
米OpenAIが発表した「GPT-5」は、博士号レベルの推論力、高速な応答、コーディング能力の大幅強化を特徴とする次世代AIモデルだ。発表直後から日本国内でも利用可能となったが、この進化は単なる性能アップにとどまらない。会話の温度感やプロンプト設計のあり方が変わり、ユーザー体験そのものが新たなフェーズに入る。
全ユーザーに即日提供、過去モデルは順次終了
8月7日(米国時間)、OpenAIはGPT-5の提供を全世界で開始した。無料ユーザーも利用できるが回数制限があり、上限に達すると性能限定版「GPT-5 mini」に切り替わる。有料プランでは利用枠が拡大し、Pro会員(200ドル/月)は無制限で利用できるほか、さらに高性能な「GPT-5 Pro」も使える。
これに伴い、GPT-4oやo3、o4-miniなど複数モデルは順次置き換えられる。慣れ親しんだモデルの突然の終了に、SNSでは「別れのようだ」と惜しむ声も見られた。
博士レベルの知能と統合モデルの誕生
これまでOpenAIは、会話に強いGPT-4o(言語予測型)と論理的思考に長けたo3(推論型)を用途に応じて使い分けてきた。GPT-5では両者を統合し、スピード・正確さ・論理性のバランスを最適化。アルトマンCEOは「GPT-3は高校生、GPT-4は大学生、GPT-5は博士号取得者」と例える。
最大256Kトークンの長文処理やコーディング精度の向上、ハルシネーションの低減など、幅広い用途で信頼性が高まった。
変わるユーザー体験。会話の温度感とプロンプト再設計
性能向上と引き換えに、会話の“温度”が変化したと感じるユーザーもいる。GPT-5は過剰な同意や迎合を減らし、中立的な立場を徹底。英語圏では自然と受け止められる変化も、日本語では距離感として伝わることがある。
この変化はプロンプト設計にも影響する。従来は曖昧な指示でもモデルが補ってくれたが、GPT-5では意図を正確に伝えるための条件指定や背景説明がより重要に。特に感情や文体を伴う文章生成では、プロンプトに「文体」「感情の度合い」「背景設定」を明示することが求められる。
コスト効率と新時代への適応
API利用コストは入力100万トークンあたり1.25ドルと従来比で低下。テスト導入したUberやJetBrains、Oscar Healthなどは「効率と品質が向上した」と評価する。
一方で、過去モデル廃止に伴うワークフロー調整や、対話スタイル変化への慣れが必要になる。進化を戸惑いではなく、可能性と捉えられるかが、GPT-5時代を使いこなす第一歩となる。