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牧寛之氏とは何者か バッファロー(旧メルコホールディングス)を動かす異才の投資家経営者、その素顔と野望

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バッファローの牧寛之氏。コーポレートサイトのトップメッセージより
バッファローの牧寛之氏。コーポレートサイトのトップメッセージより

ECサイト構築支援で知られるBASE株式会社に対し、バッファロー(旧メルコホールディングス、2025年4月1日より名称変更)の牧寛之社長が5月7日、突如として1株400円でのTOB(株式公開買い付け)開始を発表した。株主構成の強化を通じた「支配権プレミアム」の獲得を目的とし、現在の14.55%から30%までの買い増しを狙う。

TOB発表時点でBASEの始値は449円。市場価格を下回る水準での買い付け提示には、市場関係者も驚きを隠さなかった。BASE側は事前通知がなかったとしつつ、独立委員会の意見を尊重しながら対応を進める方針を示している。

では、この牧寛之氏とは何者か。単なる企業経営者では片付けられない、その投資行動と哲学に迫る。

 

創業家の血を引くサラブレッド、牧寛之氏の原点

彼が率いるバッファローグループは、ネットワーク機器ブランド「バッファロー」やPC部品販売のCFD販売などを傘下に持つほか、老舗食品メーカー「シマダヤ」の経営にも一時関与。2024年にはシマダヤをスピンオフし、東証スタンダードに再上場させたことで注目を集めた。

こうしたグループ再編の指揮を執る一方で、自らの個人資産を投じて成長企業への集中投資も展開している。完全栄養食の「ベースフード」や、今回の「BASE」への動きはその象徴である。

では、牧寛之とは一体何者なのか。

愛知県出身。1980年生まれの牧氏は、ネットワーク機器企業メルコ(現バッファロー)の創業者・牧誠氏の長男として育った。幼少期を名古屋市内で過ごし、名門・東海中高を経て京都大学経済学部へ進学。大学在学中から資本市場に強い関心を持ち、ITバブル崩壊後の企業価値創造モデルを研究。卒業後は24歳の若さで資産運用会社の代表取締役に就任。経済理論の実践に踏み込むキャリアを選んだ。

資本市場で鍛えた感覚が経営を変えた

 

その後、2011年にメルコHDの取締役に就任し、2014年にはわずか34歳で同社の社長に昇格。以降10年にわたり、旧態依然とした製造業の経営モデルを刷新してきた。意思決定のスピードを重視し、全社稟議を撤廃。各部門に権限を移譲する「スピード経営」を導入し、事業ポートフォリオの再編を断行した。実際、同社の2024年度連結売上高は1457億円、純資産は639億円に達している。

その一方で、牧氏の特徴は「現場主義」と「資本市場的発想」を兼ね備えている点にある。週3日は主要子会社に出向き、現場の課題に直接向き合うと言われている。にもかかわらず、自らの資産を武器にBASEやベースフードなどの成長企業に戦略的投資を行い、「支配権プレミアム」を通じて収益を生み出す。彼のTOBは敵対的に映ることもあるが、本人は「経営には関与しない純投資」と位置付ける。支配か、支援か、その真意は未だに測りがたい。

また、家業の系譜にも注目が集まる。牧寛之氏は、製麺会社シマダヤを創業した牧清雄氏の曾孫であり、父・牧誠氏がメルコ創業者。弟・牧大介氏もグループ経営に参画しており、いわば“経済DNA”を受け継いだ名門一家である。

現場主義と資本戦略 二刀流の構造改革者

 

その彼がここ数年、強い関心を寄せているのが「食」と「サブスク」。BASE、ベースフード、シマダヤという投資対象は、いずれも顧客接点を持ち、自社ブランドを育てるD2C型ビジネスだ。単なるテック企業ではなく、「生活の本質」に根差す市場に投資する姿勢は、単なる財務的リターンだけを求めるファンドとは一線を画す。

TOBの先にあるものは支配か、それとも哲学か

一見冷徹に見えるが、2024年には京都市へ美術品と資金を寄贈し、地域文化支援も行うなど「パブリック・バリュー」への関心も強い。彼の哲学は、単なる利益追求ではなく、社会と企業、そして投資の三者をどう結び直すかという問いに根ざしているのかもしれない。

果たして、牧寛之は“乗っ取り屋”なのか、それとも“現代の企業家”なのか──その評価が定まるには、まだ時間がかかりそうだ。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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