
乾燥肌治療薬「ヒルマイルド」の新CMからKing & Princeの永瀬廉が姿を消した。後任には、8人組アイドルグループ・timeleszの原嘉孝と篠塚大輝が起用されたが、ファンの間に衝撃が走った。突然の交代劇に一部ファンが企業へ直接抗議し、製薬会社が異例の声明を出す事態に発展。応援と狂信の境界線が、改めて問われている。
永瀬廉からの交代にSNS騒然
10月15日、健栄製薬は自社ブランド「ヒルマイルド」の新CM起用タレントとして、timeleszの原嘉孝と篠塚大輝を発表した。これまで起用されてきたKing & Princeの永瀬廉の後任となる。
同日には「ヒルマイルドシリーズCMデビュー篇」と題した映像が公式X(旧Twitter)で公開され、原と篠塚が軽快に踊る姿が披露された。
だがSNSでは「永瀬くんじゃないの?」「なぜ突然変わったの?」という戸惑いが広がり、投稿欄は瞬く間に炎上状態となった。
「永瀬さんは2019年から約5年間にわたりブランドイメージキャラクターを務め、誠実な印象でCMを支えてきた。ファンの間では“永瀬=ヒルマイルド”というイメージが定着していたため、今回の交代は予想外だったようです」(芸能記者)
企業が異例の“声明発表”
混乱が拡大した同日の夕方、健栄製薬の公式Xが再び更新され、異例の声明を公表した。
《多くのお問合せを頂いているヒルマイルドの前タレント契約につきまして、一つ一つのお問合せに時間がかかり回答をお待たせしている状況ですので、こちらで発言させて頂きます》
続けて《この度契約終了の申し入れを受けタレント契約を満了させて頂く事となりました》と、永瀬廉の契約が5年間の満了を迎えたことを説明。さらに「長年のご愛顧に感謝申し上げます」とファンへの謝意を述べた。
通常、企業がタレント契約について公に説明することは極めて異例である。健栄製薬がこのような対応をとった背景には、ファンからの問い合わせや抗議が殺到していた実情がある。
ファンの“企業抗議”が波紋呼ぶ
声明が出るや否や、SNS上では驚きと批判の声が広がった。
《こんなコメントを出させるまで問い合わせた人がいるの?》
《企業様にも永瀬くんにもtimeleszにも失礼だと思う》
中には「会社に問い合わせた」と明かすユーザーも複数存在し、一部ファンが組織的に動いた可能性も否定できない。芸能ジャーナリストは、こうした行為が新たな問題を生んでいると指摘する。
「SNSでの呼びかけが連鎖し、“声を上げれば変わる”という感情が過熱してしまう。企業にとっては業務妨害にもなりかねず、結果的に誰の得にもならない。今回のケースは、企業の誠実な姿勢が逆に“ファンの異常行動”を浮き彫りにしました」(芸能ジャーナリスト)
timeleszへの反発も背景に
今回の炎上の背後には、timeleszというグループに対する一部の“拒否反応”も見え隠れする。
timeleszは、Netflixで配信されたオーディション番組『timelesz project』を通じて再編された新体制グループである。Sexy Zoneから改名し、元メンバー3人に加えて新たに5人を迎え入れるという大胆な再出発だった。番組内ではメンバー選考の過程がリアルタイムで公開され、ファンによる投票やコメントが反映される仕組みが導入されていた。
そのため、「自分の推しが落選した」「納得できない人事だ」といった感情が残り、SNS上ではオーディション後も賛否が分かれ続けていた。
「新メンバーの猪俣周杜、橋本将生、篠塚大輝の3人はいずれも芸能活動の経験が乏しい“素人出身”です。彼らの加入により、“実績がないのに前面に出過ぎでは”という声も上がりました。
ファン層が急拡大する一方で、古参ファンや一部のジャニーズ系ファンからは“押しつけられている”という反発が強まっていた」(音楽ライター)
加えて、timeleszは結成直後からメディア露出が急増。地上波での冠番組やバラエティ出演に加え、2025年末にはドームツアーの開催も決定している。異例のスピード出世に対し、他グループのファンから「ゴリ押し」「露出過多」といった批判が寄せられていた。
「ヒルマイルド」への抜擢は、そうしたタイミングでの出来事であり、“永瀬廉の枠を奪った”という見方をする人々が一定数存在してしまったのだ。
SNS上では、「なんでtimeleszなの?」「永瀬くんの後任としてふさわしいのか」といった書き込みが散見され、ブランドの宣伝という本来の目的を超えて、グループへの攻撃材料として利用される形になった。
本来は異なるファンダム同士が、今回のCMをきっかけに“対立構造”を強めてしまった格好だ。
「応援」と「排除」が混在する今のアイドル文化では、誰かの起用が他者への“攻撃”に転化してしまう。永瀬さんのファン、timeleszファン、そしてアンチ――三つ巴の構図が、今回の炎上をさらに複雑化させました」(同前)
応援が“攻撃”に変わるとき
健栄製薬の声明は、企業として誠実な対応だったが、その裏にはファン心理の暴走という現実がある。
永瀬廉も、timeleszメンバーも、望んでいないであろう“対立構図”が生まれてしまった。SNSが声を届けやすくした一方で、その声が誰かを傷つける凶器にもなり得ることを、改めて突きつけられた形だ。
推しを守るための行動が、結果的に推し本人を苦しめる。
その皮肉を噛みしめるように、健栄製薬の丁寧な文面は静かに問いかけている。
「温かく見守ることはできないのか」と。