
首都圏北部を支える埼玉県は、食品スーパー・ホームセンター・衣料ディスカウントといった日常消費を支える流通業、そして自動車部品・精密機器・電子材料などの輸出産業が共存する独特の産業構造を築いてきた。加えて、EC・ドラッグストア物流や都市近郊型住宅開発も活発で、人口増加エリアとしての需要を取り込む。本稿は決算短信・有価証券報告書など一次資料のみを突合し、連結売上高(金融は経常収益)を基準に“県内に本社(登記本店)を置く企業”20社で作成した最新ランキングだ。
20位 アイダ設計(上尾市) 売上 622億8,800万円〈2025/3〉
名門ポイント:注文住宅・戸建分譲住宅の供給を主力とし、土地の仕入れから設計、施工、販売、アフターサービスまでを一貫して手掛ける体制を整えている。主力商品では、自由設計を可能としつつ、建材や設備の標準仕様を最適化することでコストパフォーマンスを高め、「価格を抑えながらも品質を担保する住まい」を提供している。実際に、税込999万円から建築可能なベーシックプランや、コストと機能性を両立した「ブラーボ」シリーズなど、幅広い価格帯の商品を展開。これにより、初めて住宅を購入する層から建て替え需要まで多様な顧客ニーズに応えている。
さらに、自社プレカット工場を活用し、木材加工の効率化と品質の均一化を実現。全国に90拠点以上の営業網を展開し、分譲地開発と販売強化を並行して進めている。
今後はZEH対応や省エネ住宅の開発、リフォーム事業の拡充を通じて、ライフスタイルの変化に応じた住宅提案を強化し、長期的に選ばれる住宅メーカーとしての地位を高める見込みである。
19位 スーパーバリュー(上尾市) 売上 657億8,100万円〈2025/2〉
名門ポイント:食品スーパーとホームセンターを組み合わせた複合店舗を関東圏で展開し、食料品と日用品、DIY資材を一度に購入できる利便性を提供している。生鮮食品では青果・精肉・鮮魚の各部門を強化し、地元産品の取り扱いも積極的に進める。ホームセンター部門では資材・工具に加えて園芸用品や日曜大工関連の商品群を充実させ、地域住民の暮らしに密着した売場づくりを行う。
近年は既存店の改装を推進し、レイアウト変更やデジタルサイネージ導入によって買い回りしやすい動線を確保した。価格訴求策としてプライベートブランド商品の比率を高め、値頃感を維持しながら利益確保を図る。スクラップ&ビルドを通じて不採算店舗を整理し、成長余地のある立地への新規出店を続けている。物流面では自社センターの効率化や共同配送を活用し、鮮度とコストの両立を実現。地域密着の経営を貫き、日常消費を支える存在感を高めている。
18位 西武建設(所沢市) 売上 700億5,580万円〈2025/3〉
名門ポイント:主軸事業は総合建設業。鉄道駅舎や沿線施設、商業ビル、物流倉庫、教育・医療施設など多様な建築工事を手がける。鉄道沿線再開発や大型複合施設の建設に参加し、地域インフラの整備に関わっている。土木分野では橋梁、道路、トンネル、河川護岸などの公共工事に取り組む。住宅分野では戸建住宅や集合住宅の建築も行い、木造から鉄筋コンクリート造まで幅広い工法に対応。リニューアル事業として耐震補強やリノベーション工事、設備更新も請け負い、既存建物の資産価値維持に貢献している。
近年は都市部での再開発案件が増加し、複数のプロジェクトを並行して進行。安全・品質・工程管理の徹底を掲げ、ISO認証を取得したマネジメント体制で施工品質を確保している。
17位 タムロン(さいたま市) 売上 884億7,500万円〈2024/12 連結〉
名門ポイント:交換レンズの開発と製造を担い、デジタル一眼レフやミラーレスカメラ向けに高倍率ズーム、マクロ、広角など多彩な製品群を展開している。ブランド製品に加え、OEM供給も行い、写真愛好家から業務用ユーザーまで幅広い需要に応える。日本・中国・ベトナムに生産拠点を配置し、研究開発から量産までをグローバルに最適化している。海外販売比率は高く、欧米やアジア市場での需要が収益を支える。
近年は監視カメラや産業機器、車載用、医療用といった非写真分野のレンズモジュールも拡充し、事業の多角化を進めている。光学設計やコーティング技術、手ぶれ補正機構などの改良を重ね、新製品を定期的に投入する体制を確立。グローバル市場での存在感をさらに高め、新たな光学分野での成長機会を取り込むことが期待される。
