を日常的に浴びせ、部員の中にはけがを負った生徒もいた。
内部告発をきっかけに調査が始まり、複数の証言と映像記録によって行為の実態が確認された。関係者は「以前から“行き過ぎた指導”として問題視する声はあったが、成績を理由に黙認してしまった」と話す。
生徒の一人は「練習が怖くなり、バレーボールが嫌いになった」と訴えた。信頼関係の上に成り立つべき教育の現場で、恐怖と服従が支配していた実態が浮き彫りになった。

 

懲戒免職処分と揺れる地域社会

秋田県教育委員会は11月、宇佐美監督を懲戒免職処分とし、「教育現場で決して許されない行為。長期にわたり指導者としての立場を逸脱していた」と厳しく断じた。雄物川高校は同日、保護者説明会を開き、外部カウンセラーの常駐や指導方針の全面見直しなどを発表した。
一方で、地元には戸惑いも広がっている。地域の住民からは「信じられない」「あの宇佐美先生が…」という声が上がり、SNS上でも「尊敬していた監督だけにショック」「厳しさと暴力は違う」といった投稿が相次いだ。
長年にわたって“勝利至上主義”が染みついた環境の中で、監督個人に責任を押しつけるだけでいいのかという疑問も残る。学校文化そのものの見直しを求める声が強まっている。

 

問われる“伝統指導”の限界と教育の責任

かつて「愛のムチ」と称された指導法は、今では明確に暴力として社会から断罪される時代になった。スポーツ界全体が意識改革を迫られる中、今回の事件は旧来の価値観と現代的な教育観の断絶を象徴している。
勝利を重んじること自体は悪ではない。しかし、生徒の尊厳を損なうような指導は、どれほどの実績があっても正当化されない。全国の学校や指導者が、今回の事件を「他人事」として済ませず、自らの指導を見つめ直す必要がある。
雄物川高校男子バレー部は、これまで築き上げた伝統と信頼をどう取り戻すのか。勝利よりも“人を育てる”という原点に立ち返ることが、いま最も求められている。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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