
10月1日午前、渋谷のNHK放送センターから大きな船出となるはずだった新サービス「NHK ONE」。ところが開始直後から、登録に必要な認証コードが届かない、入力してもエラーが出るといった不具合が相次ぎ、期待のデビューは混乱に包まれた。SNSには「待てど暮らせどメールが来ない」「コードを入れてもエラー」といった声が溢れ、NHKは謝罪と原因調査を発表した。
NHK ONEとは何か
「NHK ONE」はこれまで分散していた「NHKプラス」「NHK NEWS WEB」などのサービスを統合した新たなプラットフォームだ。ニュース記事、見逃し配信、気象・災害情報などを一つのアプリ・サイトにまとめ、スマホ、パソコン、ネット対応テレビで利用できる。
旧アプリ「NHKプラス」は9月末で終了し、10月以降は「NHK ONE」に完全移行した。NHKは番組内でも繰り返し切り替えを呼びかけ、スムーズな利用をアピールしていた。
初日から起きた「認証コード不具合」
しかし、サービス開始の朝から、登録手続きに必須の認証コードが利用者に届かない事態が発生した。特にGmail利用者を中心にトラブルが相次ぎ、コードが送られてこない、届いても入力時にエラーになるといった声が広がった。
NHK広報局は同日正午、「現在、アカウント新規登録やNHKプラスからの移行手続きで、Gmailなど一部メールに認証コードが届かない不具合が発生しています。原因は調査中です。ご不便をおかけして申し訳ありません」とコメント。謝罪とともに「アカウント登録が未完了でも、同時配信や見逃し配信などの基本サービスは利用可能」と利用者に理解を求めた。
利用者の声「待てど暮らせどメールが来ない」
午前中からネット上には困惑する声が殺到した。
「朝から認証コードを入れても登録できず、何度もやり直した。夕方になってようやく設定できたが、初日に一斉切り替えは無理があったのではないか」
「gmailで認証メールが届かず、ヤキモキさせられた。9月中旬から案内メールを送ったと言っているが、私のところには来ていない」
「いきなり1日から切り替えろというのが問題。数日前から並行稼働してから切り替えるべきだった。メリットもよくわからない」
「NHKは高給取りなのにサイトがわかりにくすぎる。初日のトラブルは想定すべき」
一方で「スムーズに登録できて快適に使えている」「サービス内容自体は便利」と評価する声も少数ながらあった。
なぜ混乱が広がったのか
今回の混乱の背景には、「NHKプラス終了」と「NHK ONEへの移行」を同日に重ねたスケジュールがある。9月末で旧サービスを完全停止し、翌日から新サービスに切り替えさせたことで、多くの利用者が一斉にアクセス。認証コードの送信やシステムへの負荷が集中したとみられる。
IT業界では大規模サービスの移行時、数日間の「並行稼働期間」を設けるのが一般的だ。利用者は新旧サービスを比較しながら移行でき、万が一の不具合時も旧サービスを利用できる。しかし、NHKは移行を一気に実施した。この決断がユーザー体験の混乱を拡大させた可能性がある。
NHKの課題と今後
NHKは「不具合が解消次第、改めてお知らせする」としている。だが、受信料で運営される公共放送として「デジタル化の失敗」は視聴者の信頼に直結する。
加えて、今回のトラブルは「高齢者に使いやすい設計になっているのか」という懸念も浮かび上がらせた。利用者の一人は「プロファイル登録など、年配者にはハードルが高い」と投稿。デジタル化推進とユーザビリティの両立が今後の課題となる。
便利さの先にある課題
「NHK ONE」という名が示すように、NHKはサービスを“一つにまとめる”ことで利便性を高めようとした。しかし初日からの不具合は、その理想に影を落とした。便利さを実感した人もいれば、利用すらできず不満を募らせた人もいる。
視聴者の声をどう受け止め、信頼を回復できるのか。NHKのデジタル戦略は、これから真価を問われる。