16位 フコク(上尾市) 売上 896億5,700万円〈2025/3 連結〉
名門ポイント:ワイパーブレードラバーおよび防振ゴムの設計・製造を基盤とする。ワイパーブレードラバーでは表面処理技術・材料開発・コーティング・カット技術を組み合わせ、凹凸のない均一なエッジ形成やガラス形状に適したカーブ形成などが重視されている。ワイパーブレードラバーは国内OEM純正品のシェアが高く、世界OEMでも高い比率を有しており、年間生産本数が自動車分野で2億本を超える。防振製品では、乗り物の振動や騒音の低減を目的とする各種サスペンション部品、回転系ダンパー、カップなどが設計対象となっており、静粛性の向上と乗り心地の快適性が設計基準に含まれている。
要素技術としては、コーティングにより耐摩耗性を向上させる2層コーティング技術があり、「静かに拭く寿命」と「きれいに拭く寿命」の両者の性能維持が耐摩耗性と深く関連している。ゴム素材の配合技術や形状設計、微細成型・表面改質技術などが活用され、防振製品・ワイパー両部門において高い振動制御性と耐疲労性を追求する設計が行われている。
将来性としては、グローバルOEMでのシェア拡大と防振製品の用途拡大、静粛性・耐摩耗性の技術改良が競争力を左右する要素になる。
15位 キヤノン電子(秩父市) 売上 1,006億5,600万円〈2024/12 連結〉
名門ポイント:精密機械・光学・電子機器の開発・生産を主軸とし、ドキュメントスキャナー・ハンディターミナル・カメラ用精密機構・小型人工衛星など多様な製品分野を持つ。精密コンポーネント設計では、シャッター・絞り・ステッピングモーターなど、小型化・静音性・省電力が求められる部品の開発力を備えている。国内外にグループ会社を持ち、マレーシア・ベトナム等にも製造拠点を有することで、生産・調達のグローバル体制を構築している。
ISO等の品質認証を取得し、生産・業務革新プロセスにも取り組みを公開。機械設計・電気設計・ソフト設計それぞれの領域で製品仕様開発を行い、製品評価(機械的耐久性・通信機能・操作性など)を設けている。
将来は、宇宙関連や医療・環境分野への参入拡大が見込まれており、小型精密ユニット・画像処理技術・光学設計技術を活かした新用途開拓が期待される。
14位 太陽ホールディングス(さいたま市) 売上 1,190億1,000万円〈2025/3 連結〉
名門ポイント:電子回路保護膜および医薬品受託製造を基盤とする。プリント基板上でソルダーレジストと呼ばれる絶縁性コーティング膜の開発を長く手がけ、熱・湿気・ほこりなど環境ストレスに耐える膜特性や、回路パターン間の電気絶縁性の維持を目的とした技術を持つ。
塗布方法(アルカリ現像型、UV硬化型、熱硬化型)やドライフィルム型の製品も提供し、基板の薄型化・歩留まりを改善する用途で採用されている。エレクトロニクス製品向け化学材料の製造・販売に加え、医薬品分野では固形製剤・注射剤の受託製造を行う工場を有し、GMP管理体制での生産が確立されている。グローバル展開も進んでおり、輸出および海外販売拠点を複数国で設置、化学合成・材料設計・品質検査技術を横断的に活用する組織体制を整えている。
将来は、電気絶縁性と耐熱性を両立する材料、高機能ソルダーレジストや放熱性材料、医薬品供給体制の拡充などが追い風となる見込みである。
13位 サイサン(さいたま市) 売上 1,980億2,085万円〈2024/8 連結〉
名門ポイント:ガス・エネルギーおよび関連サービスの供給を基盤とする。家庭用LPガス・産業用ガス・医療用ガスの供給および販売を行い、ガス器具の設計施工も手がける。LPガスの集団供給設備や高圧ガスの機器販売・設計施工も業務に含まれる。
さらに都市ガス供給事業、電力小売事業「エネワンでんき」、宅配ミネラルウォーターのブランド「Water One」など、多角的なエネルギー・生活関連サービスを展開している。LPガスセンター(ガスワンパーク上尾)は内陸型施設として国内最大級のLPガス安定供給拠点であり、集中監視システムを導入して安全管理を行っている。また、省エネ機器(太陽光発電システム・蓄電池・ハイブリッド給湯器等)の販売促進、業務用顧客向けのCO₂排出抑制を目的とした供給プランの提案も進めている。
将来的には、国内外での展開を一段と強化し、総合エネルギー・生活関連サービス企業として省エネ・低炭素化に協調する需要に応えることで成長が期待される。
