
暑さ対策として定番となったハンディファン(携帯扇風機)だが、全国でこの小型家電が出火の原因とみられる火災が相次いでいる。
原因の多くは、内部に搭載されたリチウムイオン電池の異常加熱や破裂。軽量で手軽なグッズが、日常の中で火の元になる可能性がある。
夏本番を迎えた今、あらためてそのリスクと安全対策について確認しておきたい。
燃えたのは、手のひらサイズの扇風機だった
「カバンの中が急に熱くなった」「煙が出たと思ったら、突然バチッという音がした」
こうした報告は、全国の事故情報データベースに複数記録されている。なかには、使っていない状態で発火したケースもある。
スイッチが何かに押されて羽根が回転し続けたことでモーターが過熱。電池が膨張し、発火に至ったとみられる。
可愛らしい見た目や低価格にひかれて購入した製品が、突如として火を放つ。
日常に溶け込んだハンディファンに、そんな危険性が潜んでいる。
火災の背景にある「リチウムイオン電池」の特性
ハンディファンの多くは、スマートフォンなどと同じリチウムイオン電池を使用している。
この電池は高性能だが、以下のような環境では危険性が高まる。
- 高温下での放置(車内や窓際など)
- 物理的な衝撃や圧迫
- 充電中の過電流・過充電
- 安全装置のない粗悪品の使用
製品評価技術基盤機構(NITE)のまとめでは、2023年度に携帯扇風機による発煙・火災事故は30件以上報告されている。
なかにはバッグの中で燃え広がり、持ち主がやけどを負ったケースもある。
安さと可愛さの裏で、見逃される安全性
SNSや通販サイトでは、数百円〜1000円台のハンディファンが多数出回っている。
しかしその中には、電気用品安全法に基づく「PSEマーク」が付いていない製品も多い。
なかには発火防止の制御回路が省かれたものもあり、異常発熱が起きた際に停止できず加熱が続く危険性もある。
消費者が確認すべきポイントは次のとおりだ。
- 本体かアダプターにPSEマークがあるか
- 製品に日本語の説明書が付属しているか
- 正規メーカーや販売元の情報が明記されているか
- レビューが極端に偏っていないか
こうしたチェックを怠ると、買ってすぐ燃えるといった事態にもつながりかねない。
火災を防ぐために、できること
リスクを完全に排除することは難しいが、火災を防ぐためにできる習慣はある。
- 充電中は必ず目の届く場所に置く
- 就寝中や外出中の充電は避ける
- 使用しないときはスイッチが切れているか確認する
- バッグに入れる際は、できれば保護ケースに収納する
- 高温になる場所には絶対に放置しない
- 羽根や本体に変形や異臭があればすぐに使用を中止する
- バッテリーの寿命を考慮し、1〜2年で買い替えを検討する
とくに子どもに使わせる場合は、大人が安全確認や管理を行うべきである。
道具の便利さが、命を脅かす瞬間
ハンディファンは、暑い夏を快適に乗り切るための心強い味方だ。
だが、私たちが「ただの小型グッズ」だと思い込んでいる限り、リスクは見過ごされ続ける。
この夏、事故を未然に防ぐためにも、便利な道具ほど火の元としての一面を忘れずに扱いたい。
自分と大切な人の安全は、小さな意識から守られている。