
俳優・岸谷五朗と歌手・岸谷香の息子で実業家の岸谷蘭丸氏が、自らの「7000万円高校留学」や「7回の受験歴」を語った。生まれながらに恵まれた環境、幼少期の難病、芸能人二世という立場。本人が明かした「ズルだった」と語る経験と、その裏にある自己認識の変化は、親の経済力や生まれの差が子どもに与える影響について考えさせられる内容だった。
“7000万円の高校留学”が語るもの
蘭丸氏が出演した「しくじり先生」で、話題を呼んだのがニューヨークの私立高校への進学費用。その額、なんと4年間で7000万円。学費に加え、渡航費、滞在費、寮費、生活費と、積み重ねれば当然の額かもしれないが、多くの家庭にとっては想像もつかない金額だ。
本人も「ズルだった」と語るように、親の財力があったからこそ選べた進路だと認めている。
「他の子なら採れない選択肢を採らせてもらった。本当にゴメンと思っている」
こうした率直な言葉は、単なる「二世の成功譚」ではない、リアルな気づきと後悔がにじむ。
「特別な存在」として育つということ
蘭丸氏は、自身の7回にもおよぶ受験歴を「自分は特別だと思っていたから」と分析する。両親はともに著名人。さらに幼少期には若年性リウマチという病を抱え、頻繁な入院生活を余儀なくされた。
「体が痛くて動けなかった。幼稚園にも3分の1しか行けなかった」
そんな「特別な子ども」は、ある日新薬で回復する。その翌日、健常者としての体の軽さに衝撃を受けたという。そして「自由な校風の学校」でのびのびと過ごしながらも、どこかで「このままではダメだ」と自分を追い込むようになる。
“選ばれた環境”でも、迷いと苦しみはある
蘭丸氏の語りが興味深いのは、「お金がある=幸せ」でも、「自由な教育=成功」でもない点だ。本人が選び取った道のなかにも、迷いや逃げ、嘘があった。
たとえば、ニューヨークの学校を受験した際も「慶應のNY校を受ける」と父親に嘘をついたという。そこには、自分の選択を正当化したいという思いや、信頼を裏切ってしまう後ろめたさもあっただろう。
「親のおかげで取れた選択肢」には、羨望だけでは語れない複雑な感情が重なる。
学費が「壁」となる家庭とのギャップ
一方で、ネット上には「うちは貧乏だから奨学金で国公立へ行った」「成績で学費免除された」などの声も多く見られた。
社会は平等ではない。たとえば米国の大学・高校では学費が年間数百万円を超えることも珍しくないが、日本の私立医学部でも同様だという指摘もある。入学試験の偏差値よりも、親の年収や資産が「合格のカギ」になる現実。
岸谷氏の語りは、それをあらためて可視化したとも言える。
“二世”を超えて、自分の人生をどう選ぶか
現在、岸谷蘭丸氏はYouTuber、実業家として活動している。芸能界の道を選ばず、親とは違う分野で成功しようとしている姿には「反骨」や「誇り」も感じられる。
「親が成功しているから、自分も負けていられないと思った」
「親の七光り」と言われるリスクを承知の上で、自分の土俵で戦おうとする意思。それもまた、特別な環境に育った者にしか持ち得ない覚悟かもしれない。
生まれではなく、選び方で生きていく
岸谷氏の告白が強く響くのは、「親のおかげで選べた道」への感謝とともに、それを自分の責任で選び直そうとしている点にある。
教育の格差、親の経済力、二世としての葛藤。そのうえでなお前に進もうとする姿が、私たちに問いかける。
環境は与えられるものだが、生き方は選び直せるのだ。