12位 AZ-COM丸和ホールディングス(吉川市) 売上 2,083億7,000万円〈2025/3 連結〉
名門ポイント:食品・日用品の物流センター運営を中核とし、EC物流、低温食品物流、医薬・医療物流に特化したサービスを展開している。受注から配車、輸配送までをAI・IoTで一元管理する仕組みを整備し、幹線輸送、ラストワンマイル配送、センター構内運営までを一貫して対応。
低温食品物流では、産地から店舗までのコールドチェーンを構築し、当日朝採れ野菜を店頭に届ける取り組みを行っている。医薬・医療物流では、在庫レス方式(VMI)や預かり在庫方式を導入し、販売機会ロスの削減と調達物流の効率化を実現。店舗の売上支援を目的とした物流改革を「店舗目線」で提案し、コスト削減と物流品質の向上を両立している。
今後は、EC市場の拡大や物流人材不足に対応するため、より高度な自動化とデジタル技術の導入を進め、持続可能な物流モデルの構築が期待される。
11位 ベルーナ(上尾市) 売上 2,108億5,600万円〈2025/3 連結〉
名門ポイント:アパレル・雑貨の通信販売を中心に、化粧品・健康食品・グルメ・ワインなど多様な商品群を扱い、カタログとECを融合したマルチチャネル戦略を展開している。自社ECサイトの販路拡大と広告投資の最適化を進め、顧客データを活用したターゲティングを強化。
さらに、ホテル事業では全国に宿泊施設を展開し、都市型・リゾート型双方で拠点を増加中。2025年3月には北海道札幌市に605室を備える「札幌ホテル by グランベル」を開業し、25階に露天風呂付きスパ&サウナ、夜景が望めるレストランを併設するなど、宿泊・観光需要の取り込みを狙った大型投資を実施した。ホテル事業の収益基盤は安定化しつつあり、インバウンド回復と国内旅行需要の高まりが追い風となる。
今後は、通販事業のデジタル比率をさらに高めるとともに、宿泊事業の拠点拡充と付帯サービス強化で成長の余地が広がる見込みである。
10位 サイゼリヤ(吉川市) 売上 2,245億4,200万円〈2024/8〉
名門ポイント:低価格イタリアンレストランを国内外で展開し、外食市場で独自のポジションを築いている。国内店舗ではファミリー層や学生層を中心に、手頃な価格と一定の品質を両立させたメニューを提供。オーダーから配膳までの一連の作業にはモバイルオーダーやセルフレジ、配膳ロボットを導入し、スタッフ数を抑えながら安定したサービス水準を保つ運営体制を構築している。
メニューは調理工程を簡略化しやすい構成に見直され、食材ロス削減や調達コスト低減を狙った工夫が重ねられてきた。価格設定はわかりやすさと会計効率を重視し、顧客が心理的に選びやすい価格帯に調整されている。海外では中国や東南アジアを中心に出店網を拡大し、現地の食文化に合わせた商品開発と店舗運営を行うことで収益基盤を確保。海外店舗は日本国内と同様のオペレーション効率化技術を導入し、ブランド体験の均質化を進めている。
今後は、原材料価格や人件費が上昇する環境下においても、省人化技術と調理工程の改善を進め、グローバル市場での店舗展開をさらに拡大することで、持続的な成長が期待される。
9位 エイチワン(さいたま市) 売上 2,281億4,500万円〈2025/3 連結〉
名門ポイント:自動車骨格部品の製造・販売を行い、フロントバルクヘッド、リアフレーム、ピラー、フロントホイールハウスなど車体構造の主要部材を供給している。これらは衝突安全性能や車体剛性に直結する部品であり、高張力鋼板やホットスタンプ材を用いた軽量かつ高強度の成形加工技術が活用される。
さらに、金型や溶接設備の設計・製作も手掛け、試作から量産までを一貫して行える体制を整備。二輪や汎用製品分野ではギアホルダー、ヨークローター、コントロールレバーなどを供給し、製品ポートフォリオを多様化している。国内外に生産拠点を展開し、北米・アジア市場での生産比率が高い。
今後は電動車や自動運転車の普及に伴い、軽量化技術や高精度接合技術への要求が一層高まる見通しであり、こうした技術開発を加速させることで次世代モビリティ分野での競争力強化が期待される。
8位 ポラスグループ(越谷市) 売上 2,768億9,400万円〈2025/3 連結〉
