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アマゾンMGMが007シリーズのクリエイティブ主導権を獲得。
新たな時代を迎えるスパイ映画の象徴にファンの期待と不安が交錯する。
アマゾンが007シリーズのクリエイティブ主導権獲得
米IT大手アマゾンは20日、人気スパイ映画「007」の制作指揮権を、同社の傘下で映画制作、配給を行う「アマゾンMGM」が取得したと発表。これにより、脚本、キャスティング、編集といった制作上の最終決定権はアマゾンMGMが握ることとなる。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは、この発表を受け、SNS上で「次のボンドは誰?」とコメントを投稿。この一言がファンの間で大きな話題となり、次期ボンド俳優についての議論が活発化した。
一方で、シリーズの英国らしさが失われるのではないかという懸念も広がっており、『テレグラフ』紙は「どうかシリーズをめちゃくちゃにしないで」「英国らしさを保ってほしい」といったファンの声を報じている。
アマゾンとブロッコリ家はこの交渉の過程で対立もあったが、結果として新たな合弁事業を設立する形で折り合いがついた。ブロッコリ家は今後も共同オーナーとして関与するものの、クリエイティブな決定権はアマゾンMGMが持つことが確定した。
アマゾンによるMGM買収の経緯
アマゾンが007シリーズに関与する契機となったのは、2021年のMGM買収だった。アマゾンは約9200億円(85億ドル)を投じて、ハリウッドの老舗映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)を傘下に収めた。MGMには『007』をはじめとする数々の名作があり、この買収はストリーミング市場におけるアマゾンの影響力を一気に強化するものだった。
しかし、007シリーズの制作権はEONプロダクションズが保持しており、アマゾンが自由に作品を制作できるわけではなかった。このため、アマゾンはMGM買収後も、007シリーズの方向性を巡ってブロッコリ家との交渉を重ねることとなった。
007シリーズの停滞とアマゾンとの対立
2021年に公開された『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』を最後に、シリーズは新作発表が途絶えた。それまで2〜3年ごとに新作が公開されていた007シリーズにとって、これは異例の事態であり、ファンの間では次回作の行方を巡る憶測が飛び交っていた。
ブロッコリ家は伝統的な映画制作の手法を守ることを重視し、007シリーズのユニバース化やスピンオフ制作には消極的だった。一方、アマゾンはMGM買収を機に、ストリーミング時代に適した新しい展開を模索しており、この点が両者の間で大きな対立を生む要因となっていた。
2024年末には、ブロッコリ家とアマゾンMGMの関係が悪化し、新作の企画が完全に停滞したと報じられていたが、この状況に不満を持ったアマゾンは、交渉を本格化させ、ついに007シリーズのクリエイティブ主導権を獲得することに成功した。
次期ボンド俳優の行方
007シリーズの新たな幕開けに伴い、7代目ジェームズ・ボンドのキャスティングにも注目が集まっている。英ブックメーカーによると、現在の候補として以下の名前が挙がっている。
・アーロン・テイラー=ジョンソン(『クレイヴン・ザ・ハンター』)
・ジェームズ・ノートン(『グランチェスター 牧師探偵シドニー・チェンバース』)
・テオ・ジェームズ(『ダイバージェント』シリーズ)
米『ハリウッド・リポーター』は、テイラー=ジョンソンが最有力としつつも、ジョシュ・オコナー(『チャレンジャーズ』)が新たな候補として浮上していると報じている。
007シリーズの未来と今後の展望
アマゾンMGM主導の新体制のもと、007シリーズは2026年以降に再始動する見込みだ。アマゾンは今後、劇場公開とストリーミング配信を両立させる形で007シリーズを展開するとされている。
しかし、ブロッコリ家が離脱することで、007シリーズが従来の伝統を維持できるのかという疑問も残る。アマゾンMGMがどのようにブランドを継承し、進化させていくのかが今後の鍵となる。
次期ボンドの発表、そして新作映画の正式決定がいつ行われるのか、ファンは固唾をのんで見守っている。