
9月26日、NHK連続テレビ小説『あんぱん』が最終回を迎えた。半年間、毎朝の習慣となっていたドラマが幕を下ろした途端、SNSには「あんぱんロス」という言葉が溢れた。「朝から泣いた」「最高の朝ドラだった」と感動の声が相次ぐ一方で、「名シーンが少なかった」「ヒロイン像に違和感」という辛口意見も目立つ。ラストを彩った主題歌「賜物」のオーケストラバージョンは、多くの視聴者を驚かせ、涙を誘った。いったい『あんぱん』最終回は何を残したのか。
SNSにあふれる「あんぱんロス」の声
最終回の朝。テレビの前でハンカチを握りしめた視聴者も少なくないだろう。放送が終わるやいなや、タイムラインは「ありがとう」で埋まった。
「半年間ありがとう。朝から泣いた」
「最高の朝ドラでした。もうロスが始まってる」
そんな投稿が相次ぎ、なかには「家を出るのが5分遅れた」という人まで。ドラマを生活の一部として見守ってきた人々にとって、『あんぱん』の終わりは小さくない喪失感を伴った。
一方で、「ストーリーに名シーンが少なかった」「ヒロインのパワハラ体質が印象的すぎた」という辛口の声も散見された。半年間の朝ドラが常に賛否両論を呼ぶのは宿命だろう。だが、それも含めて“朝の時間を共有してきた”証拠である。
ラストを彩った主題歌「賜物」オーケストラVer.
視聴者をもっとも驚かせたのは、タイトルバックが流れず、終盤に突然響き出したRADWIMPSの主題歌「賜物」オーケストラバージョンだった。
「命を生きよう 君と生きよう」
最後の4分間、本編を包み込むように奏でられた旋律と歌詞は、のぶと嵩が紡いできた物語そのものだった。制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサーによれば、このオーケストラ版は野田洋次郎自身の提案で制作されたという。脚本や資料を読み込み、命や愛のテーマに寄り添う形で編曲された楽曲は、視聴者の心に深く届いた。
SNSにも「嬉しいサプライズ」「いい意味で裏切られた!」といった投稿が溢れた。涙と感謝のコメントが相次いだのも、この演出の力によるところが大きい。
制作陣が語る最終回のこだわり
最終回の撮影は、柳井家の居間で行われた約8分半のシーンから始まった。のぶ(今田美桜)の命が残り少ないことを悟った嵩(北村匠海)が「アンパンマンのマーチ」を口ずさむ場面だ。のぶは「命は受け継がれていく」と語り、嵩はそれを受け止める。撮影は一発撮りで行われ、編集でもほぼカットされずに放送された。
「とにかく2人の関係性をそのまま届けたかった」と倉崎プロデューサーは語る。現場でも涙をこらえるスタッフが多かったという。
また、ラストシーンで2人が一本道を歩きながら交わした「今日のお昼は何にする?」というコロッケ談義は、実は今田と北村のアドリブだった。何気ない日常を演じることで、2人の関係性が現実の延長線上にあるように映し出された。
「死を描くのではなく、日常の延長で終える」という選択は、脚本家・中園ミホ氏や俳優陣の意見を取り入れた結果だという。
“あんぱんロス”を埋める次の楽しみ
最終回の余韻が冷めやらぬうちに、SNSには「スピンオフ楽しみ」「来週からは『ばけばけ』だね」と次作への期待の声が並んだ。
毎日の習慣として視聴者に寄り添ってきた朝ドラが終わると、空白の時間が生まれる。それが「あんぱんロス」だ。だが、半年後にはまた新たな作品との出会いが待っている。
過去にも「カーネーションロス」「ちゅらさんロス」など、朝ドラの終了時には“ロス現象”が繰り返されてきた。生活のリズムに組み込まれた物語を失う喪失感は、それだけドラマが人々の日常を豊かに彩っていた証拠だ。
『あんぱん』最終回が残した余韻とメッセージ
『あんぱん』最終回は、命と愛をテーマにした物語を「日常」という余韻で締めくくった。SNSには涙と感謝があふれ、「あんぱんロス」という言葉が広がった。主題歌「賜物」のオーケストラバージョンはサプライズとして視聴者の胸を打ち、半年間の旅路を優しく包み込んだ。
朝ドラは終わっても、物語は人々の心の中で生き続ける。のぶと嵩の“逆転しない正義”と愛のメッセージは、きっとこれからも多くの朝を照らしてくれるだろう。