名門ポイント:分譲住宅、注文住宅、マンション、リフォーム、プレカット材の生産を複数の子会社で統合的に展開している。プレカット事業は全国6か所の工場で運営され、毎月3,000棟以上の住宅用木材を同業他社に供給しており、住宅以外の木造建築への提供も進めることで業界全体を支えている。これにより住宅建築の工期短縮と品質安定を実現し、関東圏を中心に戸建分譲地を多数供給。年間3,000棟規模の施工実績を持ち、都市部および郊外の住宅需要に応えている。
リフォーム分野では戸建て・マンションのフルリフォーム、耐震補強、水まわりなど幅広いメニューを揃え、既存住宅ストックの再生にも注力。土地開発、設計施工、販売、アフターサービスまで一貫して行う体制を持ち、住宅のライフサイクル全体を支える仕組みを確立している。
今後は省エネ・耐震性能を備えた住宅供給やリフォーム提案をさらに強化し、持続可能な地域住宅供給の担い手として成長が期待される。
7位 ジーテクト(さいたま市) 売上 3,392億3,300万円〈2025/3 連結〉
名門ポイント:骨格部品・車体フレームの設計・製造を主軸とし、プレスおよび溶接加工技術を設けており、ピラーやサイドシル、キャビン隔壁などの車体骨格部品の生産ラインを持つ。プレス金型を自社設計・製作し、複雑な曲面や高剛性・軽量化を意図したウルトラハイテン材・ホットスタンプ材の採用といった素材・成形技術を活用している。
多品種対応と高速金型交換装置、自動化ロボットラインを整備し、得意先の生産変動に迅速に対応可能な生産体制がある。海外には複数の生産・販売拠点を持ち、北米・欧州・アジアに自動車メーカー向け車体部品の供給網を構築しており、EV車向けの車体・モジュール部品の開発にも着手している。
将来性としては、車両の電動化とSUVなど大型車種の需要増加という潮流を捉え、軽量化技術・高剛性技術・ホットスタンプやモジュール設計の拡充が競争力を高める鍵になる見込みである。
6位 ベルク(鶴ヶ島市) 営業収益 3,877億7,900万円〈2025/2 連結〉
名門ポイント:食品スーパーマーケットチェーンを主軸とし、関東地方中心に多数の店舗を展開している。店舗数は2025年7月末で145店舗を有する。商品調達・配送に関しては、産地やメーカーからの一括大量発注を活かし、自社物流センター(ドライとチルドを区分したセンター)を使用して配送効率を高めており、商品の価格競争力と品質の安定性を確保している。新規出店事例として、埼玉県所沢市・千葉県印西市などで「フォルテ」フォーマットの店舗を新設。既存店改装も実施されており、総菜・簡便商品の拡充や店内設備の更新などが含まれている。
また、ディスカウント型の新フォーマット「クルベ(CLBE)」を江木店でリニューアルオープンし、低価格を強く打ち出した施策を行っている。店舗運営の標準化が進んでおり、商品レイアウト・内外観・オペレーション仕様が古い店舗から新しい店舗まで共通に近づけられていることが確認できる。
将来性としては、人手不足やコスト上昇の圧力が高まる中でディスカウント業態の拡充と省力化された店舗改装が競争力を持ち、価格訴求と利便性を両立させることが成長の鍵となる見込みである。
5位 UDトラックス(上尾市) 売上 4,057億7,800万円〈2025/3〉
名門ポイント:大型トラックの開発・生産を行い、輸出販売・国内販売を担う企業。上尾市に本社かつ上尾工場を構え、大型車の設計・組立を含む一連の生産能力を持つ。開発部門を抱え、自動車部品の製造および販売も事業の一部に含まれている。アフターサービス体制としては、純正部品の供給、ロードサポート、全国の直営および提携整備拠点による整備・修理サービスを設け、部品・補修品の販売および顧客車両の稼働維持の支援も行っている。
将来を見据え、自動車物流のニーズの変化や環境規制強化の中で車両モデルの多様化・電動化対応の技術開発を加速させることで、供給力・サービス網双方で競争力をさらに高める余地がある。
4位 テイ・エス テック(朝霞市) 売上収益 4,605億1,400万円〈2025/3〉
名門ポイント:四輪シートや内装部品、二輪車用シートや樹脂部品の製造販売を主軸とし、アジア・欧州・米州・中国など世界各地に生産・販売拠点を持つ多極分散型の供給体制を確立している。製品開発では、乗員保護性能と快適性を両立させるシート設計に注力し、人体工学に基づく座面形状、シートアレンジ技術、センサリング技術を組み合わせた研究を公開。長時間乗車時の疲労軽減や乗員の姿勢保持、空間効率の向上を目指した開発を進めている。
