
株式会社サンテックは、過年度の決算短信および有価証券報告書の訂正をめぐる問題を受け、東京証券取引所に「改善報告書」を提出した。2025年1月31日、東京証券取引所は同社に対し、有価証券上場規程第504条に基づき、訂正の経緯や改善措置を記載した報告書の提出を求めていた。これを受け、サンテックは3月3日付で報告書を提出し、問題の経緯と今後の対応策について明らかにした。
過年度決算訂正の背景
同社の報告によると、過去3年間の決算において、北陸地域のトンネル照明設備更新工事に関する会計処理の誤りが発覚した。2022年3月期に受注したこの工事に関し、当初の見積りに漏れがあったことや、工事原価の増額が後になって判明したことが要因となり、収益認識のズレが生じた。その結果、各決算期の利益や純資産の数値が修正される事態となった。
訂正の影響は、2022年3月期(第75期)では売上高は399億5千万、営業利益は△3億5千万円、経常利益は3億5千万円となった。2023年3月期(第76期)では売上高が387億4千万、営業利益は△8億3千万円、経常利益は△3億2千万円。2024年3月期(第77期)は、売上高が、509億3千万、営業利益が△11億3千万円、経常利益が△6億5千万円となった。
第三者調査委員会の調査結果
こうした問題を受け、同社は2024年6月に外部有識者で構成される「第三者調査委員会」を設置し、原因の解明を進めていた。調査の結果、不適切な会計処理の背景には、見積りの検証不足、実行予算の管理不備、受注方針会議の形骸化、社内コミュニケーションの不足、会計基準や監査法人の監査手法への理解不足といった要因があったことが判明した。
皮肉なことだが、同社の採用サイトのキャッチには、「光れ、見えないところで。」とあり、サイトのデザイン含めてかっこいいのだ。おそらく、採用が難しい産業セクターの企業らしく、若者の心に触れるキャッチを苦心して作っているのだろうなと思えるものなのだが、今回の問題を見るに、光らせないといけないのは、何もサンテックの人材だけではないことがわかったと言える。
いやはや、同社のガバナンスや内部統制の在り方にこそ見えない部分が多々あるようで、顕在化させないといけないのではないか。
再発防止に向けた取り組み
サンテックは、こうした問題の再発を防ぐため、社内の体制強化に乗り出している。2024年8月には「内部統制強化委員会」を設置し、各部門の責任を明確化するとともに、業務フローの見直しを進めている。また、受注方針会議の強化を図り、過去の類似案件と照らし合わせたリスク検証を徹底する方針を示した。
さらに、2024年11月からは、請負金額1億円以上の工事案件について、四半期ごとの実行予算の見直しを義務付け、クラウド型の業務改善プラットフォームを活用した情報共有の仕組みを導入することで、社内のコミュニケーション改善にも取り組んでいる。
監査対応と経営の透明性向上
監査対応力の向上も急務とされ、OAG監査法人とのコンサルティング契約を締結し、内部統制の専門家によるアドバイスを受けながら、適正な会計処理を徹底していく方針だ。サンテックは「今後は適正な会計処理を徹底し、透明性のある経営を進めていく」としており、経営体制の刷新と信頼回復に向けた取り組みを強化する。
サンテックとは
サンテックは、1948年創業の大手独立系電気工事会社で、屋内電気設備工事や空調衛生設備工事、電力関連工事を手がける総合エンジニアリング企業だ。東京都に本社を構え、国内24拠点・海外10カ国で事業を展開している。
ゼネコンや電力会社、官公庁など多様な顧客基盤を持ち、大型オフィスビルや商業施設、公共施設、工場などの電気設備工事を多数手がけてきた。また、再生可能エネルギー事業にも注力し、メガソーラー発電所や風力発電所の建設にも積極的に取り組んでいる。
長年にわたり蓄積してきた技術力と豊富な経験を背景に、国内外で高品質な施工を提供してきたが、今回の不適切会計問題を受け、より一層のガバナンス強化と経営の透明性向上が求められる局面を迎えている。