
日本サッカー協会(JFA)とオフィシャルサプライヤーのアディダスジャパン株式会社は11月6日、2026年FIFAワールドカップで着用する新ユニフォーム「HORIZON(水平線)」を発表した。
胸部に海と空の交わりを思わせるグラフィックを配し、首元には日の丸をあしらったデザイン。日本代表としての誇りと覚悟、そして未来への希望を象徴する一着だ。新ユニフォームは11月14日、愛知・豊田スタジアムで開催されるキリンチャレンジカップ2025(対ガーナ代表)で初披露される予定である。今回はそのデザインの意味と、直近の日本代表の戦いぶり、そして世界へ挑むチームの現在地を多角的に見ていく。
新ユニフォーム「HORIZON」に込められた意志
今回のユニフォームのコンセプトは「水平線」。JFAによると、これは「海と空が交わる地点に広がる明るい未来と無限の可能性」を表しているという。胸の中央には、海と空をモチーフにしたブルーとホワイトのグラフィックが大胆にあしらわれ、日本という島国が世界と交わる象徴としてデザインされた。首の後ろに小さく掲げられた日の丸は、「日本を背負ってピッチに立つ」選手たちの誇りを示す。
素材には通気性と軽量性を追求した最新の機能素材「HEAT.RDY」を採用。
高温多湿な環境でも快適に戦えるよう設計されており、選手のパフォーマンスを支える。ゴールキーパー用ユニフォームは、仏教で釈迦を守護する「阿修羅」から着想を得た力強いグラフィックを採用。チーム最後方から守護神として立ちはだかるGKの存在感を、神話的なモチーフで表現している。
デザイン面でも「青」の意味を再構築したという。これまで“サムライブルー”として親しまれてきた日本代表の青は、今回は“深海から昇る光”をイメージ。
静と動、伝統と革新の調和がテーマだ。アディダスジャパンの担当者は「水平線は、終わりのない挑戦の象徴。チームとファンが同じ景色を共有できるユニフォームに仕上げた」と語っている。
直近の成績が示すチームの現在地
新ユニフォーム発表に先立ち、日本代表は好調な結果を残している。2025年7月の東アジアE-1選手権では香港代表を6-1で圧倒。上田綺世がハットトリックを決め、久保建英の精緻なスルーパスが光った。
さらに9月にはブラジルとの国際親善試合で3-2の逆転勝利。ネイマールを欠いた相手とはいえ、南米王者を相手に見せた組織力と冷静な試合運びは高く評価された。
チームはすでに2026年W杯出場を確定させており、アジア勢の中でも最速の突破を記録。安定した守備と機動力のある攻撃が融合し、森保一監督体制は成熟期を迎えている。
ただし、課題も残る。昨年のアジアカップでは準々決勝で韓国にPK戦の末に敗退。
試合を通じて優位に立ちながらも勝ち切れなかった点が問題視された。中盤の運動量や後半の守備集中力など、細部の詰めが今後の課題だ。
それでも、若手の台頭は明るい材料だ。鎌田大地、伊藤洋輝、三笘薫らが攻撃の軸として成長し、世代交代の流れも順調に進んでいる。久保建英(24歳)はスペイン・レアル・ソシエダでコンスタントに結果を出し、南野拓実(30歳)はASモナコで復活を印象づけるシーズンを送っている。
久保建英・南野拓実──新ユニフォームに託す想い
新ユニフォーム発表に際し、選手たちはそれぞれの言葉で決意を語った。
久保建英(24歳)は「水平線と聞いてすごくポジティブな言葉だと思いました。想像できなかった渋さがあって気に入っています。W杯では個人としてもチームとしてもこれまでの壁を越え、最高の景色を見られるよう全力で臨みたい」と意気込んだ。
また、南野拓実(30歳)は「代表のユニフォームのブルーはいつも特別な色。新しいデザインを見た瞬間、とてもかっこいいと感じました。チーム一丸となって優勝を目指して頑張ります」とコメント。
二人の言葉には共通して「壁を越える」という意志がある。過去のワールドカップで幾度となく跳ね返されたベスト16の壁。その水平線の向こう側にある“ベスト8”“優勝”という景色を見据える姿勢が、チーム全体の士気を高めている。
水平線の先に描く「新しい日本代表」
森保ジャパンは、戦術的にも進化を続けている。これまでの縦に速いスタイルに加え、試合展開をコントロールするポゼッション志向が強まった。守備では冨安健洋を中心に組織的なラインを形成し、攻撃では堂安律のインナーラップや伊東純也のスピードがアクセントを生む。
チームは現在FIFAランキング17位前後を維持しており、ヨーロッパ勢と遜色のないデータを示している。特に2025年以降は平均得点2.4、失点0.8という安定感を記録しており、アジア圏では頭一つ抜けた存在だ。
ただし、“世界の強豪”を名乗るにはもう一歩が必要だ。課題はメンタル面と試合運び。強豪相手にリードを奪われた際、焦らずに試合を立て直す落ち着きが求められる。新ユニフォームが象徴する“水平線”は、その不安定な境界を越えるためのメッセージでもある。
初陣・ガーナ戦から始まる新章
新ユニフォーム「HORIZON」は、11月14日のキリンチャレンジカップ2025・ガーナ戦で初披露される。ガーナはフィジカルに優れたチームで、アフリカ勢特有のスピードと迫力を持つ強敵だ。この試合は単なる親善試合ではなく、「新しい日本代表」が世界へ踏み出す第一歩となる。
JFA関係者によれば、「今回のユニフォームはデザインだけでなく、チームのメンタリティを象徴するもの。水平線の先にある“最高の景色”を全員で見に行く」という強い思いが込められている。
新ユニフォームの鮮やかなブルーが豊田の夜空に映える時、日本代表の新しい航海が始まる。水平線の向こうに待つのは、まだ誰も見たことのない景色。その先を信じ、全員が同じ方向へと走り出している。