また、軽量化や環境負荷低減を意識した素材選定や成形技術の改善を重ね、世界的な環境規制や電動化の潮流に応える製品群を拡充。さらに地域ごとの需要変動に対応できるよう、複数拠点間での生産調整や供給分散を行い、安定供給体制を構築している。
今後は、運転支援や自動運転を見据えた次世代シート開発、乗員状態のセンシングと快適性向上技術の実装が進み、車室内空間の価値を高める取り組みが加速すると見込まれる。
3位 カインズ(本庄市) 売上 5,738億円〈2025/2 連結〉
名門ポイント:ホームセンター業態を柱とし、DIY用品・資材・園芸用品・日用品・ペット用品など多数の商品カテゴリーを揃える。商品戦略では、プライベートブランド(PB)を「くらしDIY」ブランドなど複数のテーマブランドに整理・拡充し、ユーザーの生活シーンを想定した商品開発を進めている。店舗業務の標準化・効率化にも取り組み、店舗生産性改革プロジェクトを通して品出し・在庫管理・POSシステムの刷新・セルフレジ導入など複数の業務改善施策を導入し、人時(作業時間あたりの従業員数・時間の使い方)で3%ほど改善した成果を確認している。店舗オペレーション管理の一環として、新規店・既存店の改装においてIT機器設置や什器移設・商品の陳列基準・什器配置などの標準仕様を制定し、全国の店舗である程度共通する店舗フォーマットを維持する努力が見られる。
将来的には、デジタル会員制度やオムニチャネル戦略の推進が見込まれており、PB強化と店舗オペ効率化が収益性改善の鍵になりそうである。
2位 しまむら(さいたま市) 売上 6,653億5,800万円〈2025/2 連結〉
名門ポイント:衣料小売業を主軸とし、仕入れ販売型の運営形態を採用している。売上動向や在庫状況を日々分析し、需要が高い店舗に商品を優先的に補充する仕組みを整えることで欠品を防ぎ、在庫回転を高水準に保っている。低価格重視の戦略を貫きつつ、プライベートブランド商品の比率を拡大し、計画的な値引きや廃棄を抑えて利益率を確保する体制を構築。
近年では、店舗改装による売場刷新やオンライン販売の拡大、店頭受取を含むOMO施策の強化も進めている。今後は、需要予測や在庫管理の精度をさらに高め、サプライチェーン全体のスピードを加速させることで、顧客が求める商品をタイムリーに届ける体制がより強化される見込みだ。こうした取り組みが、価格競争の厳しいアパレル市場において持続的な成長とブランド価値の向上につながるだろう。
1位 ヤオコー(川越市) 売上 7,082億9,000万円〈2025/3 連結〉
名門ポイント:生鮮食品・惣菜・地域密着型スーパー業態を展開し、各店舗で地域毎の買い物ニーズに応じた品揃えや提案を行っている点が明らかな強みである。店内で調理する惣菜部門(インストア)と、デリカ・生鮮センター(プロセスセンター)を組み合わせて「手作り感」「できたて感」「売場の魅力」を追求。東松山にデリカ・生鮮センターを設置し、複数店舗への供給を支える仕組みを持つ。
売場づくりにおいては、「にぎわい感のある売場」と位置付けた標準店の改良モデルを導入して、生鮮売場比率の拡大や調理品価値の強調を図る。物流・配送面では、常温・冷蔵・冷凍配送拠点を複数配置し、1時間~1時間半の配送距離を考慮した商圏戦略を構築。クレジットカード・電子マネー・ポイントカードなど支払い手段の拡充による利便性向上にも取り組んでいる。
将来的には、生鮮・惣菜の質をさらに磨きつつリアル店舗改装と標準モデルの投入を加速し、配送・物流の効率化によって新しい商圏を拡大し続けることが期待される。
総評
埼玉県の産業構造は、食品スーパーやホームセンター、衣料ディスカウントなどの流通業が地域の消費を支え、自動車部品や精密機器、電子材料の製造業が世界市場に接続する二層構造が特徴である。さらに、EC・ドラッグストア物流が日常需要を支え、都市近郊型住宅開発が人口吸収力を高める役割を果たしている。
今後は、EVやCASE対応の部品需要、省エネ住宅や再生可能エネルギーへの投資、物流の自動化・効率化といった構造変化が成長のドライバーとなるだろう。首都圏の外縁という立地優位性と多様な産業ポートフォリオを活かし、県内経済は堅調な拡大が期待される。