
川崎市立有馬小学校(宮前区)で、プールの給水栓が閉め忘れられる事案が発生した。約15時間にわたり水が出しっぱなしとなり、167トンの水道水が流出。損害額は約14万円に上った。市内では過去3年間で3件目となり、再発防止策の徹底が課題となっている。
川崎市立有馬小でプール給水栓閉め忘れ 167トンの水流出
7月17日午後2時、川崎市宮前区の市立有馬小学校でプールの注水が始まった。校長の指示を受けた教員が消防用水の確保のために給水栓を開いたが、満水までには約8時間を要し、完了は午後10時ごろの予定だった。
担当教員は校内での引っ越し準備や、数日後に控えた参院選投票所の設営作業などに追われ、止水作業を失念したまま退勤。翌朝7時に出勤した際に水が流れ続けていることに気付き、給水を止めた。この間に約167トン(25メートルプール0.68杯分)の水道水が流出し、損害額は約14万円にのぼった。
再発防止マニュアルは機能せず
川崎市教育委員会によると、同校ではこれまでプール利用期間中は複数の職員で声を掛け合うなどの対応を行ってきた。しかし今夏の授業は7月14日で終了しており、その後は担当職員が単独で作業を行っていた。
市教委は昨年12月に別の小学校で同様の事案が発生したことを受け、今年3月に再発防止マニュアルを改訂していた。マニュアルには「複数職員による確認」「アラームの使用」「掲示による周知」などが盛り込まれていたが、今回は徹底されていなかった。
市内で相次ぐプール水漏れ 過去には6日間流出も
川崎市では過去3年間で同様の事案が3件発生している。2022年には市立大島小学校で6日間にわたり水が出しっぱなしになり、約190万円の損害が生じた。この際は関係教員に約95万円の賠償請求が行われた。
今回の有馬小の事案について、市教委は「校長や担当教員らの過失」と判断したが、業務が立て込んでいたことや勤務時間外にかかる作業であったことを考慮し、損害賠償は請求しない方針を示した。
教員の負担と再発防止策
プール管理は清掃や消毒作業を含めて教員が担っており、夏季には大きな負担となる。特に満水作業は長時間を要し、夜間に完了することも多い。こうした業務形態そのものが、閉め忘れなどのリスクを高めていると指摘されている。
再発防止のためには、複数職員による確認やアラームの徹底に加え、水位センサーや自動止水装置の導入といった設備面での対策も検討されている。市教委は改めて全市立学校に対しマニュアルの順守を周知し、ハード面の整備も進める方針を示した。
「注意力」に依存しない仕組みが必要
今回の167トン流出による損害は14万円にとどまったが、公共の水資源を無駄にした事実は軽視できない。過去には6日間の流出で190万円の損害が出た事例もあり、同様のミスは繰り返し発生している。
今後は、現場の教員の注意力だけに依存せず、設備投資や業務体制の見直しを含めた総合的な再発防止策が求められている。