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中小企業庁「100億宣言」始動 売上100億円を目指す企業の挑戦を支援 でも1億、10億宣言の方がいいのでは?

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100億宣言

中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が2月21日、売上高100億円を目指す企業を支援する新たなプロジェクト「100億宣言」を発表した。5月から申請受付が開始される予定で、挑戦する企業にとって成長への大きな後押しとなる制度だ。単なる数値目標ではなく、日本経済全体の成長を促すための重要な一歩として注目されている。

 

「100億宣言」の狙い――挑戦する企業を支える国家的プロジェクト

「100億宣言」とは、売上高100億円という野心的な目標を掲げ、その実現に向けた取り組みを行う中小企業を支援するもの。対象となるのは、売上高が10億円から100億円未満の企業で、申請には企業概要や経営理念、売上高100億円達成のための課題と具体的な措置を記載することが求められる。特に、経営者のコミットメントが重要視されており、目標達成への強い意志が求められる。

取り組みの背景には、日本経済の成長に向けた国家的な課題が存在する。長年続いたデフレ経済からの脱却を図る中で、成長型経済への移行は急務とされている。設備投資が100兆円を超え、賃上げ率も33年ぶりの高水準を記録する中、成長の波に乗るためには企業の積極的な挑戦が必要だ。

特に、日本の雇用の7割以上を支える中小企業が、この挑戦の鍵を握るとされている。……と、ここまでは中小企業庁や中小機構の狙いを説明してきたが、はたして、このよくわからない取り組みは企業に受けるのだろうか。

 

100億宣言は流行るのか

宣言をさせることが補助金の申請や金融機関の投融資のしやすさに結び付けていくだろうことは政府の取り組みなので容易に想像できる。宣言したからには目標達成できないのは恥ずかしいのでコミットしたいという経営者の性を上手くつついたものかもしれない。もしかしたら、強制的にも企業にやる気を出させる点で言い案なのかもしれない。

さらに、ご丁寧にロゴまで用意されているではないか。名刺に、ISOなどの他の認証と一緒でペタペタ100億円宣言マークを貼る企業が増えるのだろうか。コーポレートサイトにかかげる企業はいるのだろうか。

100億宣言マーク
経済産業省より

ただ、危惧するのは、名刺交換時の会話のネタとしては面白いが、数年先、ひっそりとマークは消えてしまうのではないかということだ。宣言して目標達成できない企業は高らかに掲げていたことを恥じるかのようにマークを消すだろう。また、SNSでは、宣言した企業から未達の会社をリスト化して茶化すような流れがあるかもしれない。

とすると、どんな企業がペタペタとマークを貼るのか、営業ゴリゴリ会社で、プルゴリ系の営業マンが名刺に掲げるのかな、そんな絵が浮かぶ。あるいはこのマークを貼ることは10億以上の売上からとのことならば、意外と一定の規模を証明するものとして、スタートアップなどは掲げたがる習慣が作れるかもしれない。

どうせなら、1億宣言、10億宣言も作れば?

ひねくれたことを言ったが、取り組みとしてはとても面白いと思っている。宣言することで自らを奮い立たせコミットする後押しにはなるだろうから。でも、政策の対象として本来必要なのは、この10億から100億円の層ではないと思っている。この規模まで企業成長している企業はこんな宣言をする前から必死になって稼いでいる企業が殆どだろう。こんな宣言をしようとしなかろうと、パフォーマンスに差異はないと思うのだ。

で、日本社会で必要なのは、もっと小さな圧倒的大多数の小規模事業者たち、中小企業たちを奮い立たせることだと思う。1億宣言とか、10億宣言とか、そうした宣言の方が、本当はもっと上を目指す力があるのに、適度に力をぬいて経営しているそこらの中小企業にヒットするのではないかな。

 

なぜ「100億円」を目指すのか 経済成長の突破口としての挑戦

話を本題に戻そう。おそらく、中小企業庁の考えとしては、「100億円」という売上高目標は、単なる数字ではない。これは、企業が次のステージへ進むための「突破口」であり、企業経営者にとっては新たな成長の起点とと捉えてほしいハズだ。特に地域経済においては、雇用創出や投資の拡大、地域産業の活性化につながる可能性がある。政府はこの挑戦を通じ、経済の好循環を促進し、日本全体の成長基盤を強化する狙いだ。そのための10億から100億の規模なのだろう。

挑戦する企業にとっては、売上高100億円という目標設定が自己変革の契機となる。経営者だけでなく、社員全員が大規模な取引先と対等に渡り合う意識を持つことで、企業全体の成長機運が高まると期待されている。って、ところか。

「100億宣言」のメリット 挑戦する企業に対する具体的支援

実際に、「100億宣言」を行うことで、企業はさまざまな支援策を受けることが可能となるようあ。特に、成長加速化補助金や経営強化税制の拡充措置が用意されており、資金調達や税制面でのメリットが提供される。また、公式ロゴマークの活用により、企業の成長意欲や取り組みを対外的にアピールする機会も広がる。

さらに、宣言企業は経営者ネットワークへの参加資格を得られ、地域や業種を超えた連携を促進する場が提供される。これにより、企業同士のシナジーが生まれ、成長機会をさらに広げることが可能となる。

 

「見える化」のプレッシャーと成果の可視化 企業に求められる真の挑戦

一方で、この取り組みは企業に対して大きなプレッシャーをもたらす可能性もある。申請内容は事務局が運営するポータルサイトで公開され、成果の可視化が進むことで、社会からの期待が一層高まる。挑戦を公にした企業が目標を達成できなかった場合、その結果が社会的に注目されるリスクも孕んでいる。

しかし、この「見える化」は、企業にとって挑戦意欲を喚起する重要な要素でもある。成功事例が生まれれば、それが他企業の挑戦を促す連鎖となり、日本全体の経済成長を後押しする力になると期待されている。

 

日本経済の未来を切り開く「100億宣言」の可能性

このように「100億宣言」は、単なる売上目標の設定にとどまらず、経済成長への道筋を切り開くための大きな試金石となるかもしれない。挑戦を成功に導くためには、政府による補助金と絡めての継続的な支援と、企業自身の強い成長意欲が不可欠ではあるが。

成果が出なければ、プロジェクト自体が批判の的となるリスクもあるが、挑戦しなければ成長はない。そういった意味でも政府の面白い取り組みとして応援したいし、成功してほしい。日本経済の未来は、こうした挑戦を恐れず、果敢に取り組む人たちの手に託されているのだろうから。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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